Neetel Inside ニートノベル
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「はあ~。おめえはサッカー部にでもいたのかあ?」
 右手の指を貫己に向けて、能見はからかうようにそう言った。どうやら、ブランクを心配されたのが能見の中の何かに引っかかったようだ。物凄く好意的に解釈すれば、プライドか。だがそんな能見の言葉を非難する者などおらず、グラウンド上のナインはただ能見のピッチングに賛辞を送るだけ。と同時に、このピッチャーがいれば今年は良いところまでいけるぞという安堵感のようなものまで漂っているように見える。
「もうすぐ春の大会なんでしょ? 俺ピッチャーできるよねえ」
「いや、それはどうだろう、もう登録とか済んでるし、大会今週だし……。さすがにいきなりは無理じゃないかな」
 能見は大袈裟にリアクションしてみせる。『シンジラレナーイ!』は流石に古い。
「じゃあ戻ってきた意味ねーじゃんよー! せっかく春大会のタイミングに合わせたのにさあ」
 ゲシゲシと、スパイクでマウンドの土を蹴り上げる。
「ちぇー、つまんねえの。今のエースって岩田だっけ?」
 私は黙って頷いた。
「ふーん。じゃあ、岩田がノックアウトされたら俺が代わりに投げてやろうか」
 その言葉にグラウンドの全員が笑ったが、ぎこちない岩田の愛想笑いが私の目には毒だった。

       

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