Neetel Inside ニートノベル
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~~ユーシス君の謎(後)~~

 ミューの問いかけに、ぼくたちは顔を見合わせた。
『……? パジャマを着てパーティーする、ってだけじゃないの、それ?』アリス。
「なにか特別なものなの?」もちろんぼくもわからない。
「えっと……雑誌でむかし読んだことくらいしかないけど、たしかお泊まり会のことじゃなかったかしら? その記事の写真には、わたしたちくらいの女の子たちが写っていたけれど……」
『さすがはリアナだニャ。
 そう、パジャマパーティーをするのはほぼ確実にオンナなんだにゃん。それも若いのか子供。
 つまり、いくら甘えん坊とはいえ、男のユーシスがそんなんやりたがるのは属性的にいささか不自然なのだにゃん。
 パーティーを口実に別のことをするには、やつは幼すぎるしニャ』
「そうね、まだ8歳ですものね。
 同じ男性とはいえ、一日二日でひとまわり年の離れた肉体に、そこまでなじめるとも思えないし……。」
『…………………………………………。』
 アリスはいきなり、恥ずかしそうに黙りこくってしまった。
 たぶんここで余計なことを言ったら墓穴を掘るだろう。そう思ってぼくは黙っておいた(そもそもこの話題に対して、何言っていいのかわかんないし……)。
『とにかく今は様子見だニャ。まあ、今夜のパーティーで適当に飲ませて吐かせるのが早道だろうがニャ』
 しかしそのときミューが発したひとことにぼくはどぎもを抜かれた。
 アリスも同じ気持ちだったようで、叫ぶ。
『ちょ! なんてこと言うのよミュー。
 相手は子供でしょ?! なにかあったらどうするの?!』
 対してミューは平然と毛づくろいをしながらのたまう。
『身体はロビンだから、すこしの量なら大丈夫のはずだニャ。まして今はやつ自身がエクストラの精気を提供してる。
 まあそうでなくともユーシスの本体は魂だけだから、酔わせる程度ならやつ自身には健康被害はでないにゃん』
『そういう問題なの……?』
「まあまあ、ふたりとも。
 それはとりあえず、最後の手段ということにしましょう。
 ひょっとして、パーティーでユーシス君から話してくれるかもしれないし、そうしたらそれが一番いいもの、ね」

 しかし、この日ユーシス君がなにかを話してくれることはなかった。

 部屋に戻るとユーシス君は“やっぱりパーティーはやめよう”と言ってきた。
 それどころか、食事もひとりで部屋で取りたいと言い出した。
『ボク、こんな軽い気持ちでここに来て……ひどい子だと思うんだ。
 パパとママはまだボクのこと悲しんでるのに、ボクは……ばかみたく、うかれてはしゃいで。
 それに……
 あ、いやそれはともかく。
 ボク、パパとママに、いまどんな顔して会ったらいいのかわかんない。
 あした。あした打ち明けるよ。ボクが“生きて”いるって。
 でもその前に、気持ちを整理したいんだ。
 お願い。一晩だけ、時間をちょうだい。
 あした、話したいことがあるってことだけは……伝えてくれていいから』
「わかったわ。それじゃわたしたちは無理に誘ったりしない。
 でも、助けがほしかったらいつでも言って。
 がんばってね、ユーシス君」
 それを聞くと、リアナはユーシス君をぎゅっと抱きしめた。
『ありがと、おねえちゃん』
 ユーシス君は涙を宿した笑顔でリアナを見上げた。
 今のユーシス君は、身体はロビンだから、もちろん顔だってロビンだ。
 ロビンは可愛い、ていうよりはかっこいい方で、最近はもう、ちょっと大人っぽくなってきたくらいだ。
 でも、今のその顔はすごく可愛くていじらしくて、思わずぼくも(アリスに便乗して)彼を抱きしめてしまった。
(その気持ちはミューも同じだったようで、めずらしく、すりすりと身体をすりつけて励ましてあげていた……)


 ユーシス君のご両親は、見た目どおりにとても優しい、いいひとたちだった。
 遅くに生まれたユーシス君を、それは大切にしていたのがすぐにわかった。
“ロビンはやり残した仕事があるので、あした改めてご挨拶に参ります”とお伝えすると、どうかご無理はなさらないでね、今夜はこれをお飲みになってみてくださいねと、よく眠れて疲れが取れるお茶の葉を、ひと包みプレゼントしてくれた。

 ぼくたちは、お母さんのあたたかい手料理をいただきながら、ユーシス君の生前の話をたくさんしてもらった。
 ぼくたちもぼくたちで、ユーシス君からきいたことを色々とお話しした。
 本当は、ユーシス君がここに来ていることを教えてあげたかった。でも、約束だ、いまはそれはできない。
 だから、ぼくたちの知るわずかなことを、精一杯ご両親にお話しした。


 食事から戻ると、ユーシス君はもうベッドに入っていた。
 ユーシス君が眠ってしまっては、夜更かしをする理由もない。ぼくたちは適当にお風呂に入り(泡が出てくるお風呂に驚いておぼれかけたのは内緒)、寝てしまった。

 事が起こったのは、真夜中を過ぎたころだった。


『やだっ! 見ないで!!』

 聞き覚えのある声がぼくたちをたたき起こした。

       

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