Neetel Inside ニートノベル
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ガンダム・ザ・クロスオーバー
第一話「邂逅、ガンダム」

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「任務完了。これより帰艦する」
 声の主はソレスタル・ビーイングのガンダムマイスター、刹那・F・セイエイだ。
 彼の乗るエクシアの周囲には金属片がいくつも転がっている。それらは300秒前まではモビルスーツと呼ばれるものだった。
 エクシアがその場から飛び立とうとしたとき、だ。
 レーダーが捉えた。上空から高速で接近する何かを。
 それは減速することなく地面と激突した。爆音とともに砂ぼこりを巻き上げる。
 刹那は操縦桿を握る手に力をいれた。臨戦態勢。
 ソレスタル・ビーイングは少数精鋭だから、飛来した物体が敵である可能性のほうが、味方であるよりはるかに大きいことは明白だ。
 そうなのだから、刹那の対応は正しい。
 しかし、理屈とは関係なく彼の直感がそうした行動をとらせていた。
 やがて立ち込める砂塵は薄れてきた。
 砂のカーテンが開き、姿を表した物体に刹那は驚愕する。
 二本の角、赤と青のトリコロールカラー、隆々としたダム。
 それは間違いなく
「ガン……ダム!?」

 うめき声がする。それが自身のものだと気付いてアムロ・レイは目を覚ました。
「地球?」
 アムロはモニタ越しに荒野を見て呟いた。
 アムロが覚えている最後の光景はアクシズ。
 地球へ向かって落下するアクシズを押し戻そうとしていたはずだった。
 それがどうしてか大地に立っていた。
 地球か、どこかのコロニーか。
 現在位置を確認するためにコンソールパネルに手を伸ばした。
 そこでまた奇妙なことに気付く。
 νガンダムに乗っていたはずだった。
 しかし、このコックピットは違った。νガンダムのものではなかった。
 全天周モニタではなく、正面とその両脇の大画面モニタの旧仕様。操縦桿の仕様も違った。
「コイツは……」
 アムロは懐かしさを覚えた。
 それもそのはずだ。彼が今、乗っている機体は彼が初めて乗ったMS、RX-78-2 ガンダムなのだ。
 ア・バオア・クーで廃棄したはずの機体に何故乗っているのか。アクシズは、シャアはどうなったのか。
 アムロの疑問は尽きない。しかし、それを考える暇は今なかった。
 レッドアラート。警報がなる。MSの接近を告げる警報が。
 正面モニタに青色の機体が映しだされる。その機体を見て、アムロもまた驚愕する。
「ガンダム!? ネオジオンの新型か? しかし、あのシャアがっ」
 青色の謎の機体もまたガンダムだった。しかしプライドの高いシャアがこんな機体を作らせるとはアムロには思えなかった。

 刹那はそれがガンダムだと認識すると、操縦桿を倒して、エクシアを走らせた。エクシアは一直線にガンダムに迫る。
「GNサーベル」
 GNサーベルはエクシアの右腕に装備された長大な刀身を持つ実体剣である。
 エクシアは右腕を振りかぶるとガンダムへ振り下ろした。
 アムロは斬撃を右にかわすと、素早くビームライフルを構え、撃った。
 刹那にその一発をかわす余裕はなかった。しかし、銃口から赤い閃光は撃ちだされなかった。本来ならエクシアを仕留めるはずの一撃は不発に終わった。
 整備不良か、落下の衝撃による故障か、原因はわからないがビームライフルは使えなかった。
 予想外の出来事に一瞬、アムロに隙ができる。その隙を見逃さず、刹那はもう一度GNサーベルで斬りつけた。
 反応の遅れたアムロにその斬撃をかわしきることはできず、右肩の装甲を削り取られた。
 続いて、左腕が飛んでくる。エクシアの左腕にはGNシールドが装備されている。盾ではあるが、鋭く尖った先端部は打突武器の役目も担う攻防一体のシールドだ。
 左腕がガンダムの鼻先をかすめた。
 刹那は殴りつけた勢いを利用し回転するように、右後ろ回し蹴りをくりだす。
「なんて運動性能なんだ」
 アムロはエクシアの驚異的な運動性能に驚きの声を漏らしつつも、蹴りを右肘で受け止めた。
 しかし、刹那も同じように今の一撃を受け止められたことに驚いた。いままでの敵ならば最初の一撃で沈めることができたはずだった。
 アムロはすかさずビームサーベルの柄を握ると、縦に斬り下ろした。
「こっちもか!」
 アムロがそう声をあげるのも無理からぬ事だった。
 左足を一歩分後ろにさげ、斬る間合いをつくって放った一撃は確実にエクシアの右腕を切り落とすはずだった。
 そのはずなのに空振りに終わったのはビームサーベルの刃が形成されなかったせいだ。刃の形成されないビームサーベルなど勃起する前のイチモツのようなもの。小さくて、短くてまるで使い物にならない。
 アムロは距離をとるために後方へ跳んだ。刹那も同じように距離をあけた。
 押せ押せの攻勢ムードにも関わらず刹那が退いたのは、異常を感じ取ったからだ。
 一回目の銃も二回目の剣もこちらを仕留められたはず。それなのに撃ってこなかった。斬ってこなかった。
 その異常さが刹那を後退させた。ライフルとサーベルが使えないとなればバルカンしか搭載する武器のないガンダムにとっては意図せぬ幸運だったと言えよう。
 刹那が所属不明のガンダムへの対処に思いを悩ませているとき、トレミー――プトレマイオスから通信が入った。
「刹那、今すぐそこを離れて。AEUの大群が向かってきているわ」
 C・ビーイングの戦術予報士、スメラギ・李・ノリエガの声だった。
「所属不明機よりもまず、そこから脱出なさい」
 刹那が何か言うよりも早くスメラギがそう告げ、通信回線を閉じた。
 刹那は少しの間ガンダムを見据えた後、その場から離脱した。
 アムロはそれを黙って見送るしかなかった。

       

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