Neetel Inside ニートノベル
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日常生活の取り留めもない会話の収集
お互いに相手を口説いているという事をどちらも知らない件

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 4月某日。午後五時五十八分。某大学の343番教室。
 これは、どこの誰なのかはわからない、ある女の子と先輩の会話です。


「大学の講義なんて寝るものですよ!」
「とんでもないことを言うね。君は……」
「だって、そうじゃないですか? たとえば今日なんか、私の前の席に座っていた人が始業前はお友達と楽しそうにお話していたのに、いざ講義が始まると途端に机にキスをしだしたんですよ」
「う~む、なるほど。でも、君が話してくれたその出来事は『大学の講義は寝るものである』という命題の証明になってはいないね」
「……もう、いいです。解ってくれないのなら。……先輩と話をしていると何だか悲しくなってしまいます」
「悲しい? 言っている意味がよく解らないな。僕は君に変な事を言ってしまったのかな?」
「解っていただけなくても結構です。そう、一生ね……」
「何を怒っているんだい?」
「怒ってなんかいません。私は悲しいと言っているのです。ちゃんと、人の話を聞いていますか? ひょっとして、先輩はお馬鹿さんなのですか?」
「いいや、僕は馬鹿なんかじゃないさ」
「……」
「どうしたの?」
「なんだか疲れてきました」
「ありゃ、疲れちゃったの?」
「はい。疲れました」
「そうか……疲れちゃったか……」
「ええ」
「……」
「どうしたのですか? 先輩も疲れたのですか?」
「いいや、疲れてなんかないよ。疲れているのは君の方なんだろう」
「はい。その通りです」
「そうか……それは、いけないなあ」
「はい?」
「身体が疲れた。これは即ち身体の燃料が切れてしまったという事だ。そして、身体が疲れたのであれば、早急にその燃料を補給しなければならない。違うかい?」
「う~ん。理屈はよく解りませんが、なんとなくそんな気はします」
「そうだろう、そうだろう。そして、その身体の燃料は一体何なのか。それは……」
「それは?」
「美味しい料理だ! 君が今やるべきことは何なのか? ……それは『大学の講義は寝るものである』という命題を証明することではなく、美味しいムール貝のパスタをだしてくれる海辺のイタリアンレストランに今すぐ行って、そのパスタを食べる事じゃないかな? どうだろう?」
「あなたは何を意味が解らない事をいっているのですか?」
「え? 意味が解らないだと? なるべく解りやすい言葉を選んで話をしたつもりなんだが……」
「そうなのですか? でも、やっぱり、先輩のお話の意味は私には解りませんでした。でも、先輩の話を聞いていたら、何だかお腹が空いてきてしまいました」
「そうだろう。そうだろう」
「では、私はこれからその美味しいパスタを食べさせてくれるイタリアンレストランへ出かけることにします」
「うん。その方がきっと君の為になるだろう。どうぞお気を付けて! 良いディナータイムを!」
「何を言っているのですか? 先輩も私と一緒に食べに行くのですよ」
「は?」
「だって、私は先輩の言うそのレストランの場所なんて知らないんですもの。先輩には私をそこまで案内する義務があるのではないでしょうか?」
「なるほど、実に理にかなった言い分だ」
「そうでしょう?」
「わかった。それじゃあ、僕はそのレストランまで君をエスコートすることにしよう」
「御親切にありがとうございます。それでは、行きましょうか」
「ああ……しかし、君。とても嬉しそうじゃないか? なんだい。君はパスタが好きなのかい?」
「いいえ。そこまで好きではありませんよ」
「じゃあ、どうしてそんなに嬉しそうな顔をしているんだい?」
「だって、先輩は私に晩ごはんを御馳走してくれるのでしょう?」
「え? 僕は君に対してそんな約束までした覚えはないのだが……」
「ええ、そうですね。でも、約束なんていらないのです。なぜなら、これもあなたの義務の一つなのですから」
「ん? どういう事だい? それは」
「さて、もう行きましょうか。その議論については先輩が連れて行ってくれるレストランで、ワインでも飲みながらでもしましょう。魚介類には白ワインが合うそうですよ」
「ああ、確かにそんな話は聞いたことがあるね。……しかし、ムール貝と白ワインが合うかどうかは試してみなきゃ分からない」
「そうなのですか? う~ん。何だか楽しみになってきました早く行きましょうよ」
「ああ。でも、ちょっと待ってくれないかい?」
「もう、早くしてくださいよ。そのムール貝のパスタとっても美味しいのでしょう? 早く食べたいです」

       

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