Neetel Inside 文芸新都
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私とお酒の日々
2010/07/02/23:14(金)「立ち呑み屋に行きました」

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 こんばんは。
 千世子です。
 
 
 私がお酒好きというのは、皆さんもご承知の通りだと思います。何を今さら、ですね。
 しかし残念なことに、私の周りにはお酒好きが少なく、何かと1人で行動することが多くあります。主に、お店選びのときですね。
 
 カウンターのお寿司屋さん。
 お蕎麦屋さん。
 ショットバー。
 そして、居酒屋。
 
 おおよそ、友達に言えばヒかれるようなところも1人で行っていました(念のため言っておきますが、ホストクラブとかは行ったことはありませんよ)。
 ですが、そんな私でも1人じゃ行けそうにない、そう思っているところがありました。
 
 
 それが、立ち呑み屋。
 
 
「だから、立ち呑み屋に行きたいの」
「はあ、そうですか」
 
 こんなときこそ、ステキな彼氏さんの出番ですね。
 聞けば立ち呑み屋もちょくちょく行っているとのこと。うーん、ますますいい感じです。
 
「言っておきますが、あんまり落ち着ける場所じゃありませんからね」
「その辺は大丈夫」
 
 私の持つ立ち呑み屋のイメージは……
 
・パっと入ってパっと出る。
・千円以下に収める。
・ハシゴの1つ。
 
 そんなイメージを言ったら、「そこまで硬派じゃないですよ」と笑われました。
 む、むー。
 
 
 
 山崎くんに案内され、普段から使用している駅の地下街に行きました。ここの立ち呑み屋は、普段はフツーの街の酒屋さんで夕方から立ち呑み屋をしているそうです。
 それにしても、お酒のスペースよりも立ち呑みスペースのほうが広いのですが……やっていけるのでしょうか。
 
 腰より低いテーブルが並んでいて……本当にイスがありませんでした。
 
「ここは、向こうのカウンターのところで酒やつまみをもらってくる、後払い制なんです」
「へー、そうなんだ」
「テーブル番号を言って、好きなものをもらってきたらいいですよ」
 
 どうやらソワソワしていたようで、「先、どうぞ」と言われました……
 人の間をするする抜けていくと、ありますあります、小皿の類が。
 トマトスライス、枝豆、たこわさ、塩辛、おでんなどなど。お酒もいろいろ、不釣合いにも感じるワインまで。
 
 うーん。
 
 ちょっと悩んで、とりあえず無難に頼んで戻りました。
 
「ただいまー」
「……ずいぶん控えめですね」
「そう?」
「それは……?」
「日本酒と塩辛」
 
 私は両手の物を置いて答えます。
 
「え?」
「日本酒と塩辛、だよ?」
「それだけ……?」
「ちょっと日本酒足りないかもね」
 
 何か言いたげでしたが、山崎くんは瓶ビールとおでん盛、砂ずり焼きを持ってきました。
 ……おでんがおいしそーです。
 
「おでん食べていいですからね」
 
 ……なぜ考えていることがわかるのでしょうか。
 
 山崎くんが手酌をしたところでさっそく乾杯っ。
 
 キュピ。
 
「くーっ」
 
 ここで塩辛っ。
 
 カパッ。
 
 そしてお酒っ。
 
 クッ。
 
「う、う~っ」
 
 日本酒と塩辛、そりゃあ間違いない組み合わせっ。
 
「おでん、もらっていい?」
「どうぞどうぞ」
 
 あむっ。
 
「ふはー」
 
 牛すじ串をもらいました。うーん、口の中でトロけるようです。
 
「千世子さんのような人は、お酒の場では貴重な存在ですよね」
「な、なにがぁ?」
「水族館のペンギンみたいなもんです」
 
 ……良い意味で捉えておきましょう。
 
 
 
 時間も経って、店内は混雑してきました。
 
「やっぱり、混んでくるもんだねー」
「そうですね……と」
 
 山崎くんが私の肩に手を回して、引き寄せました。
 
「注意しないと、ぶつかりそうですね」
「う、うん。気をつける……」
 
 私は少し離れて、まだ残っている塩辛をつまみます。
 
「…………」
「……」
 
 かれこれ3杯目の日本酒をコクリコクリ。
 
「…………」
「……」
 
 ……さてさて。
 
「ちょっと大胆過ぎや、しないかい?」
「あ、すみません」
 
 やっぱり。どこか不自然な気がしていたのです
 とりあえずわき腹をつっつきながら尋問です。
 
「キミはー、見かけによらず大胆だねー」
「す、すみま、せん」
「なんだー? ムッツリなのかー?」
「め、めっそうも、ございません」
 
 ……しょうがない子ですね。
 
「そういうのは、帰り道にしてあげるものだよ」
 
 年上の余裕を見せつつ言ったつもりですが、確実に顔は赤かったと思います……
 
 
 
 今日は立ち呑み屋を十分に堪能できましたっ。これで苦手意識のあった立ち呑み屋も克服ですっ。
 ……むむ、これで私に隙はなくなったのかもしれません。
 
 そして帰り道は……ちゃんと言った通り、できていました。
 ……えへへ。
 
 

       

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