Neetel Inside ニートノベル
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ぼくが死んでから死にたくなるまで。
Act3. 森の隠者になってのっとられて戦わされて死にたくなって

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Act3. 森の隠者になってのっとられて戦わされて死にたくなって


~~使者~~

 それからしばらく後。
 ぼくはひとり、あの森の小屋で暮らしていた。
 表面上は、隠者になるということにしたのだが、本当は顔を隠すためだった。
 ふと気がつくと、ぼくの容姿は仲間たちに比べて若い。
 もっと言うなら、ロビンを吸い取ったときからほとんど変わっていないことに気づいたのだ。
 あれからもう、何年もたつというのに。
「やっぱ独身だと老けないね~。クレフにいちゃんうらやましー」なんてアンディたちがフォローしてくれるが、このままだと嫌なことになりそうな予感がぼくたちにはした。
 四人で相談した結果、ぼくはアンディたちの支援をうけて、しばらく森で暮らすことにしたのだった。

 そんなある日、ぼくは道端で倒れている、ひとりの少年を見つけた。
「あの、大丈夫ですか?」
 思わず手を差し伸べた、そのとき。
“しまった!”
 久しぶりのあの感触。
 ぼくはまたしても、ヒトの魂を吸い取ってしまったのだった。

 少年は冷静だった。
 彼はどうやらソウルイーターの言い伝えを知っていたようで。
 それどころかぼくのことすら知っていた。
『ソルティスは……亡くなったのですね。
 私はソルティスの弟、リュスト。領主家におつかえする者です。
 わが主は以前よりソウルイーターを探しておいででした。そこへあなたのことを聞きつけた。そして私が遣わされたのですが……
 そのあなたがまさか、兄をも看取ってくださっていたなんて。
 天の配剤には驚くばかりです』
 ぼくのなかから聡明な口調で、自身を語ってくれた。
 リュストくんは代々領主家につかえる家柄で、ソルティさんも本来はりっぱな騎士様として、領主様をお守りしているはずだったというのには本当に驚かされた。
 そういわれてみればソルティさんは博識だったし、ときどき気品のようなものを感じることもあり、なんとなく納得ではあったけど。
『実は……クレフ様。
 看取っていただいたお礼もできずに、お願いをするのは心苦しいのですが……』
「あ、あの。クレフでいいです。
 それに看取ったなんて……ぼくはただ、偶然そこに居合わせただけで、助けてもあげられなかったし、ぼくにできることなら言ってください」
『よかった。
 クレフさん、どうか私と、我が主のもとへおいでになってください』
「え…………」


 ぼくはこのときほど、自分のかるはずみとおひとよしを恨んだことはなかった。
 このすこし後、ぼくは予想だにしてなかった怖い、怖い目に遭うことになったのだから。


 ぼくはリュストくんに連れられて、領主様のお館(建物がいくつも建ってるし、ぼくには小さな町にしか見えない……)に行った。
 番兵たちはぼくの身なりを見てめんどくさそうなカオをしたが、リュストくんのしていたブローチをみせると大慌てで走っていった。
 数分後、ぼくは立派な、見たこともないような大きな建物の、これまた大きな部屋に通されていた。
 綺麗な絵、色とりどりの大きな花。高価そうなつぼや彫刻。
 足元のじゅうたんは鮮やかでふっかふかで、だってのにリュストくんがさくさく歩いていくからぼくはやめてくれ恐れ多いせめて靴をぬがせてと叫びだしそうで(苦笑された)。
 しばらくそのままぼうぜんとしていると、うしろからいきなり声をかけられた。
「貴様か? リュストのブローチを持ってきたという者は」
 よく響くその声はなんか怖くてぼくは逃げ出したくなった。
 ちらっと見るとその男性は、まだ若いけど予想通りの立派な身なりと体躯、威圧的な立ち方と見下したカオで、ぼくはとっさに謝って逃げ出しかけた。
 するとリュストくんがむりやりぼくを制止し、ブローチを差し出してひざまずく。
『リュストでございます、お館様。
 ソウルイーターをつれて参りました』
 対して男性は、鼻で笑った。
「リュスト? 貴様が?
 冗談もたいがいにしてもらおうか。
 おおかたリュストからソウルイーターのことをきき、やつを殺して演技をしているのだろう。怪しいやつめ。
 衛兵! やつを捕らえよ。殺しても構わん!!」
「そんな!!」
 ぼくは驚愕した。
「ソウルイーターというなら敵の魂を食らって生き延びるだろう、ニセモノならば死ぬまでだ。貴様がソウルイーターというならば、ここで身の証を立ててみせよ!」
 あっというまに数人の衛兵が、槍や剣を手に現れた。
 遠巻きにぼくを取り囲む。
「やめて! やめてください!! リュストくんがなかにいるのに!!
 それにソウルイーターでもケガは」
「わああああああっ!!」
 そのとき、衛兵の一人が叫びながら突進してきた。
 肩に熱いような感覚がはしった。

       

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