Neetel Inside ニートノベル
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最近は地獄も悪くない。フリーザはそう思っていた。
あのわけの分からないスーパーサイヤ人の餓鬼に殺されてここに来たときは、皆が想像するような想像を絶する仕打ちを受けるものと勘違いをしていたが、それは間違っていた。
この地獄と呼ばれる場所に、死んで魂になった者が極悪人であれば送られる。そうでない者は天国に行くか、本人の希望でまた生まれ変われる。
そして、俺が今ここにいる地獄とは、天国を支えるために罪人が強制労働をさせられる施設になっている、と赤鬼の一人に聞いた。
事実、俺はここに来てもう何十年にもなるが、日曜日以外は毎日365日休み無しの労働だ。
ここにもさまざまな人種がいる。地球人やらどこかの星の人間やら動物やら、とにかく大勢の変り種がそこで見られる。中には、この俺以上の力を持つ緑色の怪人を見かけたことがある。改めて、宇宙が広いことを実感した。
始めのときは何もかもが馬鹿らしく思えた。戦闘力を100以下にコントロールされた上で、畑の仕事や危険な鉱山の労働、何かの機械の組み立て、掃除に料理など、生きている間はまるで考えてもいなかったことを、今現在でも俺は続けている。
一ヶ月経った頃、初めて監督の赤鬼から、「給料」を貰った。ちっぽけな金で、ビールという飲み物を一缶分しか買えないほどちっぽけな金だった。それでも何故か俺は嬉しかった。自ら働いて金を得た、と言う経験は初めてであったからだ。冷蔵庫で冷やしたビールは労働で火照った体がとろけるほどに美味かった。このとき、俺は労働の喜びを知ったのだ。
とにかく、俺の毎日は労働の日々だ。娯楽らしい娯楽と言えばギャンブルか酒かタバコぐらいしかない。しかし、ここでの生活は嫌いではない。むしろ生前は得られなかった満足感や充実感が味わえている。言い方はおかしいが、もっと早くここに来られていれば、と思っていた。
だが最近、いくらか少し物足りなさを感じてきている。スリルだ。ギャンブルにはいくらかのスリルが伴うが、完全に満足するには至らなかった。それに、地獄での戦闘行為は禁じられている。その点では、生きていた頃のほうが面白かったといえる。
一日の仕事を終え、木材で組んだ簡単なベッドで眠るとき、いつも思い浮かべていることがある。
ナメック星での戦い。ソンゴクウという名のスーパーサイヤ人と戦ったあの瞬間。血の滾り。あの時ほど俺が本当に必死になって全力で敵に立ち向かった瞬間は今までに無かった。
願わくば、もう一度戦いたい。一回だけでいいから、俺を楽しませてくれ。
フリーザは戦いに飢えていた。まるで、サイヤ人のように。そんな思いも、目を瞑り数分もしたら溜まった疲れが快い眠りを誘う。今日もフリーザは、明日を送るために深い眠りの世界へと沈んでいった。

       

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