ボスは仕事の話を進めた。
どうやら僕の家に届いた封筒、その中身の内容通り。
仕事内容は至ってシンプルな「西のギャングを壊滅させろ」である。
しかし、なんとか全面戦争にはしたくない模様。
その理由が・・・。
「近頃、仕事から帰ってこない奴らが多くいるんだ。
俺はそいつらが組織を裏切って逃げたんじゃないかと踏んでいた。
だからそいつらを探すために捜索隊チームを組ませて裏切り者を見つけるように派遣した。
しかし、だ。
何故か、そいつら、捜索隊も俺のところに帰ってくる事はなかった。
とりあえずこの件を自分の中で保留にして過ごして五日後、つまり昨日のことだ。
捜索隊チームの中の一人と会った、それもここから最寄のカフェで。
そいつの話でわかったことだが、どうやら仕事から帰ってこなかったやつは全員。
西のギャングに殺されていたんだ。」
部屋にいる全員が驚く。
空気がざわつき始めているのがわかった。
僕はジュードと目を合わせて自分がビビっていることを口に出さずに伝えた。
その時一人の女が手をあげた。
「どうした?」
と、ボスが聞くと。
「私は一週間前と一昨日に仕事がありました、が・・・今こうしてここにいますが。」
「まぁまぁ、もうちょい聞いてくれ。
まだ続きがあってな。
そいつと推理した結果、殺された奴の共通点は、
俺から直々に仕事を受けたってこと。
そしてだ、ここからは俺の一人の推理だ。
恐らく、仕事に行って殺された奴らは全員一度アジトに帰って来ているんだ。
そしてアジトに帰ってきた瞬間に死んだ。」
部屋中がざわつく。
「その根拠だ、が。
カフェで会った捜索隊のやつがいるだろう?
そいつから詳しく話を聞くためにアジトへ帰ってきたんだ。
そしてそいつがアジトに一歩足を踏み入れた瞬間。
急に苦しみもがき始め・・・倒れた、脈をはかった。
死んでいた。
さらに、流石の俺もビビったのだが。
急に死体が消えた。
なんの痕跡も残さず。」
と、ボスが一通り話し終えた。
先程の女は納得した顔をしていた。
「まぁ、勘のいい奴はもう気付いてるだろうが・・・。
これをしたのは西のギャングの力を持つ者、『能力者』だ。」
全員が納得した表情を浮かべた。
僕も恐らくそうだろう、と途中から思った。
死体が急に消える。
こんなこと出来るのは、力を使える人しかいない。
「そしてさらに、だ、今日ここに集まってもらった奴は
全員力が使える奴だ。」
・・・流石ボス。
僕は力の使えない無能力者。
アバウトすぎる。