第三話 煌剣の戦姫

 『第二次神魔戦争』、と呼ばれるこの戦争(メイラの中でだけだが)。
 一昔前の『神魔戦争』との大きな違い、それはまだ『魔王』側の存在を大々的には知られていないということだ。宣戦布告のようなこともせず、だから国民はまだその戦争の存在を知らない。神国のトップである『神徒』二人はつい最近何かが起こっているということを体験したものの、それでもまだ敵がはっきりしていない。二人は、敵は四人――メイラとルゥラナとレクシスとメルミナ――だと思っている。
 このことはメイラたちからしてみれば大きなアドバンテージで、奇襲をかける絶好のチャンスといえた。けれどそのアドバンテージは意外にも脆いもので、時間の経過と共に内通者の存在はだんだんと明るみに出てしまう。だからメイラたちは否が応にも、すぐに奇襲を仕掛けざるを得なかった。
 そしてそのための作戦会議に移る。話し合うのはメイラたち四人+シノイとリリーだ。一応この『神官』二人は幹部として扱われているようだ(二人の努力の甲斐あって、他にも数名の『神官』が仲間についている)。場所は、シノイの仕事部屋となった。
「……で、さっそく本題に入りたいんだけど……。実はもう、どんな作戦でいくか決めてたりするんだよ」
「……何のための作戦会議なんだ」
「形式的な、というよりも流れ的な感じで、かな」
 あっけらかんという表情になるルゥラナ。他の四人は苦笑いといったところか。
「じゃあ、先に日時を言っておくね。『神官』さんたちは日にちを知ってると思うけど、次の『定例集会』の時が作戦決行の日……にしようとあたしは思ってるの。るーくんとかは『定例集会』って知ってるかな?」
「名前から判断するに……『神官』だとかが集まる日ってことか?」
「そう。一年に二回あって、神国中から『神官』さんが『神徒』さんの所に集まるイベントなんだよ。何をするのかは知らないけど、まあそれは作戦には影響しないからいいとして。とにかくそこで、シノイさんとかリリーさんたち『神官』さんに騒ぎを起こしてもらいたいの」
「……というのはどういうことなのかな。僕たちがそこで暴れればいい、と?」
「それならできるけれど。というよりも大歓迎っ!?」
「うん。向こう側の『神官』さんが『神徒』さんたちに加勢できないように、できれば拘束ないしは戦闘不能にしてもらえると助かるかな。……で、騒ぎを起こしてもらってる隙にあたしたち四人もそこに侵入して、それで『神徒』さんたちと決着をつける。大雑把に言うとこんな感じかなぁ」
 ちょっと分かりにくいかな、と付け足しておく。
「まあ、詳しい事は追々話すとして。シノイさんとかリリーさんとかの『神官』さんたちの本分というのか、役割は本来事後処理に関係する事だから、この作戦はあくまで大義名分――分かるかな?『神徒』さえもこの改革に賛成した、っていう事実が必要なの。だから、皆にも“戦う”っていう形はいるわけなの。あたしだけで戦争を終わらせたって、ただの自己満足になっちゃうもんね」
「……わざわざ難しく聞こえる言葉を選ばなくてもいいんだぞ」
「むっ、あたしじゃないもん、だってこれは『禁術師』さんの受け売りだし」
 結局お前の肩書きに『禁術師』は入ってるのか入ってないのかどっちだよ、とつっこみそうになるルゥラナ。話が脱線するので訊かない。今はまだ魔法書の形態だが、それでも会話(?)はできるということだろうか。
「――まあなんだかんだ言っても、あたしが言いたいのは一つだけなんだよ」
 最後に付け足すような感じで話す。
「がんばろうね、ってこと」
「……だな」
 メイラが、皆に微笑んだ。



 ……というのが、あたし、メイラが『禁術師』さんから聞いた表向きの作戦。実際は、あたしの動きに関してはこれとだいぶちがっちゃうみたい。“四人で侵入”だなんて言ったけど、行動するのはバラバラの予定だし、それに何より『神徒』さんたちと決着をつけるのはあたしとるーくんだけでする予定だもん。予定が狂ってそうもいかないという可能性も無きにしも非ずだけど、予定ではそのつもり。あたしに『禁術師』さんは詳しく教えてくれなかったからよく分からないけど、何か考えがあるみたい。……何なんだろう。
 この後で、あたしはるーくんとレクシスさんとメルちゃんに、本当の作戦を伝える。作戦はこうだ。レクシスさんとメルちゃんは、侵入してからは『神官』さんたちと同様に敵を掻き乱す。ただし、二人は別々に行動すること。……たぶんこれには『禁術師』さんの何らかの意図があるんじゃないかと思う。で、その間にあたしとるーくんが『神徒』さんに突撃、と。騒ぎが起きればどこかに隠れるように仲間の『神官』さんたちに促されて、たぶん『神徒』さん二人はどこかに隠れちゃうんだろうけど、そこは気合で探し出す(というのは嘘で、メルちゃんに場所を探ってもらってから侵入する)。
 ……まあ、なーんて暗躍してるみたいに言ったところで、あたしが言いたいのはあくまで一つだけ。がんばろうね、ってこと。うん、それだけ。