Neetel Inside ニートノベル
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『第4話、真実は変わらない…』



斎京町で起こっているこの密室殺人事件の捜査はかなりの困難な状況になっていた。
容疑者の全員に被害者を殺す動機があり、そしてアリバイもない…
殺人事件研究クラブの入部テストのために部長の篠原と推理対決をする事になった主人公の南条 悠木ははたして犯人を見つけることは出来るのか…

「GAOの会員カードが無くなっていた?…どーして…」
「何か解ったかね?悠木君」
「それが、さっぱり」

篠原の方も何か引っかかっているらしく、まだ答えまでたどり着いていないようだ。
悠木は何か手掛かりを探して、部屋の中を見て回る。
すると、急に何かがにぶつかり悠木はバランスを崩して戸棚に激突した。
その衝撃で戸棚にある物が落ちて、その場に散乱してしまった。

「ご、ごめんなさい。悠木君大丈夫?」
「あ…うん、平気平気。天川さんこそ大丈夫だった?」
「ちょっと、現場荒らすのはやめてくれよ!後で怒られるのは警察の俺なんだから…」
「「すいません」」

2人が散乱した物を拾い集めていると、また悠木に頭痛が走った
何だ?今度は何が俺を呼んだんだ…
悠木は必死に周りを探した、そして目に止まった物は…

「セロハンテープの入った袋にハサミ?…」
「どーしたの?」
「…いや、何でも…ない…と思う」

悠木は袋とセロハンテープをハンカチで手に取り、よく観察した。
セロハンテープの入った袋には何かで切り裂いた後、これはおそらくさっきのハサミだろう…

「どーして、わざわざハサミで切ったんだ?普通にギザギザの所から開ければ良かったのに……そーか…そー言う事か」

悠木は急いで容疑者と話をしている警察の所へ行き、耳元である事についてに調べて貰う様に頼んだ。

「管理人さんの部屋に………」
「別にいいけど…どーしてそんな事を?」
「証拠になるかもしれないからですよ」

刑事さんは急いで調べ始めた。
その動きに気づいたらしく、篠原が悠木の所にやってきて事件について問いかける。

「悠木君。何か掴んだんだね?」
「はい……大体の見当はつきました…」
「何をそんなにためらっているんだい」
「そりゃ、そーですよ…僕みたいな何の苦労も経験したことない高校生ごときが、他人の人生を狂わせる権利なんて無いじゃないですか!!!」

その言葉に篠原は返す言葉が思いつかなかった…
自分は今まで殺人事件をただ『トリックを見破り、犯人を捕まえる』としか考えていなくて、悠木の様な考えは思いもつかなかった。
悠木は思った。
俺は何者だ?…自分の言った言葉で誰かの人生を狂わせてしまう…例えそれが人殺しでも、何か理由があるに違いない…何か…

「自分はさっきまで…ただ犯人を捕まえればそれで良いと思ってましたよ…人の人生を決める決定権なんて自分には無いのに……神様にでもなったつもりだした…」
「それは例え神様でも、人の人生を決める決定権なんて無いのかもしれないな…」
「そんなこと無いです!!」

セナは二人に向かって叫んだ。

「人を裁けるのは人だけです!犯人が捕まって悲しんだ人もいるかもしれないけど…被害者の松尾が死んだせいで悲しんでいる人もいるですよ……この事件を解いてしまった南条くんは犯人を捕まえる権利が与えられたんです」
「犯人を捕まえる権利…」
「人を殺して許されるわけないじゃないですか…」

重苦しい空気の中
調べ物を頼んだ刑事さんがやって来て、悠木に耳打ちした。

「……やっぱりあったんですか」
「君の睨んだ通り、確かに30分休憩をとっているし、毛糸の手袋も見つかったよ」
「そーですか…」

ここまでの最終整理だ
・密室の謎
・容疑者全員にアリバイがなく、動機はある
・ドアの鍵、隙間
・消えたGAOの会員カード
・拭きとられたドアノブの指紋
・セロハンテープの袋とハサミ
・手袋
・30分の休憩
これで全ての謎が解ける…はたして君は犯人が解ったかな?



「皆さんを、ここに集めて下さい…」

少しすると容疑者の4人が集まり、ざわめきだした。

「ちょっと!何なのよ、こんな所に全員集めて」
「わたしもこれからGAOのバイトが…」
「自分も…」

悠木は深呼吸をした後、少し間をおいて話し始めた。

「今から、この密室殺人事件の全貌をお話します…」

その言葉に容疑者4人全員が驚いた。

「本当に解ったの?こんな子供が…?」
「子供の遊びには付き合ってられないぞ!」
「い、一体だれが犯人なんです?」
「その前に1つ聞いて良いですか?ここにいる容疑者の皆さんは、1度も最近この部屋に入った事は無いですか?」

全員がうなずいたのを確認して、セナと篠原が見つめる中、話を続けた。

「犯人は…」

少しためらったがセナ言葉を思い出し、悠木は人差し指を立てて、ゆっくり丁寧に右腕を高く上げて、少し静止させた後思いっきり振り下ろした。

「犯人…あなたです…管理人さん!」

他の容疑者3人や警察そして、部員の2人も一斉に管理人の方を向く。

「…管理人さん…あんたが…」
「ち、違う…わたしじゃ無い!大体、わたしにはGAOでアルバイトをしていたって言うアリバイがあるじゃないですか?」
「それも完全に裏が取れてますよ…あなたは30分間だけ休憩の時間がある事もね」
「なるほど、アルバイトだと言えばアリバイがあると一時的に認められ、その後に同じ時間にいた店員と口裏を合わせれば良いからね」
「案の定、中々口を割ってくれませんでしたよ…」

管理人さんは急に挙動不審になり、きょろきょろと周りを気にしはじめた。

「でも、そんなの憶測でしょ?確かに30分休憩がありましたよ。言うのをわ、忘れただけです…」
「あなたはまず、片道5分を使ってアパートに帰ります。そして、松尾さんの部屋のドアを叩いた、管理人である貴方なら何か理由をつけて部屋に入れるでしょう。何らかの方法で毒殺して松尾さんを首つり自殺に見せかけた。」
「じゃぁ、密室のトリックは?どう説明するんだよ」

ここが1番の難所である。
トリックの方法が見破れない限り、この事件は永久に迷宮入りになってしまう。

「ここからはあくまでも俺の憶測だけど…まず使うのはGAOのカード」
「あぁ、無くなっていたって奴か」
「まずGAOのカードにこの部屋にあったセロハンテープで固く糸を取り付ける、この糸は恐らく管理人が事前に用意していたんでしょう」

実際に悠木はカードにセロハンテープで糸を取り付けた物を用意して、ドアの方へ行き実演し始めた。

「ここで重要なのは、ドアのロック方法です。ここのドアはロックを掛けるとドアノブが回らなくなるタイプなんですが、このタイプの弱点はドアをちゃんと閉めた時…正確に言えばランチボルトの部分が伸びきらないとロックがかからないんです。」

悠木はランチボルトの上にさっきのカードをセロハンテープで軽く止め、糸をドアの下の隙間に通した。

「この状態ででドアを閉めるんです。そうするとランチボルトが止まっているせいでドアにカギがかからない。この状態で糸を引く!」

そうすると、カードが剥がれたおかげでランチボルトが回り、ドアは完全にロック出来き、そしてカードは糸をたぐる事で回収できる。
悠木以外のその場にいた人間全員が息を飲んだ…

「これが密室のトリックだ!!!」
「…南条くん…す、すごい…」
「まさか、ここまで出来るとは…」
「で、でもそんなんじゃ自分が犯人だって言う証拠にはならない!」

そう、これはいわゆる状況証拠でしかない。
今、この状況で密室のトリックを暴いた所で何にもならない事は悠木自身重々承知だった。

「そーです…実際、指紋なんて出てきやしませんでしたよ。綺麗に拭き取られていました……でも、これって可笑しくないですか?」
「指紋を拭き取るのは殺人現場でよくある事だが」
「見落としていませんか?どーして、第1発見者の管理さんの指紋も出て来なかったんですか?呼んだが返事が無くて合鍵を使ってドアを開けたんですよね」
「!?」

その時、管理人さんの体がビクっと反応した。
汗まで出てきている。

「指紋をつくのを恐れて貴方は、ハンカチか何かを使ったんじゃないですか?」
「……わ、わたし冷え性な者で…だから手袋をしていて…」

目が完全に泳いでいる。

「それはこの手袋ですか?」

その、手袋はさっき警察に頼んで管理人さんの部屋から調べて貰った物を見せた。

「そ、そう!それです、それ私のです!」
「貴方は今、自分で自分の罪でを認めましたね…」
「え!?」
「俺はずっと疑問でした…どーして、セロハンテープの袋がハサミで開けられていたのかを…普通は袋を開ける際にギザギザの部分があってそこから開けたり引っ張ったりしますよね?」
「まぁ、普通なら私もそーするわ」
「でも、管理人さんは開ける事が出来なかった。それは限られた30分の間にやり遂げなければならなかったプレッシャーから、手袋を着けていた管理人さんはその場にあったハサミで袋を開けたんだ…」
「馬鹿らしい。そ、それがどーしたって言うんですか!証拠にでもなるって言うんですか?」
「でも、管理人さんは1度だけ手袋を外してしまった時がある。それは、セロハンテープを剥がす時だ!!!セロハンテープを貼り付ける時は手袋をはめたままでも出来るが、剥がす時だけはリスクよりも時間を優先した貴方は素手でやってしまったんだ。その後いくら拭き取った所で、セロハンテープの粘着部分を鑑識に回せば貴方の指紋が出てくるでしょう」
「……そ、それは前に松尾さんの家賃を取り立てに――――」

このごに及んでまだいい訳を続ける管理人さんはとても醜く感じた。
人はこんなにも正気を失うと惨めになれるのだな…悠木はその態度に我慢できなかった。

「いい加減にして下さい!!!!」
「!?」
「そのいい訳、可笑しいとは思わないんですか?初めに聞きましたよね?一度もこの部屋に入った事はないですか?そして…貴方はうなずいた…」
「……」
「いくら、いい訳したって…真実は……真実は変わったりしないんだ!!!!」
「南条くん…」

その場に少しの静寂な時があった。

「…あいつは…あの男だけは絶対に許せなかったんだ!!!お前らに大切な娘を失った気持が解るか!!!こんな状況に陥れば誰だって、お前だって殺すだろ?」

その答えの合否は今の3人には解らなからない…
結局、悠木は一人の男の人生を終わらせてしない、その重さはこれからの人生一生背負わなければならない事だと実感していた。

「…僕なら……その人殺すかもしれません…でも……貴方の様なヘマは絶対にしない…」

[後日]

「ねぇ、南条くん。もしあの時、粘着部分から指紋が出て来なかったらどーするつもりだったの?」
「その時は…密室のトリック時にランチボルトを止めるために使ったセロハンテープがあっただろ?もし、手袋のままでそのセロハンテープを貼り付けたら普通は手袋の糸が付着してるハズ、それを鑑識に回せばあの手袋の奴だって解る」
斎京町密室殺人事件、解決

       

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