打率が三割を越えれば一流と言われるプロの世界だが、アマチュアには三割どころか六割を超えるような打者がゴロゴロしている。それは打席数の少なさもあるが、対戦する投手が低レベルであることがその理由である。
低いレベルの野球では“打てない凡退”というものがほとんど無く、“打ち損じ”がアウトカウントのほとんどを占めるような状態になっていたりする。目にも止まらぬ豪速球に振り遅れて空振り三振……ではなく、打てる球を打ち損じて内野フライ、という感じに。投手が良いピッチングをしたからではなく、打者のミスでのみアウトをとれるかのような。
しかしあくまでもそれは打者が優秀なのではなく投手のレベルが低いだけで、雛形くんや能見が相手ではそうはいかない。他の投手からは六割ヒットを打っているような打者が、能見の前には三振の山を築いてゆく。
それが“好投手の境界線”だと私は思う。
“打ち損じ”から“打てない球”へ。ある一定のレベルを越えた時、アウトカウントの内訳が一変する。
――その境界線の向こう側へ行こうと、岩田は黙々と投げ込みを続けている。