Neetel Inside 文芸新都
表紙

夏の文藝ホラー企画
掌編/もりのおはなし/暇゙人

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 昔々ある森の中に、男の子と女の子がいました。
 男の子は女の子がとっても好きでした。女の子も男の子がとっても好きでした。
 ある日、二人の間に子供が生まれました。二人はとっても喜びました。
 それからしばらく経って、男の子は森にご飯を探しに出かけて、怖い動物に食べられてしまいました。
 女の子はとっても悲しみました。でも、子供のために強く生き、やがて死にました。

 その子供は男の子でした。
 ある日、男の子は森の中で女の子に出会いました。
 男の子は一目で女の子が好きになりました。女の子も一目で男の子が好きになりました。
 そのまま二人は一緒に暮らし、ある日子供が生まれました。二人はとっても喜びました。
 けれどある日、森の外からやってきた人さらいたちに子供がさらわれてしまいます。二人はとっても悲しみました。
 しばらくして、連れ去った人たちが見つかりました。彼らは骨だけになっていました。
 けれど、子供は無事でした。二人はとっても喜びました。
 そのまま二人は幸せに生き、やがて死にました。 

 その子供は女の子でした。
 女の子はある日、川で水を飲んでいる男の子に出会いました。
 女の子は一目で男の子が好きになりました。男の子も一目で女の子が好きになりました。
 そのまま二人は一緒に暮らし、ある日、双子の子供が生まれました。二人はとっても喜びました。
 そのまま二人は幸せに生き、やがて死にました。 

 その双子は両方とも男の子でした。
 この双子は仲が悪かったので、二人が死んだあと別々の家で暮らし始めました。
 二人は仲が悪いので、向こうにいい思いをさせたくありません。
 だから、二人とも頑張って森中の素晴らしいものたちを独り占めしようとしました。
 それは、この双子がそれぞれ女の子と出会っても、、女の子と一緒に暮らしても変わりませんでした。
 やがて二人にも子供が生まれましたが、その子たちにも同じことを教えました。
 そうしてお互いはずっと、向こうに嫌な思いをさせようとがんばってきました。

 男の子がいました。女の子がいました。
 二人はあの双子から数え切れないぐらいの時間がたったときの、彼らの子孫でした。
 もうその頃は、向こうの家の人は見たら逃げろと教えられるぐらいになっていましたが、男の子は一目で女の子が好きになりました。女の子も一目で男の子が好きになりました。
 二人は一緒に暮らし始めました。でも、二人の家の人たちはそれを許しません。
 二人を連れ戻そうと二人の家に向かったそのとき、地面が揺れました。
 森の木々がその根をむき出しにして、二人を連れ戻そうとする人たちに向かっていきました。
 しばらく声が響き、やがて静かになりました。
 木々はもとの場所に戻りました。心なしか、一回り大きくなったような気もします。

 それからしばらく、その場所には動物や虫がいっぱい来ました。
 でも、最後はあっちこっちに棒やすかすかで穴の開いた球が転がっているだけになり、それもやがて溶けてなくなりました。

 男の子と女の子は幸せに暮らしました。
 とっても、幸せに暮らしました。
 その子供も、そのまた子供も、そのまた子供も、幸せに暮らすことでしょう。

       

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