【勇者】武器レベル3 所持金500G
少年は星空を見上げながら、焚き火に木をほうった。隣では、ファンクルが寝息をたてながら安らかに眠っている。その表情は安心しきっていて、少年に抱く全幅の信頼を隠す事なく表していた。
――ゴブリン達にも、こんな感情はあったのかな。
少年はふと、思う。ウーズを2匹殺した時から、その疑問はあった。学者の話によれば、魔物という物は全て、人を襲う最悪の怪物であるという事だったが、果たしてそれは本当に悪なのだろうか。というよりも、自分達人間こそが正義であるという根拠はどこにあるのか。
人だって、日々の糧を得るために動物を殺す。ましてや、戦争になれば人同士で殺しあう事もある。
魔物と人に違いはあるのか。それを考え始めると、少年は眠れなくなった。
昨日、自分がゴブリン達にした事は、本当に正義だったのか。確かに、あのゴブリン達は人を襲って殺した。ましてや死を冒涜し、人間を喰った。自分が見過ごせば、南の街もゴブリン達によって滅ぼされていただろう。確かにそれはおぞましいと感じる。明確な怒りの感情も覚える。
だけど……と、考えかけて、少年は毛布を頭から被った。
これ以上考えるのはよそう。自分は人間だから、人間を守る為に戦って何が悪いのか。乱暴な結論だったが、それが今の少年にとっての何よりの救いだった。
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