Neetel Inside ニートノベル
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ドアを開けると、方角的な理由か、窓から差し込む夕陽の光を真正面に感じ、枯野は思わず目を細めた。

やがて目が慣れてきて、枯野は目を開けて辺りを見渡した。

「ああ、少し暗いな」
そう感じドアの付近にある電気をつける。
そして改めて辺りを見まわし、しばらくして肩を落とした。

「何も無いじゃないか・・・」

そう、何も無かった。

正確には今は使っていないであろうオフィス机がいくつかと、古ぼけたソファーがあるのだが、他には何もない。
奥の壁は窓ガラスになっているのか、外が良く見える。

枯野が息をつくと、ソファーの上で何かが動いた。
もしやと思い、枯野は目をそちらに向けたが、またもや肩を落とす事になる。

「猫か」

ソファーの上には黒猫がいた。どうやら人が使わないこの廃ビルを住処にしているのだろう。黒猫は一瞬こちらを見たが、興味が無いかのようにそっぽを向き、ソファーに寝転がり出した。



「無駄足・・・か」
分かっていたとはいえ少しは期待していた枯野は、落胆した様子で振り返り、部屋から出ようとドアノブに手をかける

「・・・あれ」

何か違和感を感じる。頭の中に純一の言葉がよぎる
(ついても日が沈んでるらしい)
(少し暗いな)

頭の中でビルに入ってからを回想し、ようやく気付く。
僕は入ったとき、何に目を細めた?

そう、"夕陽の光"に目を細めたのだ。
しかし目を開けた時には暗くなっている・・・
枯野は腕時計を確認した。
「5時・・・45分」
この時期の日の入りは6時過ぎ、つまりまだ沈んでいない筈だ

枯野はバッと振り返り、枯野は驚愕した。

「夕陽が・・・出てる?」

さっきまでは薄暗かった部屋が、窓から差し込む夕陽でオレンジ色に光っていたのだ。

それだけではない。

先ほど猫が寝転がっていたソファーを見直して、枯野はもう一度驚く。

猫が、人になっていた。

ソファーを凝視し、愕然としている枯野に、猫いや人が口を開く
「貴方・・・私が見えるの?」






それが、僕と魔女との出会いだった。









――――――第一話 了

       

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