Neetel Inside 文芸新都
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私とお酒の日々
2010/08/11/23:45(水)「寂しかったので……」

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 こんばんは。
 千世子です。
 
 
 今日はひさしぶりに、桐子さんと晩ご飯を食べてきました。
 
 
 というのも、最近、彼が忙しくなってきたんです……金曜日から日曜日はどうにか大丈夫ですが、平日はほとんどダメ、おしゃべりやいっしょに帰ることすらできないぐらいです……
 ついこの前も、また研修出張があって平日ほとんど空けていたり。お昼も何かとズレることが増えてきました。
 今日もずっと忙しそうで……ほとんど離席して、どこかに行っていました。私はけっこう暇しているので、ちょっと申し訳ない気持ちです。
 ついに今日、寂しさがピークになったので、桐子さんを誘いました。
 
「前にもあったような気がするなー、こういうの」
「そうでしたっけ?」
 
 6月19日に同じようなことをやっていますが、まあ黙っていたので、たぶんバレていません。
 今日は有機野菜や玄米など、健康に良さそうな食材を使っているカフェレストラン(私の価値観では定食屋ですが)でした。せっかくの健康食メニューだったので、今日はアルコールを控えめに、梅酒のソーダ割りにしました。
 
「たまには健康食ってのも悪くないわね」
「そうですねー」
 
 私としてはちょっと物足りない(お酒的な意味で)と思いましたが、ウーロン茶を飲みながらならぴったりなんでしょうね……
 
「で、最近はどうなのさ?」
 
 来ました。男女共通の『最近どうなの?』質問っ。
 
「最近ですかー? 普通ですよー?」
「その普通が気になる」
「ご飯食べて、お酒呑んで、いっしょに帰ったりとか……前に話したときと同じですよ?」
「ふーん」
 
 私は肉じゃがの糸こんにゃくをちゅるちゅる。
 桐子さんはほうれん草のおひたしをもしょもしょ。
 
「ダウト」
「んなっ……?」
「アレでしょ? 金曜日はどっちかがどっちかの家に泊まったりするんでしょ? ん?」
 
 図星すぎて言い返せなかったです……
 やっぱり、帰るタイミングを同じぐらいにすると、バレやすいんでしょうか……
 
「どうして、ダウトとわかったんですか……?」
「たまーに見せる、ツヤっぽい表情かな」
 
 恐ろしいです、女性の観察力……いえ、桐子さん特有でしょうか。
 
「近ごろ忙しそうにしてるよね」
「そうなんですっ。平日はぜんぜんいっしょにいれないんですっ」
「まー、しょうがないんじゃない?」
 
 しょうがないです。仕事だから、しょうがないんです。
 でも、でも……寂しいものは、寂しいんです。
 
「金土日だけじゃ、不満?」
「不満です……寂しいです」
「あらー、素直になっちゃって」
 
「何か呑む?」と訊かれたので、焼酎のウーロン割りを頼みました。まだ健康には良いはずです。
 
「で、地ビール巡りはできそうなの?」
「そうですねぇ。もうちょっと落ち着いたら、旅行したいなーと思っています」
 
「他のお酒には興味持ちそう?」
「いえ、ビール以外、興味ないそうです」
 
「アレでしょ? いっしょに、何もせず寝るときは、ブラ外して寝ちゃうぐらい仲良しなんでしょ?」
「あ、は……え? ちょ、ちょっと!」
 
 さ、最低なトーク……この人、オレンジジュースで酔っているんでしょうか。
 図星かどうかはノーコメントっ。
 
「もう同棲しちゃったら?」
「うー……マンションの契約、1年単位なんで、来年の3月ぐらいに考えてみます……」
「来年?」
「え、はい」
 
「ふーん」と言って、それ以上訊いてくることはありませんでした。ぱくぱく食べているひじきが、とてもおいしそうでした。
 五穀米っておいしいですね。ちょっとクセになりそうです。
 
 
 
 結局そのときから帰るまで、桐子さんは何か考え事をしている様子でした。
 まあ、私がどれだけ考えてもわからないことでしょうし、相談されたときに考えることにします。どうせなら、カウンターの天ぷら屋で相談を受けたいものです。
 
 

       

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