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殺人事件研究クラブ
首切り村連続殺人事件

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『第6話、高豪村の死神』



[当日]

全員、時間通り8時に学校に集合していた。4日間も高豪村で泊まるとなれば、それなりの
荷物の量になっている、みんな先生の車に荷物を入れ車は発進した。

「斎京町から高豪村までどれ位掛かるんですか?」
「佳奈さんの実家には一様、3時までには着くように連絡は入れた」

彼女の名前は唐坂 佳奈。今回の事件を殺人事件研究クラブに依頼してきたクライアントである。

「形だけでも、事情聴取をさせて貰えませんか?部長の役割なもので…」
「ええ…別に構えませんが…」
「今、唐坂家には一体、何人住んでいるんですか?」
「母に兄が2人と父のお弟子さんに使用人の5人です」

母:唐坂 タカコ(35)
長男:唐坂 信夫(30)
次男:唐坂 早貴(25)
弟子:君川 敬(22)
使用人:田辺 千代(49)が現在、唐坂家に住んでいる。
長女:唐坂 佳奈(17)(クライアントの佳奈は澄長高校に通うために斎京町に引越)

「お父さんがお亡くなりになった時、遺言状か何かは出てく無かったんですか?」
「…はい…確かに」
「そーですか…」

車は走る…何時も見慣れていた斎京町を後にして悠木の全然知らない道を走っている…このまま何処かに消えてしまいそう恐怖を感覚が悠木の体を突き抜ける…

[発進してから4時間後の12時]

道路脇に車が止まり、みんなで昼ご飯を食べ始める。

「それにしても、随分と森の中に入って来たね…」
「良いでは無いか、セナ君。こういった所で皆で昼飯を食べる!!!なんて我々は青春を楽しんでいるんだ~!」

これが殺人事件研究クラブでなければ完ぺきだったのに…
悠木は声には出さず、心の中だけでツッコミながら大好きなあんドーナッツにかぶりついた。

「あ!佳奈さん。質問して良いですか?」
「何?名探偵さん」
「め…名探偵?」
「篠原君とは同じクラスだから、話を聞いたのよ」
「あぁ…」

あの先輩ならありそうだな…一発で落ち込んでるのが解りそうだ。

「で、質問ってなに?」
「佳奈さんは本当にお父さんから、何も聞いてないのですか?遺産の事や…」
「どーしてそう思うの?」
「この前、部室に来た時に遺産の話をしましたよね?あの時にどーして遺産の中身が『唐坂家に代々伝わる高豪樹の加工方法を記した古文書』だって解ったんですか?」
「……記してあるとするならば…加工方法かなって思っただけよ…」
「…そーですか」

爽やかな陽気の中、鳥の鳴き声だけが僕らを包む…その時の佳奈さんの遠くを見つめる瞳は、とても真っ直ぐで綺麗だった…

「おーい!お前ら、行くぞ」

先生の掛け声が森を響かせる。全員車に乗り込み、まだ2時間以上も続くこの道を僕らは走り出す…
いつの間にか、悠木は寝てしまっていた。
そして、夢を見た…遠い昔の自分が出てくる夢…あれは…確か俺が6歳の時の…懐かしいな!姉さんがいて…父さんがいて…
そこには母の姿が無かった。
母さん…母さんは何処?……
母さんがいた事は覚えている…でも母さんの顔は思い出せない。
悠木は気がつくと病院にいた、そこには姉さんとお父さん…そして顔を黒のマジックで塗り潰された様な事になっている母さん…
そうか…俺が生まれた時から母さんはずっと病院にいて、母さんにあった事は無かったんだ…
悠木は同時に嫌な事も思い出した。
そうだ…あの時からだったな…父さんが俺を冷たい目で見ていたのは…

「う…ここは…何処だ…?」

悠木は目を覚ました。

「やっと目が覚めたな。南条」
「先生、ここは何処ですか?」
「もう、着いたよ…高豪村へ」

そこはいかにも田舎といった感じの村で、本当に何もない。周りは高豪樹であろう森に囲まれており、お土産屋も見当たらない。

「他の皆はどこですか?」
「もう、荷物を持って唐坂さんの実家の方行ってるよ」

悠木は自分の荷物を持って先生と唐坂家に向かった。

[唐坂家]

「お帰りなさいませ。お嬢様」
「ただいま。千代さん」
「佳奈、久しぶりだな。向こうでは元気にしていたか?」
「うん!元気にしてたわよ早貴兄さん」

家族との再会を楽しむ、それもその筈、佳奈曰く高校入ってから1度も実家に帰っていないそうだ。

「でも、本当に良かったですよ。死神祭りに間に合って」

その言葉に部員全員が反応した。

「死神祭り…?」
「あ、悠木君起きたの」
「うん」
「それで、その死神祭りって言うのは何ですか?」

大正初期に高豪村の高豪樹が高く売買される事を聞きつけた、とある大富豪が村にやって来て高豪樹を独り占めしようとした。だが、独り占めにはした物の、その加工方法が解らず唐坂家に方法を尋ねるが、その方法は第5話に説明した様に唐坂家の当主しか知らない。教えて貰えない事に腹を立てた大富豪は当主と村の人半分を殺して、その古文書を奪った。だが、古文書を奪った次の日にその大富豪と一味(4人)は首が無くなり殺されていた、その横には鎌と黒いマントが落ちていたそうだ…

「本当は『首切り様』って言うのが本当の呼び名だけど、その鎌とマントが『死神』に当てはまる事から死神祭りってわけ」
「で、具体的には一体どんな事やるんですか?」

死神祭りは全部で4日間行われる。死神に扮した村人が村中を練り歩き、最後に死神に捧げる生贄として、高豪樹で作った首の木彫りを1日1体燃やすのだ。
死神役と燃やす役は決まっており、1・2日は死神役は君川、3・4日は佳奈。
燃やす役は1・3日が君川、2・4日が早貴。昔はもっと弟子も沢山いて名誉ある役だったが、今は衰退の一途を辿っている。

「何とまぁ…物騒な祭りな事…」
「いやだな~、実際に鎌は使いませんよ!高豪樹で作った鎌を代役に使っているんです」
「そーいえば、お嬢様。その方々は?」
「こちらの方々は澄長高校さ―――――」

急に部員全員で佳奈を取り押さえ、皆で囲った。

「部長。さすがに『こちらの方々は殺人事件研究クラブです!』ってな事を言って、あちら側がフレンドリーに接してくれるとは思えません!」
「私も今そう思っていた所だよ!悠木君」
「じゃぁ、私何て言えば良いんですか?」
「…ここはやっぱり、王道の…野球部で」
「…王道過ぎて多分アウトです…」
「じゃぁ、サッカー部」
「サッカー部が一体何しにこんな所に来たんですか?練習ですか?」
「奥の手の、バス―――――」
「今度行った殴ります」

使用人さんがこちらを様子を伺っているのが解る。

「先生が思うに歴史研究部あたりが良いと思うぞ」
「それだ!!!!!」
「何すか!もう、大声なんて出して…」
「私に良い案がある、先生の言った『歴史研究部』を参考に最高の方法を思いついたぞ!!!」

自信満々に篠原が使用人の所まで行き、ずっしりと構えて立った。本当に良い案が浮かんだのだろう…悠木は篠原の自信満々な態度に安心を覚えた。

「我々は……」
「はぁ…」
「我々は…殺人研究部で――――――」
「違いまーす!!!!今の違いまーーーーーす!!!」
「さっきのなし!!我々は歴史研究部です」

部員全員で部長を抑え込んだ…

「何言ってですか部長!!!殺人研究部って殺人事件研究クラブより不味いじゃないですか!!」
「参考にする所、絶対に間違ってるぞ!!殺人研究部ってもう犯罪の匂いしかしないからな」
「あ、あの~。歴史研究部のみなさん…家の工房に行きますか?今なら君川君も居るだろうし…話が聞けると思いますが…」
「も、勿論ですとも!!!歴史研究部いっきまーーーーーす!!!」

無事に高豪村に着いた殺人事件研究クラブ一同。
死神祭りが行われる中、次回黒いマントの影が第1の死者を生む…

       

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