Neetel Inside ニートノベル
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~~ユーシス君、駆け回る~~

 そして翌日の朝。
 ぼくたちは町に出た。
 天気は晴れ。暑くなく寒くなく風も穏やか。絶好のお出かけ日和だ。
『よっしゃー! まずは服だね!!
 いっくぞー、そりゃー!!』
 ユーシス君はだーっと走り出した。
 身体は、いつも鍛えてるロビンなので、その加速はめざましい。
 ぼくたちも全力で走ってその後を追った。
「おい、おい、ユーシス!! 走るんなら歩道!!
 馬車とかぶつかったら死なないけど死ぬほど痛いから!!」
『ハイハイ。あっ水たまりー! やほー』
 ばしゃばしゃと水しぶきを上げユーシス君は水たまりにふみこんだ。そのまま疾走。
 ぼくたちはその脇を走って追いかけた。
「こ、こら濡れるだろ馬鹿」
『いいじゃん! よーし次は』
 ユーシス君がいく先には、長い黒髪もきれいな女の人がいる。
 その瞬間ロビンは強引にカーブを切って彼女の脇を駆け抜けた。
『あー、なにすんだよ~! きれいなおねえさんだったのに~!!』
「ばかやろ! 今のお前は子供じゃないんだ。
 いきなり女の人に抱きついたりしたら衛兵さんに捕まるぞ!!」
『ちぇー。じゃあ次はこれだあ!!』
 いいざまユーシス君はだんっ、と地面をけって、街灯の半ばくらいに飛びついた。
 そのままするするとてっぺんに上り、ちょん、と座って辺りを見回す。
『わーい、高い高~い!! きょ~うはど~こにいこうかな~?』
「やめろー! 街灯登るな!! 捕まるから!! まじで捕まるから!!
 てか、やめろ! おりてくれ!! だめだから!! 俺木登りだめなんだから!!」
 ユーシス君の鼻歌と、ロビンの叫びがかわるがわる響く。
『♪~』
「たのむ、助けて!! なんとかしてくれ!!」
「待って、今行くから!」
 ロビンは前世、子供のころに木から落ちて以来、木登りだけはだめなのだ。
 もう今にも泣き出しそうだ。ほってはおけない。街灯に手をかけた。
 しかし、ミューの声がぼくをひきとめる。
『ちょっと待つニャ、クレフ。
 ここはまかせてみれだにゃん』
 ミューを抱いたリアナがにっこり笑う。
「大丈夫よ、見てて。
 ――ユーシス君、はやくお買い物に行きましょう!
 すてきなお洋服が待ってますわよ」
『あ! そうだった。
 いこうおねえちゃん!! ボクもっとお洒落な服ほしい!!』
 するとユーシス君は、街灯の上で立ち上がり、ぽーんと飛び降りてきた(もちろんきれいに着地した)。
『ボクね、まえにこっちのお店で服買ってもらったんだ! そうだ、お姉ちゃんの服も選んであげる!』
「まあ、楽しみですわ♪ それじゃさっそく連れてって?」
 リアナが手を差し出す。するとユーシス君は、なんのためらいもなくその手を握った。
『うんっ。
 ふふっ、おねえちゃんの手あったかーい♪
 ねえ、今日はお手手つないであるいていい?』
「もちろんですわ。
 この町は初めてですから、ゆっくりエスコートしてくださいませね♪」
『まーかせて! ほら、こっちだよお姉ちゃん。水たまりに気をつけてねっ』
 そうしてふたりは、さっきとはうって変わって平和的に歩いていった。
『……すごい』
 アリスが呆然と見送る。
『もうじゅうつかいとはあのことを言うんだにゃん。』
 ミューが(いつのまにか)ぼくの肩の上でうむうむとうなずいている(ひげがくすぐったい)。
 ぼくとしてはロビンがやけにおとなしいのが気にかかった。
『しばらくそっとしておいてやれニャ。
 はじめてのときはタイヘンなものなんだにゃん。
 おまえの場合みたく、おさななじみの相棒が最初なんてのはラッキーだにゃ』
『死んじゃう時点でラッキーじゃないでしょうが……。
 もう、いいから行くわよ。あんたも早く追いついて、リアナと反対側の手つなぎなさいよ』
「え、あ、その、…………」

 リアナと手をつなぐ。考えたらどきどきしてきてしまった。
 リアナが生まれ変わる前、短い間婚約していたころは、身体のこともあってほとんど、一緒に外出とかはしてなかった。
 もちろん、手をつないで歩くなんて、とてもとても。
 生まれ変わってから、小さいときにはロビンと三人で手をつないだりしたけれど、それはあくまで、一緒に原っぱに遊びにいくときとか、そういう状況であって。
 こんな、町を歩いて――いわゆるデートで――なんて、ぼくは生まれてはじめてなのだ。
 どうしよう。手、て、どうやってつなぐものだったっけ。
 右手をつなぐときって、右手でいいんだっけ? それとも逆だったっけ??

『あたしが悪かったわクレフ。いまのは忘れて。さ、行きましょ』
『これが夫婦とは……なさけないにゃん。
 ていうかカノジョ持ちとか妻帯者とか宿してたのににゃんでそうした経験はまなんでないのだにゃん』
「え、だってそういうの、お邪魔したらわるいから………」
『『………………………………………………。』』
 すると二人はなぜか黙り込んだ。

       

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