~~これって、オトナの恋~~
その翌日からもミミちゃんは、アルバイトを続けた。
しかしカトルさんのことを話すことはぱったりとなくなってしまった。
ロビンとリアナによれば、シゴトのことは普通に話そうとしているものの、休み時間に談笑したりすることもなくなり、ややきまずい雰囲気になってしまった、ということだ。
みかねたぼくらはミミちゃんが寝付いた後、打開策を話し合ってみた。
しかし結論はいつも同じ。
けっきょく、ミミちゃんが気持ちを切り替えることができなければどうにもならない。
そうこうしているうちに、アルバイトの期間は終わってしまった。
最終日、アルバイト先のひとたち(一部の常連さんも含む)は、店ぐるみで小さなパーティーを開いて、ロビンとミミちゃんをねぎらってくれた。
親切なことに、仲間であるぼくとミューも招いてくれて。
カトルさんは何度かミミちゃんに話しかけようとしていたけれど、そのたびミミちゃんは他の人に話しかけてしまい、二人の会話がまともに成り立つことはなかった。
――そうして小一時間。
ロビンとミミちゃんに花束と寄せ書きが送られ、さよならパーティーはお開きになった。
「短い間だったけどありがとう!」「こちらこそ!」
「次の町でも元気でね!」『うん!』
「また遊びに来ておくれ、君たちならいつでも歓迎だよ。ありがとう」「はい、マスター!!」
花束を抱えたふたりが花道を進むたび、みんなが口々に言葉をかけてくれる。
そして店の出口の一番近く。
そこにはカトルさんとぼく(とミュー)がいる。
カトルさんはロビンに言葉をかけた。
「ありがとうロビンさん。今度はお客様としてきてくださいね」
「はい、喜んで」
そしてミミちゃんに向き直る。
「あの、………」
『………ありがとうございました』
と、ミミちゃんは身を翻して店を出て行った。
「…………」
一瞬、沈黙が落ちた。
「……いいのかい?」
マスターが言う。
同時にカトルさんも店を飛び出した。
追いかけて路上に出たぼくたちが見たものは、花束ごとミミちゃんを抱きしめるカトルさんの姿だった。
ミミちゃんはぼうぜんとしたように動かない。
カトルさんの声が聞こえた。
「子供みたいって言ったの……怒ったんだよな、ごめん。
でも、僕は君のそんなところが……
いかないでくれ。君が好きだ!!」
ミミちゃんは、あぜんとカトルさんを見上げて。
『……うわあああああん!』
泣きながら、カトルさんにしがみついた。