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殺人事件研究クラブ
斎京町密室殺人事件

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『第1話、殺人事件研究クラブ』



とある県の住宅街に囲まれた斎京町の澄長高校に入学して、もう6日が立つ…にも関わらずやっている事は中学とそう変わりはしない毎日が続いていた。
別に期待していた訳ではないが、本当に何も起こらない事に気付くと、少しでも期待していた自分が恥ずかしくなる。
何かきっかけさえあれば俺だって…俺だってきっと…

「南条…おい南条!聞いているのか?南条 悠木!」
「え、え…あ!はい!?」

ボーっとしていた悠木に担任の先生が声をかける。

「先生の話を聞いていたのか?南条」

クラスが皆がクスクスと笑いだした。
普段の悠木はこんな風にドジっ子ではないし、クラスの悪ガキでもない、どちらかと言えばあまり人と話さない近寄り難い性格をしていた。

「すいません…注意します」
「…っと言うわけで、もう部活に参加している奴もいるが、今日から1週間の間に部活動の入部届けを先生まで出しに来ること。いいな?それじゃ朝礼はこれで終わりだ」

クラスの連中が席から離れ思い思いの休憩を楽しむ中、悠木は部活動一覧の紙を見ながら悩んでいた。

「部活か…体育系は疲れるし、文化系は何か陰湿なイメージがあるからなぁ。」

悠木自身、自分も十分陰湿だと思っていたが、何故か知れないが文化系は入る気がしなかった。
かと言って、体育系で頑張れる自身もないし…
結局の所は帰宅部で落ち着くんだろうなと、自分の中で勝手に決め付けていた。
『何かきっかけさえあれば俺だって…俺だってきっと…』
こんな言葉、結局はきっかけが無いと何もしない証拠じゃないか…
『きっかけ』に期待したら負けなんだ、期待してしまったら、本当に『きっかけ』が来なかった時に気持ちが落ち込んでしまう…だから俺は初めから逃げる道を選択する。
初めから色々な事から逃げてしまえば、自分は傷つく事はない、だから俺はあまり人とは関わらないように生きてきた、部活だってそうだ今まで所属した事はない、最低限の事さえ出来ていれば後は逃げたって…
悠木は入部届けの紙をクシャクシャ丸めた。
その時…

「南条くんは何の部活に入るの?」

急に自分の世界から一気に現実に引き戻された感覚がして悠木は戸惑った。

「いや、別に…特に考えてないけど」

帰宅部だと言うつもりが、ついつい別の事を言ってしまった。
彼女の名前は天川 セナ、中学の頃からの同級生である。
特に仲の良いわけでもなくただ中学3年間と同じクラスだっただけだ。

「南条くんなら……卓球部とか似合いそうなのにね」

大きなお世話だ。
そこはお世辞でもバスケとか、せめてテニス位は言って欲しかった所だな。

「天川さんはもう部活決めたの?」
「うん。わたし、その部活があるからこの高校に進学するのを決めたんだ!親にも言って無いのよ」
「へーそうなんだ。吹奏楽?いや、弓道とか?それともメジャーなの?」

特に悠木自身は興味が無かったが、話の流れじょう聞くしかなかっので参考までにと言うか、大体女子と話す機会があまり無かったので聞くことにした。
だが、悠木はその部活名に衝撃を覚えた事は今でも忘れない…

「違うよ、殺人事件研究クラブって言うの。知ってる?」
「……え!?」
「だから、殺人事件研究クラブだって。部活動一覧にも書いてあるよ」

悠木は速攻で部活動一覧の紙をチェックした。
体育系と文化系の欄から少し離れた所に書いてある。

「『みんなで沢山の殺人事件を解明しましょう!!! 部長:篠原』」
「ね?面白そうでしょ!」
「とてもフレンドリーだね…」

悠木はとてつもなく怪しい臭いを感じていた。
それもそのはず『殺人事件研究クラブ』は殺人事件に遭遇する事を前提に話が進んでいる、もし3年間に1度も殺人事件に遭遇出来なかったら、一体どうするつもりなんだろう?と
言う疑問さえも持たせてくれる部活だからだ。

「ねぇ南条君。もし暇なら一緒に見学に行かない?」
「(これはもしかして俺がずっと待っていた『きっかけ』って奴なのか?……だけどその部活が殺人事件研究クラブってどーよ?)」

悠木は考えていた。
これは神様が俺にくれた最大のチャンスなんじゃないかと…だが、そのチャンスはバスケ部でもテニス部でもない、もちろん卓球部でもない…そのチャンスは殺人事件研究クラブに与えられたのだ。

「まぁ、見学位なら行っても良いから…」
「ほんと!?ありがとう!友達誘っても誰もOKしてくれなくて困ってたんだ。それじゃぁ、約束ね」
「(そりゃそーだ、普通の生徒なら必ず断るよな…)」

休み時間の終了を告げるチャイムが鳴った。

突然クラスの女子から殺人事件研究クラブへの見学を進められた悠木は次回遂に殺人事件に遭遇する…

       

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