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ソフトBL小説集
「シュレンディンガーのパンツ」(ノンフィクション系BL)

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 どうも僕の書いているのはソフトBL小説ではなくゲイ小説らしい。コメント欄にそういった意見がちらほら書かれている。
 だけどちょっと待ってほしい。ソフトBLにハードゲイは含まれないかもしれない。しかしハードゲイにはソフトBLは含まれる、大は小を兼ねる。大きな穴には太い棒も細い棒も入る。つまりそういうことだと考えてはくれないだろうか。
「シュレンディンガーのパンツ」という思考実験がある。パンツ一枚しか履いていない一人の青年を用意し、パンツは脱がさずに立たせておく。観察者には青年のパンツの中身は見えない。そこには巨大な逸物が隠されているのか、貧相な豆粒が情けなく付着しているのかは想像するしかない。パンツが盛り上がっていたり、中身がむくむくと動き出したところで、それは張り型かもしれず、また巨大な芋虫をたまたまパンツの中に飼っているだけかもしれない。パンツの中にあるペニスの形状は無限の可能性を秘めている。
 ある者はパンツに収まるはずのない数メートル級のペニスを想像して失神し、ある者は具体的に自分のアナルに完璧にフィットする太さ・長さを求める。またある者にとってそこにはペニスなど存在せず、ただぼんやりとした空間が広がっているだけかもしれない。
 つまり何が言いたいかというと、たとえここで書かれるのがゲイ小説であったとしても、男と男が登場してなにがしかの関係を持つ点でははBL小説と変わりない。おっさんもお爺さんもみんなかつては少年だった。男達について何か書くだけで、それはもう否応なしにBL要素を含んでしまう。
 小説というパンツの中にはあらゆる物語を入れることが出来る。そういうわけで僕はこれからも気にせずソフトBL小説を書いていこう。
 その前に少し僕の実体験を書いてみようか。

「シュレンディンガーのパンツ」の実験に実際に参加したことがある。大学の研究室で「一時間立っているだけの簡単な仕事」としてバイトの募集があったのだ。よくあるモーションキャプチャー系のバイトだと思った僕はうかうかと応募して、えらい目にあった。
 まず「シュレンディンガーのパンツ」の説明を受け、白いブリーフ一枚を渡された。そして「わしは年老いて想像力がもうないからのう、実験には直接参加せん。あんたの手伝いをしよう」という老教授に陰毛を剃られてしまった。ひりひりする股間を教授は丁寧に舐めてくれた。剃った陰毛はどういうわけか捨てられず、ハンカチにくるまれて教授のポケットに収まっていた。
 講堂に集められていたのは五十人ほどの男子学生で、食い入るように僕を見つめる視線が痛かった。実験が始まると、それぞれどのような僕のペニスを想像したのか知らないが、失神する者、泣き出す者、拝み出す者、尻を突き出す者が現れた。
 しかしうまく想像を働かせることが出来ない者も当然いるので、実験は第二段階に移行する。五、六人の生徒が僕に近づき、あくまで股間に直接触れないようにしながらも、僕の体をあちこち触り、パンツの中身を想像する材料を探った。
「ブリーフを引き絞りなさい」と教授が指示し、Tバックのように、Tフロントのように変形されたブリーフが僕の尻に食い込み、勃起しても11cmのごく平均的な僕のペニスを浮き上がらせる。それでも「教授、まだよくわかりません」という学生がいる。
「いっそ股間から意識を離してみるのじゃ。乳首を舐めなさい。唇を吸いなさい」
 指示に従う学生たちに僕は体中を吸われ、舐められ、自分の体にこんなにたくさんの性感帯があったのかと気付かされた。ペニスを刺激されるわけではないから直接の射精には結び付かない分、このままでは頭のどこかが切れてしまう、精神がおかしくなってしまう、とはらはらしていた。熟知しているはずの自分のペニスが、平均的大きさを遙かに凌駕して巨大化していくのを感じていた……。

「どうじゃった」
 実験を終えると教授は更衣室の中で僕の頭を優しく撫で、抱き締めてくれた。実験の真の目的は、実験体である僕自身に「シュレンディンガーのパンツ」の秘める可能性を気付かせることだった。観察者が、見知らぬ他人のパンツの中身に想像力を働かせるのはたやすいが、自分自身の物となるとそうはいかない。忘我の極地にまで達してこそ初めて常識的観念から解放されるというのだ。
 先刻までの爆発的陶酔から覚めた僕には、自分の股間にあるのがごく平均的な11cmのペニスだという自覚がある。それはなかなか大人しくなってはくれなかった。教授は「そのままでは帰るのも大変じゃろう」といい、ブリーフを引きずり降ろし、僕のペニスをくわえた。その途端、シュレンディンガーのパンツ的無限領域に貯えられていた僕の精液が火山の噴火のように噴出し、それをまともに喰らった教授は吹き飛ばされ、壁を破り、空の彼方へと消えていった。
「成功じゃ! 成功じゃ!」という台詞を残して……。


(HAPPY凸END)

       

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