Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

【勇者】武器:レベル1 所持金:0G

 マントが風に乗って波を作る。地面を鋭い鉤爪が捉え、勢い良く背後に土塊を飛ばす。乗竜の背で身を低く屈めた少年の眼は、その先に確かな奇怪を感じ取っていた。
 少年は、生まれた時から人より鋭い感覚を持っていた。天気予報はこれまでただの1度も外した事は無かったし、大きな地震が来る直前にはなぜか落ち着かない気分になった。そんな少年が、夕刻感じ取った『異変』は、この世ならざる者、異質な怪物の気配に他ならなかった。
 少年は長年の相棒であるファンクルの背に乗り、1本の剣を携えて異変を感じる方向へと向かった。帝都の門をくぐり、丘を1つ越えてしばらく走り、少年は、ネイファの召喚した1匹のウーズと対面した。
 もちろん、それは少年の見た事が無い生き物だった。不気味に這いずり、草の上を通りながら、植物を枯らしていた。生気を吸い取っているのだろうか。少年は推察する。そういえば、昔聞いた事がある。魔界には、へどろに良く似た下級生物がいて、生命の少ない所では無害だが、一度巨大化すると手がつけられない。もしかして、今目の前にいるこれがそうではないだろうか。
 少年は剣を抜き、ウーズに迫る。もしもこれがその怪物なら、まだ小さい内に処分しなければならない。見れば、先ほどよりも少しだけ大きくなっているようだ。
 少年は意を決し、剣をウーズに突き立てた。ぶうぶうと奇怪な声で鳴きながら、分裂して動きだすウーズ。
 一心不乱に、片っ端から叩き潰し、辺りに体液が飛び散る。抵抗はしてこなかった。勝ち目が無いと悟っているのだろうか、醜い体をよじらせながら、散り散りに逃げようとする。数十分後、ウーズの体はほとんど地面の染みと化した。
 ほんの僅かに残ったウーズの身体の破片を少年は拾い上げた。鼻につんとくる悪臭がする。しかしこれくらいは持ち帰らないと、誰も自分が怪物と会ったなどとは信じてもらえないだろう。
 帝都に戻り、知り合いの学者にそれを見せに行くと、それが本物のウーズである事が判明した。学者はすぐさま王様の所へ行き、少年がウーズを倒した事も一緒に報告した。そして、もしもこれが巨大化するまで放置されていれば、街が飲み込まれてしまうと進言した。
 会議の末、少年に褒美が取らされる事となった。王様には、怪物が出現する心当たりがあったのだ。それをいち早く発見し、倒した少年にはまだ働いてもらわなければならなかった。王様は、初仕事を終えた小さな勇者に告げる。
「また同じような怪物を見つけたら、倒してもらえないだろうか。そなたの勇敢さを見込んでの頼みだ」


・南へ移動。ウーズを撃破。報酬として+200G

       

表紙
Tweet

Neetsha