Neetel Inside ニートノベル
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ラズク皇国 協会

「ヴァンに鉄じゃないか!久しぶりだな!」

協会に入り受け付けを済ましていると大男が話しかけてきた。
男の名はグレイドル。
ギルド『グレイトグレイドル』のギルドマスターである。
巨人族とのハーフであり、戦闘の腕も相当とのうわさだ。
ギルド名に自分の名前をつけるのは自信の表れなのかそれともただの・・・

「どうした?また鉄が神獣にでも手出したか?」

「いや、今回はテェロンの件でな。この頃仕事がなくて干からびそうだったんで
 自ら仕事をもらおうと媚びにきたってわけだ」

「はっはっは、お前たちらしいな。俺もその件で来たんだが今回はお前らに譲るとしよう。
 これで貸し一つだな。」

「そんなことを言ってる間にお前のギルドがつぶれても責任は取らんからな。
 まあありがたくうけとっておくよ。」

ほかのハンターであればこんな簡単に貸しは作らないが
グレイドルとは古い仲なので幾分気が楽であった。
そんなことを話しながら奥へと進んでいると目的の人物がいた。
ラズク皇国で実質的に権力を握る男、枢機卿ゴルバスである。

「これはこれは、十三の狩人のみなさんじゃないですか。
 三人ともテェロンのことできたんですか?」

「ああ、だけど今回はヴァン達に譲ることにしたんですよ。
 宜しく頼みます。」

そういってグレイドルは早々と退散していった。
正直言って自分たちも早く退散したいところである。
それほどにこの男と話をするのは心をけずられるのである。

「さて、テェロンの件ですが協会では”長歳龍”の可能性が高いと踏んでいるんですが・・・」

「なんで”長歳龍”なんかが!?龍皇国とは友好条約が結ばれているはずだ!」

「そんなことを言ってもきているものはしょうがないでしょう。
 それより2人で大丈夫なんですか?いくら十三の狩人とはいえ。」

「それはっ・・・」

”長歳龍”とは文字の通り高齢の龍である。
高齢とは言っても普通の龍でも千年の寿命があると言われているので、
人間とははるかにレベルが違う。
一般的に異形は年齢が高ければ高いほど魔力も増大していくとされている。
ましてや神獣の上位種族である龍だ。秘めた魔力、そして破壊性は想像を絶するだろう。

だがしかしヴァンと鉄が戸惑っているのは恐れからではなかった。

(長歳龍だって・・・もしかしたら・・・)

「やはり色々おもうところがありますよねぇ。
 何て言ったって君達の師のかたきかもしれないんですから。」

こいつはこういうことを平気な顔して言えるから嫌いだ。

「・・っく、十年も前のことをよく覚えていますね。」

「もちろんですよ。私は国のために異形と戦って命を落としたハンターの名は全て記憶います。
 そのハンターを倒した異形、ハンターの装備など全てを国の役に立てるのが私の役目ですから。」

この男は何を見て、何を思いいきているのだろう?
今まで死んでいった狩人の数なんて数えきれない。それをすべて覚えている?
たった今この瞬間も何を考えているか読めないゴルバスにヴァンは恐怖すら感じていた。

「関係ない。とにかく今回の奴はおれたちの獲物だ。
 かたきだろうと関係ない俺はただ強い奴と戦えればそれでいい。」

協会に入ってからずっと黙っていた鉄が唐突に切り出した。

「そうですね。ならお任せしましたよ。くれぐれも無茶はしないように。
 我が国はこれ以上優秀なハンターを失うわけにはいきませんからね。」

そういうとゴルバスは静かに会長室へと戻っていった。
鉄の一言で我に返ったヴァンも落ち着きを取り戻し一旦ギルドに戻ることにした2人だった。

       

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