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『第13話、沈黙』





ここまでのあらすじ…
殺人事件研究クラブに唐坂佳奈から依頼があった。その内容は唐坂家の遺産を巡る問題だった、そして唐坂家のある高豪村で悠木達を待っていたのは死神祭りと呼ばれる奇妙なお祭り。
その死神祭り一日目の夜に唐坂家の長男である信夫が死体で見つかり、二日目には病死した先代の当主の兄である智和さんが殺された…

第一の犯行で重要な手掛かりと言った物は殆ど残ってあらず、悠木には手も足も出せない状況だったが、智和の死で死神からの挑戦状を受け取り悠木はある作戦を実行する…

『「今日、皆一緒の部屋で寝ませんか?」』この言葉によって強引かつ正確に死神の行動を抑制する事ができる。
だが、死神の方も悠木がこの作戦で来ることは予測済みだったらしく、中々尻尾を出さない状況…

そして、死神祭り三日に突入する…

ここまでの疑問
・返り血
・血が付着していない円状の跡
・なくなった首
・落ちていた花びら
・カーテンのついていない窓
・犯行が起こった日
・アリバイ

「みなさん!!おはようございます」

悠木は何時になくハイテンションで皆に挨拶をした。

「…お、おはようございます」

早貴はあまり寝付けなかったらしく、目にクマが出来ている。

「それじゃ、朝ご飯食べましょう。千代さん、朝食の準備は出来てますか?」
「ええ…出来てます」

千代・佳奈・セナの三人が朝食の準備をし始じめる。
今日の朝食は鮭の塩焼きに白菜の浅漬け、だし巻き卵、味噌汁にご飯。

「ちょっと!私達死神祭りの準備があるんだけど」

タカコが悠木に向かって吠えた。

「ダメです。死神祭りが始まるまでは、原則この大広間にいて下さい」
「大体、死神だってこんな明るい内に行動なんて絶対にしないわよ!」

悠木は素早く反論する。
まるで、この言葉タカコが言うのを待っていたかように…

「どーして、そんな事がタカコさんに解るんですか?僕の裏を書いて行動してくる事も十分に考えられますよね」
「それは…」
「もしかして…貴方が死神なんじょないんですか?」
「ち、違う!私はただ…」
「この様に疑われたりしますから、軽はずみな行動は絶対にしないでください」

そう…これは夢ではない…まだこの中に死神がいるのだ。寝たら全部なくなり、夢落ちでした!!みたいな展開には絶対にならない…
朝食を食べている時はみんな黙っていた、だがその空気はとても重くて悠木みたいに敏感な体質でなくても感じる事の出来る雰囲気…飯が不味くなる。

悠木の一言が効いたらしく、午前中は特に何も無いまま時間だけが過ぎて行く。

[午後]

「…」
「…」
「……」

昼間になっても、容疑者と部員の皆は一歩も外に出る事もなく大広間に籠ってばかりいた…
沈黙がこの状況の全てを物語っている。
皆口には出さないが本当はとても疲れているし、ストレスも溜まっているだろう…

「な、南条くん…もう…これくらいで良いんじゃない?」

この空気に耐えられず、セナが口を開く。

「……」

悠木は無視をした…
正確には無視しなければならないからだ。これは言わば死神との我慢比べ、死神がこの空気に耐えられず、何かアクションを起こして来るとするならば…それは…昼間だ。
朝の段階では死神は自分を行動を探ってくるだろうと悠木は考えていた。自分を頭の良い人間と思っているなら絶対に悠木の裏をかこうとするのが常套手段、だから朝の段階では犯人は行動を起こしてこない…

実は悠木のこの判断は正解。死神自身は死神祭りが始まるまで行動はしない予定だったが、そこにはある大きな誤算があったせいで計画は変わることになる。

「ちょっと…外に出て良い?」

タカコがうんざりした様子で悠木に話しかける。

「私も外に出たいんですけど…」

早貴もタカコに賛同する。

「実を言うと私も限界で…」
「もう良いでしょ?南条くん」

タカコの一言で場が一気に盛り上がる。
そして、皆悠木に視線を送る…

悠木は携帯で時間を確認した…もう午後4時を回っている。

「……解りました」

悠木はそれを承諾した。

「やっと解放されるぜ!!」
「疲れました…でも、死神祭りの準備しなくちゃ…」

皆が大広間から出て行き、部員だけになってしまった。

「良いのかい?悠木君?」
「もう、これ以上やった所で…大した成果は望めないので」
「何か…掴んだの?」
「証拠じゃないけど…かなり大きな手掛かりをね」

悠木はそう言って自分も大広間から出て行った。

「さて…俺もそろそろ準備するかな」

大きく手を上にあげて背伸びをし、悠木は歩きだす…

       

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