Neetel Inside ニートノベル
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バカ騒ぎ
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 気持ちのいい陽気。
 降り注ぐ朝日。
 鳥のさえずり。
 そして――

「はぁ……はぁ……今日も可愛い寝顔じゃないか……」
 気持ち悪い友人の一人ごと。
 朝の目覚めとしては、この上なく最悪の目覚めである。
「これで男とかあり得ないだろ……いや、むしろ男だからこそ……」
 実に不愉快な言動を繰り返している友人。
 コイツが僕の友達だというのも最悪だが、なにより最悪なのが――

「毎日、毎日人の寝顔を見るためだけに勝手に部屋に入ってくるんじゃねぇよ!」
 こんな変態が僕の一番の友達だという事だろう。
  

「何でお前は毎日勝手に人の部屋に無断で入って来るんだよ?」
 朝起きて必ずする質問。
 もう何回聞いたか分からない事を今日も聞く。
「何でって、可愛い相棒の寝顔を見るためだろ」
「勝手に相棒呼ばわりするな! てか、寝顔を見ようと思うな! 気持ち悪いわ!」
 何が悲しくて男に寝顔を見られないといけないんだよ。
 しかも、コイツはただ寝顔を見るだけじゃない。僕の寝顔を見ながら怪しい一人ごとを
呟いているのだ。
 本気で気持ちが悪いよ。
「おいおい、あまり俺に罵声を浴びせないでくれよ。興奮するじゃないか」
「…………」
 ああ。今ここでコイツを殺してしまってもいいだろうか?
 法が許してくれるのなら、今すぐにでも殺してやりたいよ。
 だけど、世界がそこまで優しいわけでもなく――
「怒るのもいいが、そろそろ制服に着替えた方がいいんじゃないか? もしアレなら着替える
のを手伝おうか?」
「遠慮する。てか、さっさと出ていけ!」
「何だよぉ……そこまで拒絶する事ないだろぉ……」
「マジで気持ち悪いから止めてくれ。そしていい加減、部屋から出て行け!」
 心底悲しそうな表情で部屋から出て行くゴミ野郎。何でそこまでして僕の着替えを手伝いたい
んだよ? 意味が分からないな。
 多少の吐き気とクソ野郎の行動に頭を悩ませながら制服に着替える。
「よし。準備が出来た」
 朝食を食べている余裕は…………無いか。まぁ、アレのせいでそんな余裕もなくなっていたか。
 どうせこれも毎度の事だから諦めるしかないかね。
 憂鬱な気持ちのまま部屋を出るとそこには――

「はぁ……はぁ……生着替えを見る事は出来なかったが、音だけでも随分興奮出来るものだな」
 虫以下の生物が居た。
「可愛いよ。優希かわいいよ」
 僕の名前を呼びながら変態が興奮していた。
 よし。殺したいのはやまやまだけど、無理だからとりあえず無視して学校に行こう。
 それが一番の選択だよね。
 自分に言い聞かせながら僕は一人学校に向かう。


 ――学校――
 勉強や日々の生活を通して色々なものを学ぶ場所。
 そして沢山の友達に会える場所でもある。
 僕自身も学校は好きだし、クラスの皆や友達に会えるのは嬉しい。
 だけど……

『来た! 今日も我らがアイドルの優希様が登校なされたぞ!』
『今日は、今日は一体どんな可愛らしい姿を見せてくれるんだ?』
『きゃー優希くん。今日も可愛いわねー♪』

「…………」
 悲しい事に僕のクラスメイト達は普通じゃなかった。
 僕の一番の友達のゴミ虫よりは変態度は低いけど、それでも十分変態である事に間違いは無い。
 それでも何故か学校に通ってしまうから不思議だ。
 普通の人なら完全に登校拒否になってもおかしくはないだろう。
 それなのに登校している僕はもしかしたら……
 いやいや、僕が皆に弄られるのが好きとかあり得ないから。
 …………あり得ないから。
「おはよ、優希。今日も皆からイヤらしい視線を浴びているわね♪」
「おはよ百瀬さん。あと、楽しそうな顔で同情するのは止めて」
 そんな表情で同情されても全然嬉しくなんかないよ。
「ところで、あの変態はどうしたの?」
「さぁ?」
 アイツの事だから警察にでも捕まってるんじゃないかな。てか、ぜひ捕まっていて欲しい。
「私としてはアイツが居ない方が都合がいいんだけどね」
「……百瀬さん?」
 確かにアレは居ない方が世界的にもいいけど、何故か居ない方がいいと言った時の百瀬さんの
表情が気になった。
 何かよくない事でも考えているのかな?
 残念ながら彼女も、このクラスの一員であると同時に結構変な人なのである。
 だからかな。余計に気になったのは。
 
 僕の不安を打ち消すようにチャイムが鳴る。
 気のせいだと思っていよう。
 甘い考えなのかもしれないけど、そうやってポジティブに考えていないとこのクラスでは生きて
いけないから。
 バカだと言われても前向きに生きて行こうと思います。


 ――みたいな感じで今日一日が終わってくれれば最高なんだけど……

“無理だろうなー”
 絶望を感じつつ僕は静かに授業を受けます。
 つかの間の休息を噛みしめながら……
 

       

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