Neetel Inside 文芸新都
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夏の文藝ホラー企画
掌編/鉄バット/坂

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 学校へ行く夢を見た。
 その日はどうやら休校日らしく、学内には人の姿が全く無かった。
 普通休校日には建物の鍵は全て閉められているのだが、その日は何故か開いているらしく、僕はどうやらその機会を利用して部室に荷物を取りに来たらしかった。
 部室のある課外活動棟は学校から少し離れた所にある。離れた、と言ってもバス停から教室のあるキャンパスとは逆方向に歩いて五分程度の場所だ。そう遠くは無い。

 何故か一番山側のキャンパスにいた僕は階段を降りた。バス停まで来ると、道路を渡って階段を昇った。

 体育館の横を通り、奥へと向かう。あの角を曲がると課外棟の入り口だ。横には喫煙所がある。一本吸って行こう。そう思い角を曲がる。
 そこで、僕が最初に目にしたのは一面真っ赤な壁だった。
 見るとバットを持った男がこちらに背を向けてたたずんでおり、彼の前には何かの塊が置かれていた。
 人間だ。原型を留めていない。どこがどの部分か判別出来ない。
 二、三歩後ずさると体をひるがえして走った。
 しばらく走ったところで、後ろから金属の様な物を引きずる音がした。それ以外の音がしなかった。聞こえなかった。
 先ほどの男が追いかけてきているのだと分かり、僕は足を止める事無く更に走った。
 道路を渡り、キャンパスに助けを求め走る。エスカレーターが止まっていたので長い階段を昇った。
 音が少し近くなる。まだ距離はあるが、振り向けなかった。
 ピロティと呼ばれる広場に入った。噴水のある人工芝が敷かれている広場で、人がいるならここしかないと思ったのだ。
 しかし、そこには誰もいない。
 疲れて息が続かなくなった。逃げるのは無理だろうと悟った僕は走る事をやめ、振り返った。。
 男が段々近付いてくる。彼は僕がもう逃げ無い事を確信したのか歩いて僕に迫ってきた。
 徐々に男の姿がはっきりする。そして男が僕の目の前に来てバットを振り下ろそうとした。

 そんな辺りで目が覚めた。全身に汗をかいていた。
 ものすごく怖かった。
 夢でよかったな、と思い体をおこした。妙に背中が痛かった。そこで初めて、ベンチで眠っている事に気がついた。
 どこだここは、そう思い辺りを見渡す。暗かったがわずかに射す月明かりで周囲の状況が分かった。
 大学の、課外棟の喫煙所だ……。
 僕は慌てて立ち上がった。それと同時に、ガランと言う音がなる。何か長い棒の様な物がベンチに立ててあり、僕が起き上がると同時に倒れたのだ。
 見なくても分かる、鉄バットだ。
 今更ながら、辺りに濃い鉄の臭いが漂っている事に気付いた。
 倒れたバットが転がる。何かにぶつかり、とまった。
 あの塊はなんだ。見たくない。僕は視線を落とし、驚愕した。
 全身が真っ黒だった。足先から、ジーンズ、シャツ、手の先、胸元まで。
 そうか、そこでふと僕は顔をあげた。気付いたのだ。
 あの男は、僕自身だったのか。

       

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