Neetel Inside ニートノベル
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ルーリングワールド
第13ターン

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【王様】結晶石タイル6枚 勝利まであと3ターン


「良くお似合いです」
 かつてこの国を作ったサンパドレイグ1世は、ボロ布を纏い、髪を剃って坊主にしていた。労働するにはマントなど邪魔だったし、髪を洗う時間も惜しかったからだ。
 その曾々々々々孫であるサンパドレイグ7世が、今同じ格好をしていた。
「世辞など良い」
 自分でも、自分の姿が無様なのは分かっていた。たるんだ体と所々禿げた頭ではどちらも格好がつかない。
 王妃の死が伝えられ、いよいよどうすれば良いか分からなくなった王は、相談役に泣きついた。その結果がこれだった。
 目も当てられないようなみすぼらしい格好。なのになぜか、妙に清々しく、肩が軽くなっているのを感じていた。


・青のレベル6、緑のレベル5タイルを設置

     


     

【鍛冶屋】勝利まであと:2800G 作成した武器:妖剣ノイニモッド


「諸君、はっきりと言おう。私のした事は間違いではない」
 グレンは壇上に上がり、高らかにそう述べた。集まった革命軍の有志、及び予備軍、更にはやじうま達は、水を打ったように静かだ。
「だから私は謝罪をしない。亡くなった者達に、決して謝罪はしない」
 最初は誰かが言った囁くような陰口から、敵対的で猜疑心溢れた疑問、そして矛先が明確に定まった怒りへと、少しずつ、少しずつ、ざわめきが強くなっていった。最終的に、グレンに対する怒号がその場を埋め尽くしていた。物を投げつける者もいた。もちろん、グレンを擁護する声もあがったが、瞬く間にかき消され影さえ残さない。
 責任の所在は明らかだった。グレンの立てた作戦で、王とは関係の無い、何の罪も無い民が死んだ。グレンの考えが甘かったのだ。玉座に魔物が現れるなんて事があれば、王のわずかばかり残った威厳も地に落ちる。兵士達の不満も募る。敵のド真ん中、魔物は倒されるだろうが、被害は与えてくれるはずだ。いくら内密に魔物を処分したとしても、完璧に隠蔽する事など出来る訳が無い。その考えこそが大甘だった。
 グレンは自分の策に酔いしれながら、こう考えていた。
 魔物の召喚に合わせ、王と魔王が契約していた事を新聞で流せば、国民は皆こう思はず。
『自業自得だ』
 皮肉にも今、その言葉がグレンに投げかけられている。頬を切り、額から血を流しても、グレンは壇上から引き下がろうとしない。ただ広場に集まった民衆を見渡し、口を一文字に結んでいる。その表情は険しいが、見える感情は怒りではない。むしろ悲しみ。深く黒い悲哀だ。
「だが……」
 グレンの絞ったような言葉。最初は誰も耳を貸そうとしない。
「だが私は……」
 ますます場はひどくなる。生の感情だけが、人から人に連鎖し、ぐるぐると渦巻く。
「だが、私は感謝している」
 グレンの、何にも混ざらない真透明の言葉が、人々の耳に届いた。
「私は感謝する。これから起きるであろう、この国で最大の革命。その尊い犠牲となった者達に、心から感謝している。彼らは、彼女らは、大切な役目を果たしたのだ」
 再び静まり返った広場、人々の間に空いた隙間を、グレンの心が流れていく。
「断言しよう。長らく続いた王政は、もうすぐ終わる。いや、私が終わらせる。これから新しい時代がやってくるのだ。昨日亡くなった者達が、王に対して抱いていた怒りは、絶対に救われる。これは私の責任逃れなどでは決して無い。必ずや、革命を成功させてみせる。私を縛り首にしたければ、革命が終わった後に好きなだけしたらいい。……以上だ」
 グレンが壇上から降りた。
 すると、主役の居なくなった舞台に向けて、誰かが小さく拍手をした。拍手は段々と膨らんでいく。これまでの悪政の中で溜まりに溜まった鬱憤が噴出するように、耳鳴りが起きるほど大きな拍手になった。


 グレンの下に、革命軍からの正式な招待状が届いたのはつい3日前の事だ。
 以前から、グレンは影ながら、例の地主の男を通して革命軍に資金援助をしていた。しかし当然、表だってそれをすれば処罰される。国の未来を想ってはいたが、先陣に立とうなどとは考えていなかったのだ。
 それともう一つ、グレンには革命軍に参加しない理由があった。
「グレン様、よくぞいらっしゃいました。長がお待ちです」
 表情は暗く、足取りは重い。場末の酒屋には酔いつぶれたのんだくれと、鋭い眼光のマスターと、黙って酒を飲む若者と、巧妙に隠された秘密の階段がある。
 階段の先は地下通路になっており、扉の無い部屋がいくつかあった。その中の一つに案内されたグレンは、そこにいた老人に黙って頭を下げた。
「良く来たな、グレン」
 老人の顔には生々しい傷跡。かつて鉄を打っていたその太い腕も、今は肉が落ちすっかりと細くなっている。グレンの師匠であり、現在は革命軍の長を務める、鍛冶屋ガンビット・ゴルドー、その人だった。
「まあ座れ、質は良くないが酒も用意してある……」
 そう言って差し出された椅子に、グレンは首を横に振った。
「『手前の納得いかねえ内は、仕事相手の出した茶も飲むんじゃねえ』と、私は師匠から教わりました」
 ゴルドーはグレンの顔を見て、含み笑いをする。グレンは無表情のまま、そんなゴルドーを見下ろす。小さくなった、と思う。
「なら、立ったまま聞け。単刀直入に言うが……お前、革命軍のカシラになれ」
 グレンは思わず、つまらない冗談を聞いたような苦笑いを零す。ゴルドーは言う。
「俺は真剣だぞ」
「……なぜですか?」
 もっともな問いだった。ゴルドーは、「見て分からねえか」とでも言いたげに、両手を開いて見せた。
「俺はもう老いた。満足に剣の一本も打てやしない。そんな奴に軍隊が引っ張れると思うか?」
 グレンは無言のまま、ゴルドーの窪んだ両目を見つめる。
「この国に必要なのは新しい風だ。嫌な事を吹き飛ばしちまう突風だ。俺はもう用済みなのさ。だから今度はお前の出番だ」
 グレンは目を瞑り、昔を思い出す。

 ゴルドーの下で修行の日々に明け暮れていた若きグレンは、ある日ひょんな事から重要な秘密を知ってしまう。ゴルドーは、鍛冶屋として稼いだ金をほとんど全てある組織に貢ぎ、幹部も勤めていた。ある組織とは、現革命軍の前身である秘密結社。巷の噂では、国の転覆を企み、選民思想を根付かせようとしている悪名高い組織だった。グレンはその事実をどのように扱って良いのか持て余した。ゴルドーのしている事が、悪なのか、それとも正義なのか分からなかったからだ。
 そこにちょうど、国からのお達しがあった。「秘密結社の幹部や隠れ家を報告し、壊滅に協力した者には莫大な報酬を用意する」グレンはゴルドーを尾行し、秘密結社の隠れ家を突き止めた。グレンも20を越え、独立を考え始めた時期だった。自分の腕にも自信があった。まだ子供扱いするゴルドーに怒りを覚えた事もあった。
 グレンは悩みに悩んだ末、隠れ家の場所を国に報告した。しかし最後の良心から、ゴルドーにだけは自分が裏切った事を伝えた。

「あの日、あなたに殴られた頬が、今でも時々痛むのです」
 グレンがそう言うと、ゴルドーは「お互い様だ」と言ってにやりと笑った。
「鍛冶屋商売は因果なモンだ。手前の打った剣で手前の大切な物が壊される。けどな、これだけは忘れるな」
 グレンの見開いた目がグレンを捉える。
「それも背負って俺達ぁ生きてるんだ」
 グレンは顔を伏せて答える。
「師匠、それは何百回も聞きましたよ」
 ゴルドーの清々しい笑い声が、地下に反響しあって大きく聞こえた。
「まだ俺を師匠と呼んでくれるのか? グレン」
「ええ、死ぬまであなたは私の師匠です」
「そうか。なら、師匠からの命令だ。そこに座れ、グレン。杯をかわせ」
 少しの静寂の後、安物のグラスが鳴る音がした。


「グレン様、例の少年が街につきました!」
 広場で暴れたオークは、駆けつけた革命軍の兵士に集中攻撃を受けたものの、傷を負いながら首都の居住区へと逃げた。グレンが先導し、居住区に住む者達はどうにか脱出したものの、今でもオークは未だ居住区に潜伏している。大人数の部隊を組み、捜索にあたらせているが、成果は芳しくない。オークは巨大ではあるが、同じくらい素早いのだ。範囲が居住区全体では、居場所を特定するのは難しい。
 だからこそ、グレンは少年の到着を待っていた。少年が東の街を出発し、首都に向かっているという情報は届いていた。少年には魔物の居場所が分かる。それに、グレンの打った剣も持っている。
「……という訳だ。頼む。力を貸してくれないか」
 これまでの経緯を説明し終え、深々と頭を下げるグレン。首都に入った早々呼び出された少年は、即答する。
「もちろんです。ですが、あなたもついてきてください」
 グレンはやや驚きつつ答える。
「ああ、だが大した戦力にはなれないと思うが……」
「構いません。見てるだけで結構です」
 少年はファンクルに乗り、グレンは馬に乗って居住区へと入った。昨日まで人々の活気の溢れていたそこは、まるで死んだように静かだ。地震でも起きたかのように、いくつかの建物がぺしゃんこに崩れて瓦礫と化している。オークが自分の身を隠す為の工作だが、少年に対しては意味をなさない。
「こっちです」
 少年が死んだ街を駆ける。その背中を見ていると、グレンの罪の意識は膨らんでいった。
 少年が自分に対してついてくるように言ったのは、なぜだろうか。……そんなもの、答えは分かりきっている。
 私のした事は、悪だからだ。
 その時、前を行く少年が止まった。その更に前方に、オークの姿があった。既に傷は癒えているようだが、疲労しているように見えなくもない。棍棒を肩にかけて持ち、少年を睨む。
「オマエ、ナカマ、コロシタ」
 オークが不器用に言う。少年はファンクルから降りて飛剣を抜く。
「……離れていてください」
 そう言われ、グレンは引き下がって距離を取る。いっその事、無謀に突撃した方が気は晴れるだろうとは思うが、少年の邪魔になる事だけは避けたい。
「オマエ、ウーズ、コロシタ。ゴブリン、コロシタ」
 何かを訴えるように、オークが体を揺らした。棍棒を両手で握り締めて、低く構える。少年は答える。
「ああ、僕は悪者さ」
 飛剣が鳴いた。
 砕け散ると同時に、刃が空から飛来する。前よりも迅く、鋭く、重く、幾千の敵意の結晶がオークを貫く。
 だが、倒れはしない。オークはその両足で地面を蹴り、少年に飛び掛る。反応する事さえままならない野生の速度。手負いの獣が見せた最後の閃光だった。
 ――――まずい、殺られ……。
 少年がそう思った瞬間、目の前に一つの影が飛び出した。
 何が起こったかは分からない。オークの爆発するような突撃が見えた瞬間、何かがそれを遮った。
 グレンの居た位置からは、今起こった出来事がはっきりと見えた。
 オークの突撃を防いだのは、ファンクルだった。
 少年は死と生の狭間から、現実に引き戻される。
 目の前にあったのは、全身に刃が突き刺さり、血を噴出して倒れるオーク。そして、胸の肉を抉られたファンクルの姿。
 少年が、咆哮した。


・赤のレベル2タイルを採取、-200G

     


     

【魔王】所持モンスター:ウーズ(黄1) ウーズ(緑1) オーク(青3)
    支配モンスター:ウーズ(黒1)×2 ワーム(緑4) デーモン(青5) オーク(赤3)
    支配中の街:西、北


「なんとも嫌な予感がしますね」
 デーモンが呟いた。ネイファは気にせず、スキップしながら北の街へと進む。
「……無視しないでくださいよ」
「無視されるような事を言うからだ。あと少しで北の街につく。そうすれば、3つの街が手に入り、この国は私の物だ。嫌な事など起こるはずがないだろう! ハーハッハッハッハ! ハッハッハッハッ……ゲホッゲホッ」
「慣れてない高笑いなんてするから……」
 南の空に、不穏な影が見えた。


・オーク1体、魔王を移動

     


     

【勇者】武器レベル3 所持金:1600G






・オークを撃破。報酬として+600G

     


       

表紙

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Neetsha