Neetel Inside ニートノベル
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 両手でギュッとバットを絞り、気合いを叫ぶ。ゆっくりと打席に入り、マウンド上のピッチャーにバットを向けた。
 丸い顔の坊主のクセに、なんだか少しカッコいい。ますます湧く歓声の中で、18.44メートルを白球が駆けた。
「ストライークバッターアウト! ゲームセット」
 あれっ。
 マウンド上で相手ピッチャーが喜んでいる。内野陣が駆け寄って、笑顔で整列に向かう。湧き上がったボルテージは一気に冷めて、ウチの選手達はダラダラとベンチを出ていく。
 ぷっ。
 あまりにシュールな幕引きに、私は思わず噴き出した。何やってんだこいつ、バカじゃないの。
 整列を終えた貫己が、バツの悪そうな顔で私の横を過ぎてった。
「頑張んなさいよ、せいぜい」
「……。もちろん」
 北海道は札幌、シーズン初めの練習試合。清陽中学野球部はまた負けて、選手達はいっちょまえに落ち込んでやがる。
 呆れるを通り越して笑うしかない弱さだけれど、こいつらがどんな結末を迎えるのか、見ていて退屈はしなさそうである。

       

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Neetsha