二人はそうして徐々に気を張り詰めながら魔力の源へとたどり着いた。
しかしそこはなんらほかの場所とかわらない普通の森であった。

「なんでだ・・・、知覚鏡では確かにここを指しているはずなのに・・・」

「ヴァン、空中にいるという可能性はないのか?」

「いや長歳龍ともなれば空を飛ぶだけで相当の魔力を使うはずだ、わざわざそんなことしないだろう
 それにもしそうならすぐに気付くはずだ。」

考えても始まらない、とヴァンは広範囲の魔法を一回使って相手をあぶりだそうとした。
ヴァンが得意とするのは科学系魔法、鉄の得意とする自然系魔法よりは
こういう仕事に向いている。
ヴァンが遠くの木に狙いを定めたその時、何かに気付いて叫んだ。

「鉄っ!! 下だ!! 地層ごと引き上げろ!!」

鉄はとっさに自然系第一階 ‐怪腕 ハルグー - を使い宗近を地面に突き刺した。

「うおおおおおおおぉぉぉおおっ!!」

普通はそんなことをしても崩れてしまうだけの土が鉄によって
まるで皮のようにはがされ消えていく。

「やっぱり-曲空地-を使ってやがった!!」

自らを隠す巨大な地層をはがされ地表へと出てきたのは砂色の巨大な龍だった。
二人が森の中で見かけたぬかるみは沼でもなく、ただこの龍が使った第三階の魔法による余波だったのだ。
ヴァンは協会への道が急な舗装工事になったのを思い出した。

(まさか・・・あんなとこまで影響が出るほどの魔力だっていうのか!!)

「よくぞ、我に気付いたな、ヒトの子よ。我に気付いたのはお主らが初めてだ。」

まるで年老いた男性が子供をあやすような口調で話し始めた龍。
体長はゆうにヴァン達の十倍は軽く超え、
太い尻尾に、強靭な爪と牙をもつそれはまぎれもなく"長歳龍"だった。

「悪いが悠長に話している暇はない。こちらも貴様が龍皇国の龍であろうと
 国境をおかした以上はぐれ竜として狩らせてもらう。」

鉄がそういい捨て、切りかかっていく。
先ほどの-怪腕-の効果が続いている以上いくら龍でも無傷では済まないだろう。
ヴァンも急いで化学系第五階- 轟・爆粉陣 ゴエティルス-を紡ぐ。

月をも引き割くとされる宗近が鉄の剛力を持って振り下ろされる。
しかしそれは突如現れた黒い壁に阻まれた。
おそらく重力系第五階-隕四炭壁 アッサ・ウォー - であるのだが
それを予備動作無しで紡ぐことは人間にはとうてい無理である。

「ヒトの子よ、そう焦るな。取引をしようではないか。」

「取引だと?貴様ら異形と取引するものなど何もない!」

そう言って飛びかかろうとする鉄をヴァンが制止する。

「いいだろう、話だけでも聞こうじゃないか。」