~~ほんとうの願い~~
ユーシス君の告白はおどろくべきものだった。
物心ついてからずっと、女の子らしいかわいいものが好きだったという。
町にお芝居を見に行って以来、ずっと憧れていたのだという。
舞踏会のお姫様に。
『ずっと夢見てたんだ。
わたがしみたいなドレスとティアラ、それに、きらきらしたガラスのくつで。
お花が一杯飾ってあるお城の広間で、王子様とダンスがしたい。
ばかだよね。そんなこと考えてたら、天国へいきそこなっちゃった。
通りかかったロビンの体に入り込んで、いろいろ悪いことしちゃった。
ケーキめちゃくちゃたべちゃったり、街灯にのぼったり……。
そんなことしてもなんにもならないのに。
ごめんねロビン。みんな。パパもママもごめんなさい!』
泣きじゃくるユーシス君を、お父さんとお母さんは黙って抱きしめた。
ユーシス君の涙が止まるまで。
お父さんはそして、ユーシス君に目の高さを合わせて言った。
「ユーシス。辛かったね。
お前もパパと同じ想いをしたんだね。
パパも、若い頃ずっと悩んでいたんだよ。
お姫様になりたい、と。
その悩みは、ママと出会ったことでなくなった。
ママはパパを、まるごと受け止めて愛してくれた。それどころか、一生懸命に勉強して、女らしいとはいえなかった姿のパパを一度だけ、きれいなお姫様にしてくれたんだ。
そのうえ、自分は王子様になって、自分のアパートの部屋をお手製のダンスホールにつくりかえて、パパと踊ってくれた。
パパより、10も年下のママがだよ。
そのときパパは思ったんだ――
今度はパパが王子様になって、ママをお姫様にしてあげよう。真っ白なドレスの、だれより幸せなお姫様にしてあげよう、とね。
それから、パパとママは写真館を始めたんだ。だれもが、一瞬だけでも、なりたい姿になれる。そんな夢の写真館をね。
そのうちお客様が増えたので、お客様用のコテージを建てた。
心優しいママのおもてなしで、お客様はもっと増えた。
せっかくきてくれたお客様みんなが入れるように、コテージを増やして、大きくして……
そうして今のクラシエルホテルができたんだ。
神様からお前を授かったのは、ちょうどそのホテルが出来上がったときだった。
パパとママはもううれしくて、うれしくて。
可愛いお前が苦しまないよう、幸せになれるよう、あらゆる手を尽くした――
つもりだった。
けれど、わかっていなかったんだね。
ユーシスが本当にいちばんいちばんしたかったこと。
でも、もうわかったから、叶えられる。
パパとママはお前を必ず、世界一きれいなお姫様にしてあげる。
そうしたら、パパと踊ろう。そして、ママと三人で写真をとろう」
翌日ぼくたちは、奇跡を目にすることになった。
ドレッシングルームに入ってから三時間。
ちょっとだけ大人っぽくてかっこいい少年だったロビンは、ほんとうにきれいなお姫様になっていた。