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しっぽのない猫、翼のない君
11. 原著者によるあとがき

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11. 原著者によるあとがき(結婚記念版出版によせて加筆)

 この十年後、晴れて医師になったミヤと僕は結婚した。
 とはいえ彼女の毎日は多忙を極め、よくある甘い新婚生活、とはなかなか行かなかったけれど。
 それでも、愛する女性を支え、やりがいのある仕事に携わる日々は、ぼくにとって幸せなものだった。
 やがてサクラダさんが院長を引退し、ミヤがあとを継いだ。
 それから、僕はこれを書いてくれ、と依頼されたのだ。

 心の声を聞いたり、発したりする技術は、あの中長期プロジェクトをきっかけに急速に発展した。
 まもなく心の声をものに焼き付けたり、電波に乗せたりすることも可能になった。
 その技術――心話技術を使って作られた最初のテキストとして、僕はミヤとの馴れ初めをカタチにした。

 ほんとのことを言うと、ちょっと恥ずかしかった。
 そもそも初テキストが、こんな個人の“コイバナ”でいいのかな、とも思った。
 でもそれを言うと、研究チームの皆は口を揃えていった。
『何を言ってる。これでなくっちゃだめなんだ』
『これこそが、心話技術確立の根底にあるレジェンドなんだ。お前がやらずに誰がやる』
 と。
 ぼくは家事と仕事の合間を縫って、このテキストを書き上げた。
 OKが出たなら、メモリーディスクにやきつけて、PMM(サイコメモリーメディア=心話専用媒体だ)で出版することになっている。


 ――だから。
 もしあなたがPMMからこれを読んでいるなら、それはすなわち、心話ができるようになったということである。
 そうであるなら、おめでとう。
 このチカラは、ぼくたちにいっぱいの幸せをくれた。
 試練もあったけど、それを乗り越えたらその何倍もの幸せが待っていた。
 だからきっとあなたにも、幸せをたくさんくれると思う。

 でももし、つらい試練に傷ついたなら、ぼくたちの家――聖跡サクラダクリニックにきてほしい。
 僕とミヤと猫たちと、先生と職員のみんなが待ってるから。
 正面でなく裏口から来てくれれば、僕の友達として話を聞かせてもらうから、お金のことなんかは心配しないで大丈夫。
 もちろん、ただ遊びに来る、というのでも歓迎だ。


 それでは、そろそろこのへんであとがきを終わりにしようと思う。
 さようなら。
 この、つたなくて長い物語を、最後まで読んでくれてありがとう。

 あなたに幸せがいっぱい訪れますように


 サクラダ・カノン=マキナ

       

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