~~らいふ・ぷらんにんぐ~~
「そう、ですか……
正直驚きました」
すべてを聞いたとき、カトルさんは大きくため息をついた。
「彼女がすでに死していて、お仲間のお体を借りていること、そして実は5歳であったということ……
今考えれば納得です。
でも、僕の気持ちは変わりません」
カトルさんはきっぱりと言いきった。
『せんぱい……!!』
ミミちゃんが目をうるませる。
その様子はやっぱりリアナに見える、リアナに見えて仕方ない。
だって身体はリアナなんだから。
でも今はそんな場合じゃない。
ぼくは自分のつま先を見下ろして我慢することにした。
となりではロビンもポケットに手を入れている。
ミューはそんなぼくたちをじろっとにらみまわし、言葉を継いだ。
『そういうことなら、いいのだニャ。
ミミと付き合ってみるといいニャ』
「ありがとうございます!!」
ミューがまるでご託宣のように告げると、カトルさんは丁寧に頭を下げた。
『そのかわり、無責任なことをしたら容赦はないニャ。
それは心にきざんでおけニャ』
それから、二人のお付き合いが始まった。
ミミちゃんは(ロビンもだけど)アルバイトに復帰。
そして、業後や休みの日にはデートを重ねた。
ミューをお目付け役に、ふたりはカフェで語り合ったり、公園にピクニックに行ったり、ちょっとしたものをショッピングしに行ったりした(らしい)。
ふたりはいろいろなことを話したという。
シゴトのこと、好きなもののこと、家族のこと。
――そして、未来のこと。
『もしもおうちをつくるなら、日のよく当たる丘のうえに、しろくて小さいおうちをたてるの。
やねは赤くて、ドアはチョコレート色。
庭にはきれいなお花をうえて、ティーセットもだして、まいにちいっしょにお茶するの!
ケーキをやいて、アップルパイも作って、あとスコーンもいっぱいで、ミューちゃんみたいなねこもいて、………』
お茶とお菓子を前にミミちゃんが身振り手振りを交えて話すのを、カトル先輩が優しく聞いてあげているのをぼくたちも見た。
先輩はそしてときどき、優しく頭を撫でてあげていた。
それは“ライバル”であるぼくたちでさえ、心がなごむ光景だった。
しかしミューだけは、厳しい表情で黙り込んでいた。
そんなある日。
それは起きた。
ぼくたちが一緒に町を歩いていると、ぱっと明るく輝くショーウィンドーが目に入った。
『すてき!! 新作のウェディングドレスだー!』
ミミちゃんが歓声を上げた。
『カトルせんぱい、わたしこれほしい!』
カトルさんはよしよしと頭を撫でて言う。
「ふふ、ミミちゃんは可愛いな」
『せんぱいー! わたしは、せんぱいと、……
せんぱい、と………
けっこんしたい、のかしら?』
そういってミミちゃんは首をかしげた。
カトルさんはというと、頭を撫でていた手をはなし、まじまじと自分の手を見ていた。