Neetel Inside ニートノベル
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【鍛冶屋】勝利まであと7000G 作成した武器:なし

 鍛冶屋グレンの名を知らない者は、この国にはいないと言っても過言ではない。鉄を打つ鍛冶師としての腕もさる事ながら、より特筆すべきはその人柄と先見性。面倒見が良く、情に熱い。仲間を見捨てる事は一度としてなかったし、時には自分を犠牲にして発展に身を捧げた。そして30という若さにして、一代で商人組合をまとめあげた。
 麦の育たない土地には、他国から買った別の作物の種を提供し、農民を飢えから解放した。治安の悪くなった場所には自警団を組織して派遣し、沢山の命を救った。身寄りのない子供を引き取り、教育し、生活に必要な技術を教える施設を作った。グレンの活躍をあげればキリがない。本来ならば国が率先してやらなければならない事を、グレンは率先してやった。
 王の悪政下、人々の希望の星として、グレンは国を駆け抜ける。
 誰しもが確信していた。もしもグレンが国の王になれば、もっと生活は良くなるはずだ。中には、王の耳の届かぬ所で、グレンに直接その意見をぶつける者もいた。しかしグレン本人は、「私にその器はないよ」と笑ってやわらかく否定した。
 しかし、グレンは野望を持っていた。
 帝都の片隅に、今は枯れ、誰も使わなくなった井戸がある。『破滅の井戸』と呼ばれるそれに、とある場所で手に入る『結晶石』という石を、誰かの名前を言いながら投げ入れると、その人物を破滅に陥れる事が出来る。
 他愛のない、街にあふれる噂の一種ではあるが、グレンは妙に井戸が気になっていた。しかし肝心の『結晶石』が手に入らなければ、事実かどうかを確かめる事はできない。そもそも、手に入れる方法さえ分からない。
 そんなある日、帝都の北に突如、湖と、そこから流れる川が出来た。そこから更に東では、宝石鉱山が発見されたという。グレンはひとまず湖に向かった。
「グレン様! これは一体どういう事でしょう? 一夜にしてあの湖が出来上がり、凶作で、今年で終わりだと思われていた畑に水が行き渡りました。まるで天からの恵みのようです」
 不審に思ったグレンは、興奮する村人達を宥め、原因を探りに湖に向かった。すると湖のほとりに落ちている奇妙な石を見つけた。
 グレンの見立てが間違いなければ、それが例の『結晶石』に間違いなかった。
 グレンはそれをこっそり持ち帰り、夕方、破滅の井戸に投げ入れた。
「サンパドレイグ7世――」
 と、半信半疑で呟きながら。


・青のレベル1タイルを採取、-100G

       

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