Neetel Inside ニートノベル
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 ここ最近変な視線を感じる。
 変な視線自体はクラスの人間達から嫌という程感じるんだけど、
 その気持ち悪い視線とはまた違う感じの視線を感じるんだ。
 ねっとりとした絡み付くような視線。
 まるで視線だけで犯されているような感覚だ。

「険しい顔して何かあったのか?」
「お前には何も言うつもりは無いし、そもそもお前が僕の前から消えてくれたら多少は穏やかな
表情になれるかもしれないな」
「おいおい冗談は止めてくれよ」
「冗談じゃないし、存在が冗談みたいな奴に言われたくはないな」
 存在が冗談というか、存在が犯罪なんだけどね。コイツの場合は。
「変態の事は無視して優希本当に大丈夫なの? 私個人としては、疲れ果てている優希の顔を
見るのは大好きだけど、倒れられたりするのは困るわ」
「百瀬さん……」
 少しは僕の事を心配してくれているのでしょうが、ちょいちょい言葉の中に気になる単語が
入っているんですよね。
「それで何か気になる事があるの?」
「えっと、実はですね……」

「変な視線を感じるですって!?」
「そうなんですよ。何かねっとりとした視線なんですよ」
「ストーカーの類かもしれないわね♪」
「可能性はありますが……って、どうして百瀬さんはそんなに嬉しそうなんですか?」
「あはっ♪ もう分かってるでしょ?」
 はいはい。もう完全に分かりましたよ。苦しんでいる僕の表情を見るのが好きなんですよね。
 やっぱりこの人に相談したのが間違いだったよ。
「――で、お前は何を落ち込んでるんだ?」
「俺には相談してくれなくて、百瀬には相談するんだな」
「は? そんなの当たり前だろ」
 お前には死んでも相談なんかしないよ。そもそも、あまり話したくはないしな。
「クソッ! こういう扱いは嬉しいじゃないか」
「あーはいはい、いいから消えてくれ」
 本気でお前の相手をしている場合じゃないんだよ。僕は――――っ!?

 来た。あの視線をまた感じた。
 僕は恐る恐るその視線の先を見ると、そこには――

「…………じぃー」
「あ、あれ?」
 小さな女の子が物凄い眼で僕を睨んでいた。
 あれー? 僕この子に何かしたんだろうか? といっても、見た事も無い子だし……
「ねぇ、優希……あの可愛らしい娘は誰なの?」
「いや知らな……って、百瀬さん? 表情が何気に怖いんだけど……」
 表情は笑顔なのに全然笑ってないんだよね。
「女の子に向かって怖いって、どういう事かしら?」
「そ、そういうわけじゃ……」
 百瀬さんは何で怒ってるんだろ? 僕は何もしていないのに。 
「優希は後でお仕置きだね♪」
「え……?」
「う~んと可愛い服を着せてあげるからね♪」
「…………」
 なんということでしょう。意味が分からないままお仕置きをされる事になりました。
 それにしても、あの子は誰なんだろう?
 何をするわけでもなく、ただひたすら僕を睨んでいるみたいだけど……
 とにかく話しかけてみるしかないよね。

「じぃ―――――」
「あ、あの……僕に何か用かな?」
 勇気を持って話しかけてみたんだけど……
「…………何でもない」
 いやいや、何でもない事は無いでしょう。何でも無いのならそんな目で僕を見なくても
いいと思うんだよね。
「ほ、本当に何も無いの?」
 あってほしいとは思わないけど、何も無いのに睨まれるのは嫌すぎる。
「…………」
 完全な無言ですよ。本気で無視をされてますよ僕。
 人に無視されるのって意外に辛いのね。だからといって、アイツの待遇がよくなるわけ
じゃないんだけどね。待遇をよくしてもつけ上がるだけだし。
 変態には変態用の扱いってものがあると思うんだ。
「……変態」
「え?」
「あなたは……変態なの……?」
「は――っ!? な、何言ってるんだよ! 僕は変態なんかじゃないよ!」
 自信を持って言う事が出来る。僕は変態じゃないと。
「じゃぁ……何で……女の子の格好とか……したりしてるの?」
「そ、それは――」
 別に僕が好きでしているわけじゃないし、一番の変態はこのクラスの連中なんだよ。
「でも……女の子の格好のあなたは……可愛いと思う……」
「え……?」
「写真も……沢山……持っている……」
 マジですか……
「それで……よかったら友達になって……欲しい」
「別にいいけど」
 僕はそれよりも写真の件について話しを聞きたいかな。
「よかった……わたしは頼子だから……よろしく」
「あ、うん」
 言うだけ言って彼女。頼子ちゃんは何処かに行ってしまった。
 一体彼女は何だったのだろう。僕と友達になりたかったみたいだけど、それだけであんなに
睨むのはどうかと思う。
「あははっ……神聖な学び舎でナンパするなんてどういう事かな?」
「ナンパなんて――」
 ただ普通に話しをして普通に友達になっただけなのに、それだけでナンパと決めつけられる
のはどうなの?
「これはもう、お仕置きだけじゃ済まされないわよ」
「そ、そんな――」
「覚悟しなさいよ優希♪」
「…………」
 ああ、アレだ。もう何を言っても無駄なんだろうね。
 この後どんなお仕置きをされるのか分からないけど、確実に言える事は僕が不幸だという事だ。
 そしてもう一つは――

 女装してないのが実に久しぶりだという事だよね。
 ある意味では、話しとして違う方向にいっただけなんだけど……
 あ、いや……別に女装がしたいとかそういうわけじゃないからね。
 そこは本気で勘違いしないでね!
 それにどうせ、次回で女装させられるんだろうしね。つかの間の休息といった所かな。
 

       

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