Neetel Inside 文芸新都
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私とお酒の日々
2010/07/17/22:44(土)「お宅訪問っ」

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 こんばんは。
 千世子です。
 
 
 今日は山崎くんの家に行きましたっ。
 
 ひさしぶりに2人そろって暇な休日だったので、おでかけ……いえ、デートしてきました。行き先は百貨店を数件、夏のバーゲンがお目当てです。最近忙しそうなのでおそるおそる誘ってみましたが、快く了承してもらえました。
 
 何か買うわけでもないんですが、相手の好みの服装、小物を知るにはすごくいい機会です。と同時に、相手をそれとなく自分好みに仕立て上げる機会でもあるんですが、山崎くんの私服は最初から私好みだったので問題なしですっ。ふふふっ。
 
「これとこれ、どっちがいいと思う?」
「どちらも似合ってますよ」
 
「……これとこれなら?」
「その2つもいいですね」
 
「…………どれがいい?」
「千世子さんの私服、好きですよ」
 
 そうでした、男性は女性の買い物に少しも興味を持たないんでした。……まあ、普段の服を好きって言ってもらえたので良しとしましょうっ。
 
 いくつかバーゲンを見たところで、雲行きがあやしくなっていました。今日はもともと曇りで日差しはあまりなかったのですが、今にも雨が降りそうな天気でした。
 
「ちょっと心配になってきた……」
「そうですねぇ……」
 
 幸い洗濯物は干してなかったのですが……ですが、せっかくの休みでデート、もうさよならは嫌だなぁ……と考えていたとき。
 
「もし良ければですが……」
「ん?」
「うち、来ませんか?」
 
「うん、行きたいっ」
 
「……え?」
 
 即答に戸惑っている様子。だって断る理由がないんです。山崎くんは、豹変してオオカミになるようなことなんて、ありませんからねっ。
 ……まあ他の理由として、普段から年齢差を意識していて、誘うときも遠慮がちに尋ねてくる。そして惚れた側。これだけ優位な私が、今さら心配するようなことはないはず……うーん、ひどい推測です(汗)。
 
 
 
 電車に乗って、近くのスーパーに寄ってから山崎くんの家に行きました。
 理由はこれです。
 
「お酒、何がある?」
「ビールがあります」
「他には?」
「……ビールだけです」
 
 まあ一途。どれだけビール好きなんでしょうか。
 食べるものはそれなりにあるようなので、ウィスキー角瓶と炭酸水を購入。じめっとした空気にはハイボールがぴったりです。
 
 山崎くんの住まいは、私と同じぐらいのマンションでした。駅から近いので、ちょっと家賃が高いかもしれません。
 
「もう呑みますか?」
「もちろんっ。何かつまめるもの、用意してもらっていい?」
「はい、氷やグラスは好きに使ってください」
 
 ジョッキサイズのグラスに氷を入れて、千世子流ハイボールを作りました。ちょっと興味があったので冷蔵庫を覗いたら……うーん、ビールばっかり。
 ややうんざりしましたが、ちょっとめずらしい緑の瓶ビールがありました。なかなかいい趣味しています。
 それとハイボールを用意した辺りで、来ました来ましたおつまみが。冷えたトマトのスライスと、冷奴のようです。
 
「涼しげだね」
「きゅうりもありますが、それはあとにしましょうか」
 
 夏のおつまみは冷たくて手軽さ重視なのです。そうなるとトマトと冷奴ときゅうりは「夏のおつまみ三種の神器」ですっ。
 
「それじゃ、かんぱーい」
「かんぱいー」
 
 ごっごっごっ。
 
「んー、うんっ」
 
 暑い日はハイボール! これですね! 自分で作るハイボールって、どうしてあんなにおいしいのでしょうか……!
 
 
 
 一通り堪能して、ちょっとお片づけ。ポキポキに折ったきゅうりを塩とごま油で和えた千世子流塩きゅうりを食べつつ、今度は水割りをお楽しみ。
 実は、ずっと山崎くんの隣に座っていたんですが、夏はダメですね……暑くて、ちょっと隙間を空けて座っちゃいますね。ぴたりとくっついて座るのが好きなのに……
 程良く酔いも回ってきたところで、だらだらとマンガを読んでいました。
 
 おすすめされたのが、現代の錬金術のマンガでした。うーん、熱い話でした……少年マンガはあまり読みませんが、これはなかなか…
 
「けっこうおもしろいね」
「アニメやゲームにもなっているんですよ」
 
 会話が少なくなり、お互い読書に夢中、そんなときでした。
 
「千世子さん」
「んん?」
「ハグしていいですか?」
 
 思わず本を落としてしまいました。
 
「酔って……は、いないみたいだね」
「もちろんです」
「もしかして、家に誘ったのは計画的犯行?」
「ちょ、ちょっとだけ……」
 
 ふう。ここでため息。
 
「クーラー」
「はい?」
 
「クーラー、つけてくれるなら、いいよ」
 
 
 
 そのあとは、後ろから抱きつかれたままマンガを読んでいました。
 お腹に手を回されて密着していたり、頭を撫でられたりすると、ちょっと変な気分になっちゃいますね……十分すぎるぐらいクーラーはかかっていましたが、体が火照って頭の中がぽわーとしていました。
 
 誰かの体温って安らぎになりますね……言葉にはできない、よくわからないエネルギーを補充させてもらった気分です。
 山崎くんは月曜日、祝日なのに仕事らしいので、私からのエネルギーを補充してくれてたら……いいなぁ。
 
 

       

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