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セーブストーン2.5 〜仮免女子の後日談
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セーブストーン2.5 ~仮免女子の後日談~

それは休み時間にはじまった。:みすずの場合

 それは、ユウとジュンが、女子生徒としてわが2-Dに転入してきたすこし後のことだった。

 わたしたちはファッション雑誌を手に、おしゃべりに興じていた。
 恵利衣が大盛り上がりで、今年の新作サマーワンピースの特集ページを披露する。
「みてみてこれっ! この白のワンピ!! これはぜったいユウに似合うと思うな~♪」
「え…そ、か?」
 ユウはスポーツやってるときのりりしさはどこへやら、ぽかんとした反応を返す。
「そーだよ~。ユウってきりっとしたカンジだから、こーいう白とか、タテのラインをいかしたすっきりしたデザインは合うんだってば☆」
「ああ、そうなのか」
「ああって……食いつき鈍いな~。ユウの好みじゃない、こーゆーの?」
「え、っと……いや、わかんない。着たことないから、こういうの」
「「マジですか?!」」
 結香(ユイカ)と恵利衣は驚愕する。
 基本沈着な学級委員長ユイカにとっても、これは聞き捨てならない事態だったようだ。
(いや、わたしもユウの身の上しらなかったらきっと驚いてた、うん)
「もったいない!! それはもったいないですよ!!」
「女子に生まれたからには一度は着なきゃ~!!」
「あっと…そう…なのか……」
 迫り来るユイカと恵利衣に、思いっきりぼーぜんとしているユウ。
 それをフォローしたのは、相棒のジュンだった。
 購買で買ってきたらしい、パック飲料を机に置きながら微笑む。
「ごめんねふたりとも。ユウのやつ女子力ダメダメで。
 実はオレたちずっと、超厳しい全寮制にいてさ。何年間も、勉強とかスポーツしかできなくて。
 オレなんかはそれでもこっそりうまくやってたんだけど、ユウのやつは要領悪くてすっかりこんなんなっちゃって。
 相棒として不徳の致す限りだよ」

 自宅以外では女子として生活してるユウとジュンだけど、なかなかなおらないものがあった――
 そのひとつは、言葉遣いだった。
 最初はがんばってみたようだけど、結局イマイチなじめなくて(とくにユウ)、今ではすっかり「俺っ娘(笑)」となっている。

「そうだったんだ……。」
「これはなんとかしなくっちゃ!」
「ええ!」
 もちろん、全寮制どうこうってのは作り話だ。
 けれどユウとジュンが、何年間にもわたってオシャレなんかとはほとんど無縁の生活を送らなくちゃならなかったことは事実である。
 そして今のふたりが、それぞれ“友人以上恋人未満”の相手がいる女子である、ということも。
 わたしたちの意志はひとつとなった。
「ねえジュン。ジュンはこのワンピいいとおもうよね?」
「うん。オレが買ってでもユウに着せたいね」
「え」
「じゃあ決まりね!! 今日の放課後はショッピングよ!!」
「あ…えーと……」
「ユウ、これはリハビリだから。ちょっとぐらいギモンを感じても、黙ってこのいいんちょーについてくるのよ!!」
 頼りになるわれらが委員長、ユイカがどーんと胸をたたく。
「…………………はあ………」
 かくしてわたしたちの放課後の予定は決定した。



放課後の駅前商店街で(前):勇の場合

「で、なんで俺までここにいるんだよ?」
 委員長と相原とみすずは、ユウとジュンの服と水着を買うってんで(二人を連行して(笑))町に繰り出した。
 そしてなぜか、それには俺と淳司と里見までかりだされていた。
 いや、淳司と里見はわかる。ユウとジュンの服選ぶってなら、やつらもいたほうがいいだろう。
 しかし、なんで俺まで。
「荷物もち要員だよ。」
 淳司は非情にも(笑顔で)そう断言しくさった。
「ちぇっ。お前らはいいよな。カノジョの服選んでやるんだからよ」
「え?」
 里見は(ザ・パーフェクトマンの威厳はどこへやら……)ぽかーんとしたカオでオレを見る。
 しかし淳司からはとんでもなく鋭い反撃が帰ってきた!
「へえ。お前、みすずの服選んでやんないんだ」
「ぶっ」
「このなかで唯一のカップルだってのにさ~。勇、先輩として見本見せてくれないんだ~。里見君気の毒だよね~」
「…え?」
 てんでハナシについていけてない里見はさらにマヌケな顔になってしまう。
 しかしそんな里見を放置して淳司は続けた。
「まったく何のためにオレが身を引いてやったんだか。
 みすずの前ではそんな無頓着なタイドとるんじゃないぞ。いいな?」
「……お、おう」

 淳司はちょっとした事故で、一時期俺を好きだった(爆)ことがある。
 その当時は、やむをえない場合を除いて、そのことを口にすることはなかった。
 やつなりに、恥じらいというものがあったのだろう。
 しかしユウというカノジョ(未満だけど)ができ、それが過去のハナシとなったとたん(俺たち、事情を知ってる連中の前では、だけど)わりと平気で口にするようになってしまった。
 つか、やつの場合“身を引いた”っていうより、カノジョができて勝手にリタイヤしたんじゃなかったっけか…?
 しかし今ここでそれをつっこむと泥沼になりそうなので、俺は黙ってうなずいた。

「それにしてもあの二人見てるとなんか微妙だよね。
 特にユウとか、女子たちの盛り上がりにまったくついてけてないし」
「……言えてる」
 俺たちのまえを、女子三人と連行されるもと男(一応)二人が歩いているが、まったくそんなカンジだ。
 ジュンはさすがに情報担当だけあったようで、化粧品なんかをすすめられてもうまいこと話題に反応してるが、ユウはひたすらぽかーんと「…ぷらせんた? きゅーてん??」とかのたまっている。
「オレなんかはべつにいいけどね。ユウはあのまんまでもさ」
「え?」
「オレはユウの、まっすぐなつよさとか、それでて優しいとことか知ってさ。それでユウがすきだって思ったんだ。
 飾ってくれなくてもだから、オレ的にはいいんだ。
 お前とそっくりだったからじゃないからな。それは単なるとっかかりだし、だいたい今の彼女とお前そっくりだっていったらファンクラブのメンバーに暗殺されるよ」
「……………確かに」
 確かにどーがんばったって俺に女子のセーラー服は着れないし、今ユウが着てるのと同じブラウスを着たところでまったく違うようにしかならないだろう(そうじゃなかったらむしろ大変だ)。
 あのふたりは里見との約束で、家では男の姿でいる。けれどこないだ見た男バージョンのユウは、もう前ほど俺に似ているようには見えなかった。
(逆になぜか、ジュンと淳司がますます似てきた気がするのが謎だ……)
「里見君はどう思う? ジュンのことさ。やっぱオシャレとかしてほしい?」
「え??」
 里見はあきらかに、質問の意味があんましよくわかってないカオである。
「だからさ。里見君は、ジュンがかわいいワンピースとか、水着とか着てくれたらうれしい? それともどっちでもいい?」
「………………………………………………………………………」
 里見は考え始めたようだが、やつにこの問題は難易度が高すぎたようだった。

 その後、やつはジュンの『これとこれどっちがいい?』という恐怖の問いに(当然)答えられず、結局二着とも買わされてしまったのであった。


     

放課後の駅前商店街で(後):ユウの場合

 俺は当惑していた。

 クラスの女子としゃべっていたら、いつの間にか服と水着を買いにいくことになっていた。
 相原のノリにおされ、委員長に引っ張られ、西崎とジュンもそんな感じで。

 それはまあ、いい。服は必要だ。
 ずっと男として生活していた俺は、今現在、制服以外に女の服を持っていない。もちろん水着もだ。
 これからは、人間の女として生きていくのだ。そうしたものはやはり必要だろう。

 しかし街頭販売で化粧品をすすめられたときには参った。
「ぷらせんた」とか「きゅーてん」というのは何だ。
 ぼーぜんとしていると売り子は笑顔でのたまった。
「女性の方ですとこういうの喜ぶんですよー」
 その言葉に俺はどきりとした。まさか男の姿に戻っていたのか?
 あわてて胸元を見下ろすと、いつものサイズの膨らみが見えて俺はほっとした、と同時に思わず目をそらしてしまった。
 女の姿は警戒され辛い。だから俺は何度も、女の姿になってさまざまな場所に出入りした。セーブストーンを強奪したことだってある(カイリはその最後の被害者だ)。
 しかし改めてこうして“女の証”を確認すると、なんだか気恥ずかしいものがある。

 昔は、女に変身しても、着替えるときは男の姿に戻っていた。
 いまでも、制服脱いだら(私服を着る前に)男に戻っている。
 もちろん体育の時間の着替えでは極力周りを見ないようにしている。
 しかし今日はそうもいかないだろう。
 過去に何度か見たビデオや本の内容を思い出しそうになってしまい、俺は必死で気を紛らわせようとした。
 しかし化粧品のハナシはやっぱりいまいちよくわからず、俺は当惑するばかりだった。


 相原がいいといっていたワンピースはすぐに見つかった。
 着てみると足元はスースーするが、夏なのでそういうのもいいだろう、と思い買うことにした、というか、なぜか藤森が金を出した。
「え、いいのか?」
「入学祝いだよ、高校の」
 藤森はそういって優しく笑う。
「ああ、…すまん」
 その笑顔ではい、と服の包みを渡されるとなんだかとても嬉しくなって、子供みたいに俺はそれを胸に抱えていた。
「も~藤森君はすなおじゃないな~。カレシでしょ? いーじゃんプレゼントだって言えばさあ☆」
 相原がそういいつつばしっと藤森の背中を叩く。
 すると藤森は一転、真っ赤になって慌てだした。
「あ、あのそのっいやカレシって」
「俺たちは別に……」
 俺も恥ずかしくなってそういった。
 いつの間にそういうことにされていたのだ。確かに藤森はいいやつだ、優しくてアタマもいいしとてもいいやつだが、別段そういう取り決めはしていないのだ。
 しかし女子どもは俺たちの言葉をまったく聞いていなかった。
「おおういいねえ~青春だねえ♪」
「よかった~リハビリ大成功♪」
「淳司、がんばるのよ♪ これから水着も買いに行くんだから♪」
 その言葉に俺は考えまいとしていたことどもを一気に思い出してしまった。
「だ、大丈夫? ちょっと休もう、ユウ」
 よほど俺の顔は赤かったのだろう、藤森はそういって俺の肩を抱えた。
 が、俺は今ので妙に藤森を意識してしまい、あわてて歩き出していた。
「お、俺は平気だ! 早く、買いに行くぞっ」
 こうなったらとっとと済ませてしまおう。万一ここではなぢなんか噴いた日には、あとでジュンに何言われるやら。

 だがやっぱりムリなものはムリだった。
 そもそも俺は、ビキニの着方がわからない(普段はスポーツブラというものを使っているし、後ろのホックを自分で止める方法なんか予想もつかない……)。
 そのため悪戦苦闘していたらいろいろと思い出すわ恥ずかしいわで、やむなくジュンに着せてもらい、やつと女子連中の見立てで一着のビキニを買ったのだが、俺はもはやそれがどんなデザインだったのかも覚えていなかった。



帰宅後の特訓:ジュンの場合

 オレのわたした本とともにユウが、部屋に入って数分。
 気配がおかしい。オレは用意してあった合鍵でドアを開けた。
 みるとヤツは、部屋の隅でひざを抱えて泣いていた。
「ごめん……ごめんなさい父さん……俺、みちゃいけないもん見ちゃった………」
「ってなに泣いてんだよこんなぐらいで!!」
 床に伏せられたページをみたところコイツ、最初の短編すら読みきっていないようだ。
「ったく……親父がみたら泣くぞ」
「どうしたんだ?」
 そこへカイリがやってきた。
「ああ。こいつ自分で水着着れないっていうからさ。
 特訓としてレディコミ読ませたんだよ」
「え…………………」
 ユウのやつ、ひとなみにエロ本見てたくせに、自分のビキニ姿でへれへれになるとは情けない。
 ここは荒療治だ。そう思ってオレは帰りに一冊の(わりと初心者向きの)レディースコミックを仕入れ、ヤツに読め、と渡したのだ。
 しかし――
 どうやらそれもヤツには厳しすぎたらしい。
「なあカイリ。頼みがある。
 ユウが風呂入るときは、女になっていいことにしてやってくれないか。
 男に戻るつもりならいいが、女のままでいるんだったら、このさきこれじゃやっていけない。
 これからの季節、体育はプールだろ。
 こんな状態で、スク水の女子と一緒に着替えができるとは思えないからさ……
 てなにそんだけで真っ赤になってんだお前は!!!」
 ユウのやつは情けないが、カイリのやつめはもっと情けなかったようだ。
「ご…ごめん…………」
「ったくもう……情けないぞおまえら……オレ泣けてきたよ」
 オレは床に放り出されたレディコミを拾い上げ、ぱらぱらとめくってみた。
 うん、別段なんてこともない。もっと過激なのは山とある。
「ジュ、ジュン……なんでお前ソレ平気なの……??」
 ユウがオレを驚愕のまなざしで見上げてくる。
「だってそりゃ、オレ情報担当だし。
 こんな程度で動揺してちゃはじまんないだろ」
 そう、オレにとっちゃ盗聴盗撮なんか日常茶飯事だった。
 要人の立ち回り先にカメラとか仕掛ければ、こーゆーシーンに行き当たることもしばしばで。
 いつしか、女のハダカ程度はなんとも思わなくなっていた。
 もちろんオレは自分でビキニだって着れる。別に戸惑いも覚えず女装もできる。
 必要とあらば『きゃっ、あたしったら☆』とかしゃべることだってできるし。
 それ以上のことも、たぶん、大丈夫だろう。
 オレはちゃんと、女になれる――

 と、カイリがおずおずとこっちを見ているのに気がついた。
 どうやらレディコミに興味を引かれたらしい(怖いもの見たさというやつだろう)。
 しかしこれをみせたら多分、カイリはぶっ壊れるのでオレは表紙を閉じた。
「だめ。こいつはお前にはまだ早いよ。
 どうしてもってならユウのお下がりあたりで修行してからにしろ」

 驚いたことにカイリはエロ本を持っていなかった。
 それどころか“そのテの”本さえ持ってなかった。
 オレたちが越してくる前に処分したのかも知れないが、当時オレたちのプロフィールは男だった。それも考えづらい。もちろんこのオレがしろうとの隠したものぐらい、見つけ出せないわけがない。
 カイリは本当に、勉強とトレードにしか興味がなかったらしい。
 リハビリが必要なのはカイリも、のようだ。

 もっとも――
 カイリを“ひとなみ”にする必要なんて、ないかもしれない。
 オレのアタマのなかで、一瞬そんなささやきが、聞こえた。


     

彼女の理由:淳司の場合

 それは、服と水着を買いに行った日からだった。
 ユウの様子がおかしくなったのは。
 なんだか元気がない。
 それどころか、昨日などオレをジュンと間違えたりもした。
 これはおかしい。そう思ってオレは、ユウを呼び出すことにした。
 場所は、最初に出会ったあの土手。
 いまや学校のアイドルであるユウとふたりで一緒に帰ったりするのは難しいので、一旦家に帰って、男の姿で出てきてもらっておちあうことにした。

 しかしやってきたユウは、女子のままで、しかもあの日の白いワンピースを着ていた。

「え…と……?」
「すまん、リハビリなんだ。
 俺も恥ずかしいんだけど……慣れなきゃいけないから……」
 てっきりあの、黒いソフトミリタリーの少年が来るものと思っていたオレは、完全に虚をつかれて絶句してしまった。
 しかも彼女は、可憐に頬を染めている。
 けれど、身を縮めた彼女は恥ずかしそうで、目には涙が浮かんでいた。
「そんな…恥ずかしいの?」
 ユウはただ、ひとつうなずいた。
「じゃ、帰ろう。いつものに着替えてさ、平常心でいられるようになってから話そう。
 オレはユウの話が聞きたいから」
 オレはジャケットを脱ぐと、ユウに着せ掛けた。
「ありがとう……」

 ユウとジュンは里見君のマンションに同居している。
 よって、帰る先は里見君のとこだ。
 呼び鈴を鳴らすとでてきたのはジュンだった。
「うそ?! おまえ、おもちかえり?!
 ちょっと待ってろ今カイリつれて出るから。一晩戻らないでいてやるから心配す」
「違ーう!!!
 ったくなんだってお前はそうヒトをアレなカンジで言うよ!! これはただ」
「わかったわかった。茶だしてやるからゆっくり語れ♪ 盗聴器は切っとくから」
「ハイ???」

 ユウが着替え終わるとオレは、ジュンから渡されたお茶のお盆を持って部屋に入った。
 いつもの服装、かつ男の姿にもどったユウは、まだ恥ずかしそうではあるが、大分ましな様子になっていた。
「さっきは助かった。
 女の姿には何度もなっているんだが、制服以外であんなあからさまな女装ははじめてだったから……それに無理矢理だったし」
「着せられたの?」
「ああ。……リハビリなんだ、だから仕方ないんだ。それはわかっていたんだが……」

 そしてユウはことのあらましを話してくれた。

 女子とユウたちが水着を選んでいる間、オレたち男子は近くの喫茶店で待機させられていた。
 だからその間のことは知らなかったのだけれど、まさにそのとき、ユウは大変な苦労をしていたらしい。
「俺、ビキニなんて着たことなくて……だからうまく着れなくて。でも、目の前鏡だし。目のやり場に困るし。でも見ないで着れないし……」
 そんなことをとつとつと、しかもしょぼーんとした様子で語る彼は、とても廃工場あとでナイフを手に、殺し合いをした相手と同一人物とは思えなかった。
「なんとかジュンに着せてもらって買ったんだけど……やっぱ、自分じゃ、着れなくて。
 特訓だってんでレディコミ読まされたんだけどゼンゼンムリで。
 今は、風呂に入る前とか女になって、鏡で見るようにしてんだけど……
 やっぱそんな、見てらんなくて……」
 客観的に聞けばこれは、ものすごくゼイタクな悩みなんだろう。
 でも、こんな憔悴した様子のユウを目の前にしてオレは、そんなふうには思えなかった。
「昨日はとりあえずさっきの、あの日お前に買ってもらったあのワンピース、あれ着てみろって言われて。
 で…着たんだけど。振り返ったらジュンのやつ、カイリのガクラン着てやがって……
 お前がいるのかと思って心底驚いた……」
 それは…なんというか、察するに余りある。
 ていうかジュン、お前スパルタすぎ。
「で、今日。着替えていこうと思ったらジュンが“これ着て逝ってこい”って……
 お前が着ないなら、あたしが目の前で着替えちゃうから、て脅されて………」
「……………………………………………。」
 オレと同じカオでそんなこといってたんデスかあのヒトは。
 なんかもうオレまで泣きたくなってきたよ(笑)

 しかしそこまで話すと、ユウは落ち着いたようだった。
「すまん、みっともないとこみせたな。
 俺の度胸が据わってないから……」
「ユウ。
 ユウはさ、どうしてそんなにまでして、女の子になりたいの?
 ガッコだったら、転校したっていいんだし。セーブロードつかって男子として転入しなおしたっていいんじゃないかな?」
「駄目だ」
 ユウの回答は、驚くほどすばやかった。
「そんなことしたらお前たちとの時間がパーになる。
 今まで使命使命って闘い続けて、ときにロードの繰り返しで時間を捨ててきた俺たちにとって、お前たちとの……ここに転入してからの時間は、本当にたいせつな、たいせつなものなんだ。
 それをそこなうようなマネは死んでも嫌だ。
 だったら……俺は顔と名前を変えて転入しなおす。この学校に。お前たちのいるここに」
「ありがとう。そんな風に思ってもらって、すごくうれしいよ。
 ごめんねユウ、オレの質問が悪かったね。もういちど、ちゃんと聞くよ。
 ユウが“どうしても”女の子になりたい、その理由ってなに?
 女の子にならなくちゃ、て理由は、もう聞いたから知ってる。
 でも、こんな苦労してでもならなくちゃって思う理由。オレは知りたいんだ。
 オレはユウをほっとけないから。苦しんでたら、たすけてあげたいから」
「……………………………………」
 ユウは真っ赤になってうなってうなって。

「苦労、させたくない」

 一言だけ、オレにいった。
 そしてオレには、それだけで充分だった。

 オレはユウの両手をぎゅっとにぎった。
「ありがとう。
 でも、あまりムリはしないで。
 どうしても苦しかったら、ふたりで外国でも行こう。
 自分たちのチカラでやってけたら、何も怖いものなんかない。ユウがいってくれた言葉だよ」
「……ありがとう」
 するとユウは、やっと、笑ってくれた。


 すっかり冷めてしまったお茶を飲み終わって、ドアを開けるとこの家の鬼軍曹がニヤニヤ笑って待っていた。
「あれ? 早かったじゃん。オレいまホントにカイリつれて出ようとしてたのにさ。いいよエンリョしなくて。せっかくその茶特製のアレ入れといてやったんだから」
「「え゛」」
「冗談に決まってるだろ♪」
 オレはちょびっとキレたので、にっこり笑ってこういってやった。
「ひょっとして、おまえそんなの使わないとどうにもなんないの?
 使ったようには見えないけどさ。それじゃね」
「……………………………………」
 かくして、閉めた玄関ドアの向こうから、かすかにわめき声が聞こえてきた。
 オレは意気揚々とエレベーターに乗り込んだ。

     

急転直下:カイリの場合(前)

 その週末に、俺はプールに行くことになった。
 メンバーは、俺とユウとジュン、日野森と藤森と西崎。
(委員長と相原も、来るかと思ったが来なかった。西崎は声をかけたのだが、なんだか用があるといって断られたそうだ)

 自室であらかじめ水着を着ておいて、俺たちは家を出た。
 そういえば、俺はあの日、ユウとジュンがどんな水着を買ったのか知らない。
 知らされても、見せてもらってもまだいないので。
 いやでももう少しで見られるが、なんとなくそう、心の準備が必要な気がして、俺はジュンにきいた。
「あの、ジュン。お前たち、どんな水着買ったんだ?」
「え? ビキニだよ」
 こたえはさらっと返ってきた。
 なるほど。ビキニか。
 俺は想像してみようとした、が雑誌(先日予習のために買った)グラビアの水着モデルと、このふたりを重ねるのは俺には難しかったので、結局何の役にも立たなかった。
「もっともユウはやっぱムリだったけどな、着るの」
「仕方ないからスクール水着の方を着てきた。夏じゅうにはなんとかするつもりだが…」
「大丈夫だよ。スク水の方がエロいから♪」「俺帰る!!!」
 ユウが半泣きできびすを返す、とそこには藤森がいた。
「おはよ。どうしたのユウ」
「……………いや」
 ユウが黙り込む。
「おっす」「おはよう、待たせちゃったかしら?」
 そのとき藤森の後ろから、日野森と西崎がやってきた。
「いや」
「オレたちもきたばっか。行こう」


 プールサイドに出てどのくらい待っただろうか。
「お待たせ~!」
 意気揚々、といったジュンの声に振り返ると、そこには三人がいた。
 目立つ黄色のビキニで何だか誇らしげなジュン、ピンクっぽいセパレートで自然体の西崎、紺のスクール水着を着て西崎に背中を支えられ、水色のバスタオルをにぎりしめて赤い顔をしているユウ。
「どーだよ? カンペキだろ? さすがオレだね!」
 ジュンは見覚えのあるポーズをとる。
「先週号のヤング○○の巻頭グラビア二ページ目、左側のモデルのポーズか」
「そうそう。ユウ右側やってみろよ」
「ばっ! げほ、げほ、げほ」
 ユウは真っ赤になって咳き込み始めた。
「お、お、俺は、俺はっ……
 お前をそういう娘に育てた覚えはありませんっ!!」
 そして涙目でジュンに叫ぶ。
 その様子は……なんだか、可愛い。
 思わずぼーっとみていると、いきなりばさっと視界が水色になった。
 同時にジュンのやけににこやかな声が聞こえた。
「おまえ、ちょっと来いカイリ。ハナシがある」
「え」
 ワケがわからないが、視界がないのでどうしようもない。俺は引っ張られるままどこかへ向かった。

 視界が戻ったのはプールサイドのはじっこのほうだった。
 ジュンはユウのもっていたバスタオルを持っている。どうやら俺はこれをかぶせられていたようだ。
「このへんならいいかな」
「…?」
「お前これみてどう思う?」
 ジュンはバスタオルをそこにあったイスに投げ出し、さっきとは別の、しかし見覚えのあるポーズをとった。
「……グラビア5ページ目のポーズ」
「そうそうその通り……って違ーう!!
 オレが聞きたいのは感想! コレ見てカイリがどう思うかだよ!」
「全体的に似ているけれど、右腕の位置がすこし」
「そーじゃなくて」
「あ、水着の色があっちは白で」
「カイリ」
 いきなり、がしっと、アタマをつかまれた。
「お前オレみて、そんっなことしか感じないわけ?」
 俺はあわてた。ジュンはなぜか、泣きそうになっているのだ。
「水着の勉強として冷静にグラビアアイドル見てるみたいな、…そんな感想しか、でてこないわけ??」
「あの」
「つまりオレってカイリにとって、ただのグラビアアイドル程度のソンザイなワケ?!」
「えっ………」
 いくらなんでも俺にもわかった。俺はいまなにか、大変なことをしてしまったようだ。
 謝らなければ。俺はジュンを怒らせようとしてなんか断じていないのだ。
「あの……ごめん、俺」
「あやまるんじゃねーよバカ!!!!」
 しかしそれは逆効果だったようで俺は、絶叫とともに力いっぱい、突き飛ばされた。
 プールに落ちる!!
 ……と思ったら、予測された衝撃はいつまでたってもやってこない。
 かわりに、聞き覚えがない、若い男性の声がふってきた。
「おい、いい加減我に返ってくんない?
 オレとーへんぼくの眼鏡野郎なんかじゃなくてあっちのかわいこちゃんだっこしてたいんだけど」
 目を開けると、そこはプールサイドで、目の前に誰かの腕があった。
 どうやらそこにいた人が受け止めてくれたようだ。
「すみません、ありがとうございます」
「いえいえどういたしまして」
 不幸中の幸いだ。さて、ジュンと話をしよう。
 と思ったら、その人は全然離れる様子がない。
「あの、もう大丈夫ですから」
「っってなに能天気に会話してんだよバカカイリ!!
 てめえら、旧組織の残党だな。狙いはオレたちか」
「さすが情報担当様、よく調べておいでで。
 じゃオレのこともご存知かな。オレは……」
「旧組織リーダーの傍系の孫の友人の子孫、マキノ・レン。旧組織シンパの親父にうるさく言われ、ほかにやることもないから、地下で再結成されていた旧組織のリーダーを継ぐことにした暇なボンボン」
「独身と美青年がぬけてるよ、マドモアゼル」
「お前と子作りすんじゃねーから関係ないね!」
 いいつつジュンは、じゃき、と携帯用の端末を展開した。
 一見、手首装着型の小型メモエディターのようにも見えるが、これはそれをはるかに超える能力をもっていることを俺は知っている。
「オレは今日すご――く機嫌がわりいんだ。
 たかが情報担当と思ってナメてかかったのがお前の運のつきだ。二度と世界征服なんざ考え付けないようにしてやるからカクゴしとけ!」

     

急転直下:カイリの場合(後)

 そのとき、俺は気づいた。
 プールサイドの数箇所で、騒ぎが起きている。
「お、はじまったね。
 パワードスーツも端末も持ってきてない以上、ユウちゃん以外はタダのしろうとだし、そのユウちゃんも今日は使い物にならないだろう。
 投降したまえ。そうすれば町の人々にひどいことはしない。
 彼らはこれから我々が支配し導く領民だからね。
 オレたち……いや、オレときみが一緒にね。
 どうだい、こんなとーへんぼくやめて、オレと一緒に来ないかい?
 オレはきみの魅力をちゃんと理解しているよ。正直、任務なんかとは関係なしにきみに逢いたかった。
 本当は今すぐ、この身におったさだめなんか放り出して、一人の男として君をさらって逃げたい。本当だ」
 いきなり声を低くしてマキノ氏が話し出すと、ジュンはぽかんとしたカオになる。
「……………。マジ?」
「このうえなく」
「………………………………………」
 ジュンはしばしうつむいていたが、ふいに顔を上げ、こっちに歩み寄ってきた。
「あの」
 なにやら悪い予感がして俺が声を上げると、すごい目つきでにらまれる。
 そうして、ジュンは俺、というかマキノ氏のすぐ前に立った。
「じゃ、聞くぜ。
 これ、…見て、どう思う?」
 そして、両手を背中に回す。
「おい!」
 巻頭グラビア八ページ目、この動作は確か解説してもらった。背中のホックを外す動作だ。
 ビキニの背中のホックをはずす、ということはつまり。
「やめ……!」
 俺は思わず目をつぶってしまった。
 同時に衝撃。頭の上の方から。
 マキノ氏の腕が俺をひっぱり、俺は転倒し――
 ざばーん、という衝撃と押し寄せる水。
 俺は(というかマキノ氏もだが)プールに落ちたようだ。
 同時にマキノ氏の腕が離れ、俺は急いで距離をとる。
 後ろのプールサイドから、ジュンが笑う声がする。
「はっはっはー。そんな状態じゃもう闘えねーよな、かっこつけぇのお前はよ!
 おとといきやがれエロボンボン!!」
 見ると、マキノ氏は鼻を押さえている。どうも鼻血がでているようだ。
「ひ、秘境だぞ!! じゃなくて卑怯だぞこんなの!!
 お前ら撤退だ、撤退だあ!!」
 その声と同時に、プールサイドにいた何人かが、出口に向かって走り出す。
 さらに黒いスーツの何人かは「若!」「大丈夫ですか若!!」「うらやましいです若!!」などと言いながらマキノ氏をプールから引き上げ、護送していく。
「おいカイリ!! 上がれ、逃げるぞ!
 ここにいたらやっかいなことになる!!」
 と、ジュンの声が俺を呼んだ。
 俺は振り返ってジュンに了解の返事を返した。
 ……いや、返せなかった。
 そのとき俺は、あのグラビアでは見ていなかったものを目にしてしまい、反射的に水にもぐってしまったからだ。
「ジュン!! お前せめて隠せよたのむからっ!! 一応今は女なんだし!!!」
 水の上からユウの慌てた声がした。
「カイリ、隠したぞ。上がって来い、もう大丈夫だから」
 ユウのその声に勇気を振り絞って浮上したが、バスタオルをかけられたジュンを目にしてしまうとやっぱり恥ずかしい。
 なに見てんだよ。そら逃げるぞ、ぼけっとすんな!
 威勢のいい、いつもの声が叱り飛ばしてくれるのを俺は待った、が、それはいつまでたってもやってこない。
 それどころか。
「ダメだ……オレ、ダメだ!!
 オレ、ぜんぜん女じゃない!!!」
 ジュンはいきなり、泣き出した。
 しゃがみこんで、両手で顔を覆って。


「オレ、ちゃんと女になれたって思ってた。
 ビキニだって着れるしさ。かわいっぽくしゃべったりとか、抵抗なくできるしさ。
 ……でもそんなんうわっつらのマネだけだ。
 女のマネできるからって……なれてたつもりでいたけど。

 違うんだ。根本的に違うんだよ。

 ふつーの女は、敵の顔面にビキニ投げつけてハイキックなんかかまさないよ……
 そんなこと、とっさに考えつくもんじゃないよ。たとえ考えてもしないよ!
 だから、……そういうとこ、アレだから……だから、カイリも、………
 オレ、うち、出る。ちゃんと女になれないオレなんか、カイリのそばにいちゃダメだ。
 もしもこんなんが隣にいたらカイリ、きっといらない苦労するから……」

 ジュンはかなりの泣き虫で、普段から怒って泣いたり笑って泣いたりしていた。
 でもこんな痛ましい泣き方ははじめてだった。
 廃工場あとではじめて、泣き顔を見せたときと似ている。
 でもそのときよりずっとずっと辛そうだった。

 俺はプールサイドにしゃがんで、ジュンを抱きしめようとした。
 ジュンは抵抗した。俺を突き飛ばして、逃げるつもりだろう。
 そうしたらジュンは、そのままどこかにいってしまう。
 しかも、こんなことなんかで、心を痛めて。
 そんなのは駄目だ。俺は全力でジュンにしがみついた。
「離せよ、離せったら! オレはダメなんだよ、オレなんかゼンゼンダメなんだから!!」
「駄目じゃない」
「ダメだよ」
「駄目じゃない」
「ダメだったら」
「駄目じゃない」
「ダメなんだってば!!!」
「いいから!!」

 このときのことを、俺はあとあとまで言われた。
 このとき俺は、今まで出したこともない大声を出したそうだ。

「ビキニ投げたっていい。グラビアの真似したっていい。
 ジュンだったらいいから。大丈夫だから。
 ……ぜんぶ大丈夫だから。ジュンなら、大丈夫だから」

 ジュンは盛大に泣きながら俺にしがみついた。
 そのとき遠くサイレンが聞こえ始めた。
 どうも警察が呼ばれたようだ。
 ユウが声をかけてきた。
「ジュン、取り込み中だがロードで逃げよう。もう全員ここにいるから」
「……わかった。待ち合わせ場所に飛ぶぞ」
 黄色い閃光。
 俺たちは元通り服を着て、今朝の待ち合わせ場所に立っていた。


「もう、なにいってるんですかあジュンったら☆」
 旧組織の襲撃とあれば、そのまま解散はできない。
 俺たちはその足で、運命向上委員会の基地に向かった。
 一部始終をきいたアプリコットが、開口一番いった言葉はコレだった。
「オンナノコ代表としていっちゃいます。
 オンナノコのココロをもっていないコは、こんなこと悩まないですよ。
 自分がオンナノコらしくないなんて。
 だからジュンはだいじょうぶ。ちゃんと、オンナノコになれてますよ。
 いっそのこと、オトコノコになるの、もうやめちゃったらどうですか?
 これからの季節、カイリさんには目の毒ですけどそれはそれで」
「……………………。」
「こら。おまえいまなに想像してるカイリ。顔が赤いぞ」
 欲情しそこねればしそこねたで怒られ、してしまったらしてしまったで小突かれる。女って、難しい。
「もし、そういうことになったら、俺はあそこを出たほうがいいだろうな。ジュンのメシが食えなくなるのは惜しいけど」
「何ケチなこと言ってんだよ。メシぐらい毎回食いに来い。お前の前でいちゃついたりなんかしないから。
 むしろお前は、あいてる部屋借りて藤森呼んで一緒に暮らせばどうだ? リハビリも進むだろ♪」
 すると藤森がにっこり笑った。
「ああ、そのことだけどね。リハビリ、やめるかもしんない。
 それでも一緒に暮らしていいかな」
「な!!!!!!」
 その瞬間、ジュンがものすごい勢いで立ち上がった。
 そしてものすごい早口でなにか言いはじめた(俺にはほとんどききとれなかった)。
「…から…ぜえぜえ…ひ、日野森!! お前こいつの相棒だろ、何とか言え何とか!!」
「……………………………………………………」
 日野森は凍りついたように呆然としている。
 そのとなりで、西崎とアプリコットがなんだかよくわからない会話で盛り上がっている(俺にはぜんぜん理解できなかった)。
「そんなこというんだったらな……そんなこというんだったらな……
 オレだって女やめてやるから!! さもなきゃ藤森、おまえが女になれっ!!」

     

最強コンビの仲直り:プリカの場合

 アツシさんのからかいにジュンがエキサイトしてしまい、このままではハナシを続けられないので、あたしたちはいったん休憩をとることにした。
 ジュンはユウとカイリさんをひきつれて、飲み物をとりに行った。
 みすずちゃんとイサミさんがアツシさんに言った。
「淳司ったら、ちょっとやりすぎじゃない(笑)?」
「つか淳司……お前、いつから女子からかうようになったんだ?」
「あっ」
 アツシさんが“いま気づいた”というカオになる。
「そうだよね、ジュンも女子なんだよね……
 オレったら何やってんだろ」
「ていうより、勇以外をからかうなんてこと自体今までなかったわよ」
「いわれてみればそうだね……
 いや、勇以上のやつって今までの人生でいなかったし。面白さにおいて」
「なんかゼンゼンうれしくないんですが俺。」
「ま気にすんな。」
「…………………………(泣)」
「でもこれはよくないよね。
 いくら自分とおんなじようなカオしてるからってさ……。
 オレ、ジュンにあやまってくるよ」
 アツシさんは立ち上がった。
 あたしはジュンのおねえさんとして、それについていくことにした。

 そして、のみものベンダーの近くにて。
「……なんだよ調子狂うな……」
 アツシさんに頭を下げられると、ジュンは奇妙な顔をした。
 そして自分のかかえている缶ジュースを数本アツシさんに渡した。
「とりあえずこれお前も持ってくれよ。戻って話そうぜ」
「あ、オレたちのぶんももらってくれたんだ。ありがとう」

 会議室に戻ると、すみっこの席で缶ジュースを手に、ふたりは差し向かい(というか、机の角をはさんでナナメ向かい)になった。
「で、どうしたんだよ急に」
「いや、オレ、勇とみすずにいわれて気づいたんだよ。
 ジュンに悪いことしてたって。
 ……ジュンも女子なのに、あんなふうにからかったりしてさ。
 いくらもと男だって、自分と似た顔してるからって、ちょっとひどかったなって。
 これからは気をつけるよ。ごめんなさい」
「……………………あ、ああ。
 そう、だよな……」
 するとジュンは面食らったカオになったのち、頭をかいて頬を染めてこたえた。
「いや、オレもまだ仮免女子だし。女子扱いできなくてもしかたねーよ。
 あのさ。オレほんというとおまえのキモチ、わかんなくもないんだ。
 オレもさ。ユウ見てると無性にからかいたくなるんだ。てかこんな面白いヤツっていないんだぜ。日野森も面白いけど、オレ的にユウはサイコーだね。だからついついいぢめちまうんだよな。いちおヤツもいま女子だけど。」
「うーん。それはいいんじゃないの? ジュンも女子なんだし」
「おい!」
 ユウがとほほ顔でさけぶ。
 しかし二人はきいてない。
「藤森。おまえって、意外と話せるやつだったんだな」
「ありがと。ジュンこそ、勇のよさをわかってくれてるみたいでうれしいよ」
「おおーい(泣)」
 イサミさんが半泣きで呼びかけるけど、もちろん二人はきいてない(笑)
「なんかオレたち、いい友達になれそうだな!」
「うん。あらためてよろしくね!」
 二人はしっかりと握手した。
 めでたしめでたし。
「めでたくねー!!!」
「アプリコット! 旧組織のことはどうするんだ!!」
「ええ、とりあえず接触してみて、篭絡出来そうになかったらセオリーどおりにぶっ潰しましょう♪」
「………………………………………………………………………………………(怯)」


~つづくかも~

       

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