Neetel Inside ニートノベル
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リコールメイド153
第1話「ハジメマシテ ゴシュジンサマ」

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 オレの名前は田中太一。本日をもちまして無職となりました。まあ人間の屑とか言わず聞いてくれ。オレにはとある夢があった訳だ。その夢を叶えるために毎日せっせとアルバイトをこなし金を貯めてきた。オレの学歴ではたいした企業に就職できるわけもないのでその方が都合が良かったのだ。
 そしてつい先日、オレは念願の夢を叶えるための資金が貯め終わった。これまでどれほどつらい思いをして働いてきたか…。生活費は限界まで削った。風呂無しトイレ無し4畳半のおんぼろアパート。一日3時間の睡眠で働き蟻もビックリの掛け持ちシフトをこなしてきた。

 今日、オレの夢が届くことになっている。どうしようさっきから動機が止まらない。なんだか落ち着かずカーテンを何度も開け閉めをし運送屋が来るのを確認していた。
 ――来た!やけにうるさい音を立てながら馴染みのあるキャラクターのプリントされたトラックがアパート前の細路地に止まった。
 オレは気持ちを落ち着かせながら玄関に正座してドライバーが階段を上ってくる音を聞いていた。そして呼び鈴のついていないオレの部屋の戸をドライバーが叩く。
「宅配便でーす!」元気よく言葉を発するドライバーにつられ「はい!」と元気よくドアを開いた。
「どうも、こんちは!田中さんのお宅でよろしかったですか!」
「はひっ」落ち着けオレ。別にやましいものを注文したわけではないのだ。伝票にサインを求めるドライバーの傍らに膝くらいの高さのシッカリと梱包された箱が置かれていた。思ったより小さいな。しかし助手の若い兄ちゃんが肩で息をしている。重かっただろうに、お疲れさん。
「それではこちらがお届けものの商品です。重いので中まで運びましょうか?」
「あ、いえ大丈夫です」何となく断ってしまった。「そうですか。それでは!」助手の若い兄ちゃんはホッとしたような顔でかぶりを振りながら二人は去って行った。

「そんなに重いのか。さて…」届いた荷物を持ち上げてみたが、なるほどこれは重い。日雇いの荷揚げ屋で鍛えてきたオレだがなかなか腰にくるな。慎重に部屋の中に運び入れ床に置こうとした。しまった――指が滑り思わず床に落としてしまう。
「キャッ!」床に激突した箱から声が発せられた。…ちょっと待て。なぜ起動している?オレは慌てて箱の上蓋からセロファンを剥がし蓋を開いた。なんと説明したらよいのだろうか。箱の中にギュウギュウに少女がケツを上に向けて詰まってた。こんなぞんざいな梱包の仕方があるかよ。いくらオレの資金じゃ一番低ランクのヤツしか買えなかったとはいえヒューマノイドタイプのロボットだぞ。そもそもだ一般の運送屋が運んでくる事自体おかしな話なんだよ!
「…おい。お前なんで起動してるんだ?」
「…」オレの問いかけに何も答えなかった。こいつシラを切る気か。「カンチョウするぞ」
「ハジメマシテ ゴシュジンサマ」ガタゴトと箱を揺らしながらワザとらしい片言で答えた。
「いや、答えろよ。な・ん・で、起動してるの?普通認証の手続きとかあるだろう!オレの趣向に合わせてインストールするもんだろっ!?」
「…ぴー、ぴー。音声認識終了。パスコードを入力してください」箱の中でモゴモゴと何か言っている。
「お前バカだろう!!」
「バカっていうな!それよりも早く出してください!この体勢には限界なんですよぅ…」なにやら泣きそうな声で箱にぴっちりハマったヒューマノイドタイプのロボットが答えた。泣きたいのはオレの方だよ。一年遊んで暮らせるほどの金額を払ったのに…どおすんのコレ。

つづく

       

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