Neetel Inside 文芸新都
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「はぁ、やっと終わった」
 男は、拳銃を下ろして大きく深呼吸した。天井のスピーカーから声がした。
「お疲れ様でした。大変ユニークな展開でした。”観客” の皆さんも、これまでのゲームの中でも最もスリリングだと喝采してますよ」
「ともあれ、これで入社試験は合格なんだね、『マネージャー』さん」
「ええ、お見事でした。私も実に好奇心と不安感を駆り立てられましたよ。なにしろ、あなたが生き残ってくれなければ、私がまたそのゲームに参加するはめになるんですから。あなたを選んで正解でしたよ」
「なるほどね。まあ、俺があんたの立場でも、そういう気分だっただろうな」
「あなたもこの気持ちをいずれ味わうはめになるんですよ。私に代わって、今度はあなたが『マネージャー』になるんですから」
「その話は何度も聞いた。覚悟はできてるよ。俺に代わる新しい『マネージャー』候補を探せば、さらに昇進できるんだろう?」
「もちろんです。ところで…」
「うん?」
「最終的な勝因はなんだったと思いますか?」
「俺が青だと、二人とも思っていたってことだろうね」
 男は新しいふたつの死体のポケットから、石を取り出してテーブルに並べた。ふたつとも、青だった。そして生き残った男は、自分のポケットから、赤い石を出してテーブルに置いた。
「皮肉なもんだね。最後に青同士が撃ち合うとは」
「それも、あなたの計算のうちでしょう。それから」
 『マネージャー』は、少し卑屈そうに言った。
「あなたが冷静沈着な人間である、ということを彼らに植え付けたことも」
「まあね。冷静な人間を演じるのも楽じゃなかったよ。途中で何度か素に戻っちゃうところだったからね」

 男は、背伸びをして大きくあくびをした。
「ああ、眠い」
「精神的に疲れたでしょうから、ごゆっくりお休み下さい」
「まあ、1番の失敗は、最初に一発撃っちゃったことだな。一回も引き金をひかないつもりだったが、最初にあのデブが何をしでかすかわからなかったんで、思わず撃っちまったよ」
「まあ、仕方ないでしょう。でも、一発だけでもたいしたものですよ。私がゲームに参加したときは、3発も撃ってしまいましたからね」
「へえ、意外だな」
「私の場合、あなたと逆に、感情的で何をするかわからない人間を演じてましたから」
「…なるほど」
「それでは、ドアを開放します。今夜は寝室でゆっくりお休みください」
「言われなくともそうするよ」


 『ドクロ』ゲーム終了
 『ユニクロ君』ゲーム終了



 『青服』「第4回”娯楽提供社”入社試験」合格


 -おわり-

       

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