Neetel Inside ニートノベル
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 唖然としてしまった。
「なあ、聞いてるのか、雨宮クン」
「え……いや、うん。その形からの打8pは仕方ないだろう。他のメンツとも繋がらないし、うん、しょうがないな!」
「そうか……ツイてなかったな。くそ、こっちだって索子のチンイツ一向聴だったんだ。どうしてこうなのかな、俺って……今ので十四万負けか。やってられないな……」
 雨宮は烈香を見た。烈香は、その唇に押さえきれぬ笑みを浮かべていたが、その角度に反比例するように、雨宮の気持ちは沈んでいった。
 悟ってしまった。
 今宵の勝負が、勝負とも呼べない――正真正銘の、駄麻雀であることを。
 寺門は、一点の疑いの余地もなく、ただのカモだった。
 ただのカモとは、勝負ができない。
 この時は、ただそれだけが、雨宮秀一には辛かった……。



 最初の半荘を雨宮に飛ばされて、寺門はいつまでもブツクサ言っていた。
 それを見かねて、烈香が視線を飛ばしてくる。
 通しなどは決めていない二人だったが、その目の色だけである程度の意思は交わせる。
『ねえ、結構イラついてるみたいだし、もっと緩やかにカモらない?』
 雨宮は視線を逸らして山作りに戻った。拒否の意味。
 烈香が空咳をしたので、雨宮はまた顔を上げる。
 寺門は、己の手元だけを見てガチャガチャと牌を几帳面に並べている。
『わかったよ。最初っから吹っ飛ばすつもりでいくんだね。じゃ、次はあたしがアガるよ』
 これも拒否しようかと思ったが、面倒なのでやらせておく。
 場所変えは面倒だったのでやらなかった。烈香は雨宮の対面、親番だ。
 二つのサイをひねって落とす。転がらずにぶつかっただけのサイは、左四を示していた。
 三人麻雀は北家がいないのでひとりの山が長くなる。烈香は丹精こめて造った山から、配牌十四枚をぜんぶぶっこ抜いた。
 そんなことできるわけあるめえ、と思われるかもしれないが、本当に手元しか見ていないやつ相手になら、できる。
 取ってきた手牌ブロックを立てずにそのままにしておき、自分の山の端にくっつけ押し出す。そして反対側から七トン十四枚の仕込み牌を持ってくる。
 だから烈香は天和していたはずである。だが、烈香は普通に第一打を打った。
 それもそのはず、烈香は八トン十六枚をぶっこ抜いていたのだ。手の平の親指から小指まで伸ばしてやっと、の量である。

 そして二順後、
「ロン!」

       

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