Neetel Inside ニートノベル
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 思い切り振り抜かれた打球が、春の青空にグングン伸びる。
 誰も追わなくなった打球が、フェンスの向こうで静かに跳ねた。
 それまでの展開が嘘であるかのように、そこから試合は大きく崩れた。岩田が連打を浴びるとバックのエラーも絡み、あっという間に計七失点。
 その猛攻の中、能見がニヤニヤと私の顔を見ながら言った「俺が出てやろうか?」が頭の中に強く響いた。最後は岩田に代わって白仁田がマウンドに上がり、試合は終わる。
 不思議と、チームの雰囲気に失望感は無かった。逆転不能の大差がついても、どこか安穏とした空気が流れている。その安心感が、「大丈夫。“本番”は能見がいるし」という考えから来ているんだったら、……なんか嫌だな。
 ――次の日能見がノーヒットノーランを達成し、今シーズンの連敗は七で止まった。

       

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Neetsha