Neetel Inside ニートノベル
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~~作戦会議~~

 ミミちゃんはすでに、リアナから一通りの説明を受けているらしい。
 5歳の女の子には、ちょっと長くて難しい話だったかもしれない。
 そのためかミミちゃんはまもなく寝入ってしまった。
 ぼくたちはその間に、お茶とお菓子を囲んで作戦会議をはじめた。

 口火を切ったのはアリス。頬杖をつき、紅茶をかき混ぜながら言う。
『オトナの恋……かあ……。
 悪いけどあたしはそういうのよくわかんないわ。
 みんなはどう?』
「恋愛小説みたいなカンジ、かな?
 俺もまだあんまり詳しくはないけど……」
 ちなみにロビンは、ユーシスちゃんを宿して以降、彼女の気持ちをもっと知りたいという理由で、彼女の部屋にあったのと同じ恋愛小説を買って読み始めたのだ。
 そのペースは一日数ページ程度と、とてもゆっくりなのだけど。
(アリスが、クレフとリアナに朗読させたら早いんじゃない? と提案していたけれど、すぐに自分で取り消していた。なんだったのだろう)
 リアナがひざの上のミューを撫でつつ答える。
「そうね、だいたいそれでいいと思うの。
『素敵な人とある日出会って、じょじょに気持ちをはぐくんで結ばれる。
 ちょっとした事件があって、でもそれを一緒に乗り越えてハッピーエンド!』
 というかんじだって言ってたわ。
 クレフとロビンなら信頼できるから、もしミミちゃんのお眼鏡にかなったなら、恋人役をやってほしいなと思っていたんだけれど……。」
「そ、それってつまり、あの本みたいなセリフとか、言うの……?」
 ロビンが真っ赤になった。
「ええ。だめかしら?」
「…………………………………………………………………えっと…………」
『おいロビン。おまえはもう対象外なのだからそんなに真剣になやまなくてもいいのだにゃん。』
「そ、そう言われると逆に微妙……」
『おまえはむしろ女装して相手の男をゆうわくしろにゃん』
「えっ?! 冗談だろそれ」
 ロビンは一瞬でものすごく嫌そうな顔をした。
『冗談ではないにゃん。
 恋愛ドラマにはライバルが必要だニャ。
 しかしアリスやクレフには“モーションをかける”なんて行動は到底不可能だニャ。
 そのうえその男が万一本気になって暴走した場合、アリスだと奴が危険でクレフだとやつ自身が危険だにゃん』
「……それは……」
『……いえてるわ……』
「そうだよね、ぼくたちに危害を加えたりしたら“食われ”ちゃうもんね」
 するとその場にいた全員がぼくをなんともいえない目で見た。なんなんだろう。
『ま、まあ、つまりそういうことだにゃん。
 というわけでロビン、ユーシスが中にいたときのことを思い出して』「絶対嫌だ!!」
「ミューったら。
 ほんとうに素敵な男性だったら、ライバルは最初からいるわよ。
 だってロビンもクレフも、わたしの村では大人気だったもの。
 むしろそうした人をねらってこそ、ミミちゃんの求める大恋愛ができると思うの」
『なるほど。さすがリアナね!』
「そういうことだからミュー、この町でもてるひとがよく通る場所をいくつかピックアップしてもらえるかしら? そこで張り込みをしましょう」
『なんとゆうムチャぶりだにゃん。
 しかしまあ、それでこそ我輩のウデの見せ所だにゃん。明日までまってろニャ』
 ミューはとん、とリアナのひざからおりて、どこへともなく消えていった。

 そのときぼくはリアナが発した驚くべき一言に気がついた――
 ぼくが人気者だったって??
 たしかにロビンやソルティさんを宿しているときはそうだったけど、それ以前のぼくは、女の子ともそんなにうまく話せないし、男連中のノリにもときどきついてけなくて、結構ロビンの後ろばかりおっかけていた気がするんだけれど。
 まあ、動物たちはみんな結構寄ってきてくれたりしたものだから、そういう意味では人気者だったかな、とは思うけど。
 それを言うとロビンはしみじみとした顔でぼくの肩に手を置いた。
「お前、無自覚すぎだろ。
 でも気にするな。クレフはそれでいいから。それでいいんだから。」

       

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