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『第8話、惨劇の始まり』



信夫さんが死んだと聞いて、悠木と篠原は必死に走った。その道のりは歩きで20分。
ようやく、到着したときには使用人の千代さんと次男の早貴さんが信夫さんの部屋の前にいた。

「ハァ…ハァ…な、何があったんですか?」
「…あ……」

千代さんはもう喋れる状態ではない…
その理由は現場を見て悠木自身も目を背けてしまう程の悲惨さだった…

「これは…ひどい…とりあえず…早貴さんは千代さんを別の部屋に…」
「わ、わかった…」

そこには千代さんが電話で話していたように、首が無くなって信夫さんがいた…部屋は血で溢れており、吐き気が襲ってくる様だ…

「千代さんの様子から察するに…あれは多分トラウマ物だな…」
「悠木君…この部屋には誰も入れない方が良い。私はちょっと警察に連絡してくる」

篠原は部屋を後にした。

「血はそんなに乾いてない…電話があってから俺たちがここに到着にかかった時間が約10分前後…って事は殺されてから結構時間は立ったかもな…」

悠木は血を避けながら、真正面にある障子に向かった。障子には何かで切り裂いた様な跡が残っている。だが、障子自体にはあまり血はついていない…

「って事は…障子越しに殺したんじゃなくて部屋の中に入ってから殺し、帰る際に障子に切り裂いた跡はつけて逃げた訳か…でも、おかしいぞ…普通、首なんて切り落としたら自分だって返り血は浴びてしまうハズ…」
「それは犯人が服を着替えたって事では?」

警察に電話していた篠原が帰ってきた。

「確かにその線なら大丈夫ですね…服を何処かに捨ててしまえば隠滅出来ますから」

すると、玄関の方から佳奈さんと一緒にいるセナと先生の声がこちらに近付いて来る。
こんな悲惨な現場を天川さんに見せたら、一生のトラウマになるに違いない…
そう思った悠木は大声で叫んだ。

「来ちゃだめだ!!!」
「どーしたの?南条くん」
「信夫さんの首が無くなっているんだ。見ない方が絶対に良いよ…」
「うぇ…そんなに悲惨なの?…でも、私も部員のメンバー何だから…何か手伝えること無い?」
「事件が起きた時間にこの村にいた人たちのアリバイを先生と一緒に聞いてきて欲しいんだ。後で状況教えるからさ」

そう、事件の起きた時間帯にこの村にいた人は…
母:唐坂 タカコ(35)
次男:唐坂 早貴(25)
弟子:君川 敬(22)
使用人:田辺 千代(49)
病死した先代の当主の兄:唐坂 智和(54)の5人。
村人の全員と佳奈は歩いて片道20分の所にある『生贄の火』にいたのだ。

「悠木君…これ、何だと思う?」

篠原は何か気になる物があるらしく悠木に尋ねた。
そこには所々、血が付いていない円の様な形をしている物がある。

「1か所だけの様ですね…何でしょうか…とても故意に拭き取った様には見えない」
「本当に首が無くなっているが…何処に行ったと思う?」
「犯人が持っていたと言いたいんですか?まぁ、昔あった『死神が大富豪を殺した事件』(6話参照)に見立てているんでしょうけど」

悠木は遺体のそばに何か白い物が落ちている事に気付いた。それは何かの花びらか何かだろうか…

「部長…これ何の花か解りますか?」
「…うーん。見たこと無い花だな…何の花だ?」

すると、悠木の携帯が鳴った。友達の少ない悠木は他人にメルアドも電話番号も教えた事がない…無論、高校に入ってからも教えた事はないはず。
悠木は電話に出た。

「あ、南条くん?」

その電話はセナからだった。

「…どーして、天川さんが俺の電話番号知ってるんですか?」
「え…篠原先輩から教えて貰ったけど…」
「なんで部長が俺の連絡先を知ってるんですか!!」
「…なんでだろ…」
「なんでだろじゃねーよ!!!」

今まで張っていた緊張の糸がすっかり切れてしまった。
まぁ…わ、悪くないか…
悠木は少し照れた。

「あ、それで南条くんに言われたように、殺された時間この村にいた人のアリバイについて調べてきたから報告するね」

次男の早貴:殺害現場の上の階である自分の部屋で1人でいた
長女の佳奈:歩きで片道20分の所にある『生贄の火』にセナや先生や村人全員と一緒
母のタカコ:死神役の君川と一緒に村を回っていた
弟子の君川:タカコと一緒に村を回っていた
伯父の智和:使用人の千代と一緒にいたが、途中から『生贄の火』に向かった
使用人の千代:台所で夜食の準備をしていた

「この状況から察するにどう考えても早貴さんだけアリバイが無い…」
「それも上の階となると犯行も容易だろな」

悠木と篠原は現場の障子から中庭へでた。
辺りを捜索して見てみるが目新しい物は何も見つからなかった。

「あ、天川さん。今、そこには誰がいますか?」
「智和さんよ」
「智和さんに聞いて欲しいんだが…もしかして、この地方にしか咲かない花がありませんか?あれ…そーいえば君川さんとタカコさんは?」

君川とタカコは死神役で生贄になる木彫りの首を『生贄の火』で首を燃やしているはずである。

「私達が『生贄の火』に行く途中ですれ違ったよ。その時に事情聴取したのよ」

電話が智和に変わる。

「智和だ。それは多分、高豪花」
「高豪花?」
「高豪樹の周りにしか咲かない花だ。その花はここから少し森を抜けた所に湖で沢山咲いているんだ」

高豪花?これは今回の事件と重要な関係があるのではないかと悠木は察知した。
さっきから頭痛が止まらない…この前の事件の様に頭痛が俺に何かを知らせようとしているのか?
だが、証拠といった物は見当たらない…

「本当に何も無いですね…」
「やはり、本人達の部屋を調べてみるしかないが…俺たちに見せてくれるか?」

立場上、歴史研究部と名乗っているの悠木達にとって容疑者達が自分の部屋を簡単に見せてくれるとは思わない。

「警察は何時頃来るんですか?」
「明日は来る予定なんだが…」
「気になる事でも?」
「この近くで大規模な土砂崩れがあって…その影響でお祭りの4日目の夜に到着するそうだ」

とんでもなく急話だが、作者からのお願いだ……土砂崩れの件は本編とは全く関係ないのでツッコまないでね!

「とりあえず、死神祭りの1日目がもうすぐ終わる…それからみんなに詳しく聞かないとな」

ここまでの疑問
・返り血
・血が付着していない円状の跡
・なくなった首
・落ちていた花びら

死神が遂に現れた高豪村。第1の生贄になったのは長男の信夫、そしてその時高豪村にいたのは6人……はたして、この中の誰が死神のだ!!
次回、死神祭り2日目突入…

       

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