Neetel Inside ニートノベル
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「ねえルゥかレクシス、『情報操師』って知ってるかしら」
「……なんだそりゃ。聞いたこともないな。レクシスはどうだ?」
「私もない。なんだいそれは、メイラちゃん」
「んー……今から仲間にしたいと思ってる人の情報よ。つまりは、分かり易く言い換えるなら『情報通』のことらしいわ」
「その人づて口調はまあいいとして、なんで情報通ってのを今度は仲間にしようと思ったんだ。そんなに情報が欲しいわけでもあるまいに」
「そんなことないわよ。あたしからしてみれば、情報っていうのはとても重要なもの。それの有無で戦いにおける勝敗が決まるほどなのよ。それこそ、あたしの禁術みたいにね」
「あー、……なるほどな。確かに」
「それにルゥ君、情報というのはこの私、変態にとっても大切な――」
「無視」


 メイラからその人の肩書き、『情報操師』とやらを聞いた時はお堅いイメージを俺は受けたものだったが、実際に会った人――つまり少女は、そんな肩書きとは似ても似つかない雰囲気だった。まあしかし、より彼女について説明するなら、少女というか、女の子、つまり子供だったと述べておこう。
「あなたが、『禁術師』メイラ=シュライナさんですね」
 と、彼女に先に声をかけられた。
 確かにメイラは有名だからな、と思ってしまえばそれはそれで普通の出来事だったのかもしれないが、しかしメイラに至ってはそうではない。メイラは、肩書きと名前しか広まっていないはずだった。それにも関わらずメイラをピンポイントで言い当てるというのは、こいつ……只者じゃない。『情報操師』というのは伊達ではない、それが一発で分かる初見だった。
「いかにも私が『変態』だが」
「あなたには訊いてませんっ!」
 空気を呼んでくれ……。
 なんでレクシスがしゃしゃり出てきたんだ。俺はもちろん無視させてもらう。
「ええと、いかにもあたしがかの有名なメイラ=シュライナだけれど……『禁術師』の……」
 あ、こいつ、先手を取られて少し凹んでいる。俺らの時とは流れが違うから、若干覇気がないというかなんというか。
「やっぱりですね!あ、でしたらでしたら、『仲間』という名を騙った『妹』、いりませんかっ!?」
「え、う、うんまあそうね。いやあ、流石は『情報操師』、あたしが言わんとすることをことごとく悲しいまでに先手取ってくれるわね。嬉しくてもう涙が止まらない……」
「がんば、メイラ」
 以外にシャイなやつだった。
 にしても……俺らが(メイラが)仲間集めをしているということまで知っているのか。一体こんな子供がどうやってそんな情報を知ったのだか。ますます疑問だし、何より、不気味だ。
「お前さ、どうやってそんな情報知ったんだよ?」
「えへん、そんなの秘密に決まってるじゃないですか。……と本当は言いたいんですけど、他ならぬお兄ちゃんの頼みです、ほんのちょっぴり教えちゃいます」
「もう妹になってんの!?」
 過去最速のスピードだった。まだ出会って間もないというのに(ほんとに初対面にもほどがある)、なんてスピードだ。さぞあの変態も喜んでいることだろう。……いや、まじで顔がシスコン顔になってるぞ、あの変態。
「と言ってもですね、そんなに深い意味のあることなんてしていません。ただの、普通の、魔法です。そうですね、ええと……こんなかんじです」
 そう言った彼女の元に、どこかから飛んできたらしい鳥がやってくる。彼女が手を出すと、そこにちょこんと乗っかるようになる。しばらくそのままでいたのだが、今度はまたその鳥がどこかへ飛び去っていった。
「今ので、少し情報を仕入れました」
「そうか、お前は鳥と話せるというのか、夢があって大変素晴らしいな」
「嫌味っぽく言わないでください。違います違います、今のはただの鳥なんかじゃないですよう。あれが、魔法なんです」
「……?」
 鳥と話せるようになる魔法とかだったりするのだろうか。
「うーんと、なんて言えば分かり易いんでしょう……。あ、そうですそうです、あの鳥そのものが――私の魔力なんですよ。それを、世界中に散らばして、こうしてたまに情報を得るんです」
「……まじか?」
「まじです」
 だそうだ。俺にはそんな事ができるのか分からないが……すごい事なんだろうか(俺は魔法ってのはあんまし使わないから、必然、知識も少ない)。
「才能の問題ね。魔力っていうのは努力以上に、天性の所持量で許容量が決まるものだからね。世界中にさっきみたいな鳥なんかの情報収集魔法を散りばめられるっていうのは、やはりすごい事なんだと思うわ」
「ん、メイラはそういうのできないのか?」
「あたしは……残念ながら、普通の魔法は使えないのよ。……『禁術』しかね」
 てっきり俺は普通の魔法を使えた上で、その禁術とやらも使えるのだと思っていたがそうではないらしい。やはり世の中そう都合のいいことばかりじゃない、ということか。
「なるほど、だから君は色んな情報を持っているということなんだね?」
「そーゆーことです」
 なんとなく納得した。
「じゃあ、もう明らかに必要ないけれど、一応確認ね。あなたの名前はメルミナ=ナミル。肩書き『情報操師』。合ってる?」
「うん」
「いつもの流れでこのまま言うわよ?あなた、あたしの妹にならない?」
「もうなってます♪」
 案の定、こいつもメイラのことをよく知っているパターンだったか(まあ、最初の時点で分かったことだったけれど)。となると、この三人でメイラを知らなかったのは俺一人だけということになる。……俺、再び自信喪失。
「……自己紹介でもしとくか。俺はルゥラナ=メグザ。二つ名『殺人周期』。お前なら知ってるよな?」
「もちろんです」
「そしてそして、この私が『変態』のレクシス=シナディン!すきな者は妹っ!ああっ、この私はなんて幸せなのだろうか、こんな短時間で理想だった妹が二人もできてしまうとは!それになんと義理の妹ときたものだ、これはもしや私のラブコメスタートの証ではないのか!?」
「先に『変態』を強調するのはやめてくれ。それにラブコメなんてスタートして欲しくもないしするわけもない」
「何を言う、君は僕と妹を奪い合うポジションなんだよ?」
「安心しろ、あんたにやる」
「いとハッピーっ!」
 大の大人がなんて痛さだ……。見ているこっちが辛くなってくる……。頼むからこういうのはやめて欲しい。
「これからよろしくね、お兄ちゃん達とお姉ちゃん」
「っっっっっ!」
 まあ、何をするためにメイラが仲間を集めたのか分からない以上、何を頑張るのかも分からないわけだが。
 ちなみに……若干一名が喜びに打ちひしがれているけれど、いつも通り俺は無視することにする。

       

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