己の精神を鍛える修行。
実に厳しい苦行を僕は乗り切った。
これで僕の器の大きさも一回り大きく――なるわけないだろ!
「お前らマジでいい加減にしろよな!」
器の小さい。いや、どちらかといえば大きいかな。
そんな僕でもそろそろ我慢の限界だった。
この変態共に文句を言ってもいいと思うんだ。
僕にはその権利があるはずだから。
『え……? お前何言ってるの?』
ん?
『君の言っている事が理解出来ないよ』
え?
『怒ってる顔も素敵♪』
は?
な、何この空気。
いきなり声を荒げて怒れば多少は変な空気になるのは分かるけど、今のこの空気はおかしい。
「優希ったら、急におかしな事を言い出して何処かに頭でもぶつけた?」
「いやいや、僕は何時だって正常なんだけど」
「あははっ♪ 優希ったら何冗談言ってるのよ。あんたは常に変なのよ♪」
「ええー」
僕がおかしいなんてあり得ないよ。100人に聞いたら全員が正常だって言うくらい普通なのに、
おかしいのは、皆の方なんだよー!
「まぁまぁ、落ち着け相棒。あまり怒ると綺麗な肌が台無しになるぞ」
「うるせぇ、黙れ、死ね」
お前は許可もなく僕に話しかけるんじゃない。
お前と話すだけで損した気分になるんだよ。
「ふぅ……言っても聞いてくれないか。しかし……お前に罵声を浴びせられるのは、やはり気持ち
がいいな」
無視だ。無視をしよう。
くそっ! 何でここの人達は皆頭のネジが何本も吹っ飛んでいるんだろう?
ここまで変態が多いと唯一の普通の人間である僕が、異常な感じがするじゃないか。
これが数の論理というやつなのか?
「先生は佐藤の言っている事を理解しているぞ」
「先生……」
あなたが一番理解してないと思ってたんですけどね。
「つまり……アレだ。何か理由が欲しいんだろ」
いや、それは――
「だったらアレだ。誕生日だからという事にしよう」
「誰の誕生日ですか? あと、色々と間違ってますから」
やはり先生は僕の想いを全然理解していなかったよ。
「先生が生徒の気持ちを間違うはずがないだろ。それと、誕生日の奴は一人くらいクラスに居るだろ」
「く……っ」
この人は……勘違いが激しすぎるだろ。
それに適当具合は半端じゃないな。どうして教師になる事が出来たのだろうか。
「仮にクラスに誕生日の奴が居なくとも、世界の何処かの誰かは誕生日だろ」
それはそうですけど……
「よしっ! 誰かの誕生日を祝おうじゃないか!」
『おおーっ!』
「なら、お祝用の服に着替えないとだね♪」
「百瀬さん……それ、正気ですか?」
「あはっ♪」
ああ。大マジなんですね。分かります。
――本日誕生日の誰かへ――
僕個人としては非常にどうでもいい事なのですが、とりあえずおめでとうございます。
何故、僕があなたをお祝しているかは聞かないで下さい。
そして、出来ることならこの服装にも……
「誕生日とは何の関連も無いが、巫女さん服も悪くはない」
ほんと、誕生日とは全然関係が無いよな。
「見ているだけで、心が洗われるようだ……」
そのまま浄化して欲しいよ。
「さてさて、皆で歌を歌って誕生日を祝おうじゃないか」
『はーーい♪』
~♪ ハッピバースデートゥーユ―♪
ハッピバースデー♪ トゥーユー♪
ハッピバースデー………………
……………………♪
お祝いの歌なのに全然嬉しくない。
大体僕の誕生日じゃないし変な格好させられてるしね。
でも、不思議とテンションが上がるからこの歌は凄いと思う。
ま、本当にどうでもいい事なんだけどね!
負け惜しみなんかじゃないよ。本当にどうでもいいんだからね。