Neetel Inside ニートノベル
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ニーノベ三題噺企画会場
お題①/とあるVB計画/黒兎玖乃

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 真っ暗な部屋。ぽつ、ぽつと明かりが灯ったのは、点在するろうそく。

「……全員揃ったな?」

 低く芯のある声で、一人の男が呟く。目の前で燃えているろうそくの明かりを受け、ホラー映画さながらに顔が不気味にライトアップされる。
 やがて、彼を長机の端においた形で、それぞれと持っていたろうそくに照らされて次々と人間の顔が浮かび上がる。もちろんこれは、僕を含めた"集団"のメンバーである。
 僕ら――――変革をもたらす宗教団体、『アスクレピオスの杖』の。

「ああ、続けてくれ」
「……そうか、ありがとう」

 近くにいた男の言葉に答え、我らが『新世界』のトップ、橋本恭二は立ち上がる。

「今日は定例報告会だ。何か成し遂げたことがある奴は、立ち上がれ」

 その台詞に、何人かの人間が立ち上がる。男女混同して、おおよそ十人と言ったところだろうか。メンバーのほぼ半分が成果を上げたとは、どうやら今回は上々のようである。

「代表して、粟森」
「…………はい」

 橋本に促されて、僕の隣にいる粟森を除く全員が自らの席に着く。
 粟森は前髪の奥に潜む瞳に燃え盛る炎の影を映すと、ゆっくりと口を開いた。

「来る日に向けて……準備は着々と進んでいます。既にターゲットの捕捉も完了いたしました。今回は約三十人程度。例年よりも少ない傾向にあります」
「ふむ…………」

 粟森の報告を聞いて、橋本の顔が厳しくなる。

「今年は新参者の実力がいかほどのものか、まだ分かっていないからな。その辺り危惧しておこう」
「……発信者と受信者、その数は圧倒的に発信者が多い模様です」
「何だと?」

 続く粟森の言葉に、その隣に座っていた男――――喜田川が反応する。

「それは信じがたい事実だな。圧倒的に多いなら、俺達にも"受信"が来るんじゃないのか?」
「残念ながら、その可能性は薄いでしょう」
「…………チッ」

 いまいましげに舌打ちながら、喜田川は顔を伏せる。
 そう。彼だけではなく、この場にいる全員が――――"受信者"ではないのだ。
 気分よく思っていないのは何も喜田川だけではない。
 この場の全員、既に意思は疎通しきっている。

「願ってもない好機だな。これを機に、一気に畳み掛けるとしよう」

 橋本の言葉に、全員が頷く。

「そうだ、やってやろうじゃねえか……一思いによ」
「何なら殺しても良いんだ……ブラッディに染め上げてやる」
「いいなそのアイディア。ぴったりじゃないか」
「本当、かの方の恨みも晴らさんかのようだな」
「いや待て。冷静に考えれば奴は俺達の敵のはずだ」
「そうだ、歴史上の出来事で考えると――――奴は俺達の敵だ」
「発信者、受信者の味方ってわけか。騙される所だったな」






「――――いいか、お前達」

 橋本の鶴の一声で、若干わき立っていた男達が静まり返る。

「この計画は、俺達の人生にも関わることだ。絶対に、失敗することは許されない。なんだったら、殺人とて起こしても構わない。人命に匹敵するほど、この計画には価値があるんだ。




 ――――合言葉、いくぞ」



 全員が一呼吸置いて、叫び散らす。












『目指せ! バレンタインデー撲滅!』
「うるさいぞお前ら! 授業にも出ずに何をやっている!」
『すみません!』

       

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