Neetel Inside ニートノベル
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ルーリングワールド
第1ターン

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【王様】結晶石タイル30枚 勝利まであと15ターン

 サンパドレイグ王国を治めるサンパドレイグ七世は、50年間に渡るこれまでの人生で、最大の窮地に立たされていた。かつては無限にあるかに思われた国庫は、残りたったの7000Gと心もとなく、長らく王家がしてきた放蕩生活のつけとばかりに、国民の不満は膨らむ一方だった。
 玉座につき、思案に耽る。この窮地を脱出する方法が存在していない訳ではなかった。しかしそれを行うには、それなりのリスクを背負う羽目になる。
 少し間違えれば、王位を失うのみならず処刑される可能性さえある。しかしその策が見事に成功すれば、王としての威厳と共に、巨万の富を取り戻す事が出来る。
 何時間も座して語らない王に、近衛兵の1人が近づき、膝を立てて粛々と述べる。
「我が王。まことに恐縮ながら、反乱軍の動きが活発化しております。数が多く、我が軍では追いきれないとの報告が。軍備に割く予算を拡張するか、あるいは国民の要求を飲まぬ限り、革命が発生する恐れがあります」
 王はイライラと足を揺すりながら、近衛兵の報告を聞いていた。予算を拡張するにしても、そんな金がどこにある? 一度国民の要求を飲めば、次はもっと大きな要求が降りかかる。怒鳴りつけたい衝動をどうにか堪え、いよいよ王は決断する。
「心配はいらぬ。私には、由緒正しきサンパドレイグの血が流れておる。偉大なるサンパドレイグ一世が成した奇跡を、今もう一度起こしてみせよう」
 近衛兵も、王の隣に座っていた女王も、王の言葉を疑った。
 かつてこの地は、植物などまともに育たない無限の荒野で、川も枯れ、生き物はおらず、生活する事はまず不可能な大陸だったという。
 そこに現れたサンパドレイグ一世は、大地に『恵み』をもたらし、人が生活できるような環境に作り変えた。……というのはあくまでも、絵本で教わるこの国の歴史。子供しか信じていない神話でしかない。
 だがしかし、かといってそれが虚偽であるとは限らない。
 真夜中になり、王は30年ぶりに、代々の王にのみ伝えられる地下の秘密部屋へと下りた。そこには、かつてサンパドレイグ一世が魔王と交わした契約書が残されており、血の印をする事によって再度契約は復活する。
 この契約を交わす事により、王は国内の好きな所どこにでも『資源』を与える事が出来る。資源は国民の満足な生活を保証する。ただし代償として、魔界と現世を結ぶ門を開かなくてはならない。
 王はまず、帝都の周囲に2つの資源を与えた。


・赤のレベル1、青のレベル1タイルを設置

     


     

【鍛冶屋】勝利まであと7000G 作成した武器:なし

 鍛冶屋グレンの名を知らない者は、この国にはいないと言っても過言ではない。鉄を打つ鍛冶師としての腕もさる事ながら、より特筆すべきはその人柄と先見性。面倒見が良く、情に熱い。仲間を見捨てる事は一度としてなかったし、時には自分を犠牲にして発展に身を捧げた。そして30という若さにして、一代で商人組合をまとめあげた。
 麦の育たない土地には、他国から買った別の作物の種を提供し、農民を飢えから解放した。治安の悪くなった場所には自警団を組織して派遣し、沢山の命を救った。身寄りのない子供を引き取り、教育し、生活に必要な技術を教える施設を作った。グレンの活躍をあげればキリがない。本来ならば国が率先してやらなければならない事を、グレンは率先してやった。
 王の悪政下、人々の希望の星として、グレンは国を駆け抜ける。
 誰しもが確信していた。もしもグレンが国の王になれば、もっと生活は良くなるはずだ。中には、王の耳の届かぬ所で、グレンに直接その意見をぶつける者もいた。しかしグレン本人は、「私にその器はないよ」と笑ってやわらかく否定した。
 しかし、グレンは野望を持っていた。
 帝都の片隅に、今は枯れ、誰も使わなくなった井戸がある。『破滅の井戸』と呼ばれるそれに、とある場所で手に入る『結晶石』という石を、誰かの名前を言いながら投げ入れると、その人物を破滅に陥れる事が出来る。
 他愛のない、街にあふれる噂の一種ではあるが、グレンは妙に井戸が気になっていた。しかし肝心の『結晶石』が手に入らなければ、事実かどうかを確かめる事はできない。そもそも、手に入れる方法さえ分からない。
 そんなある日、帝都の北に突如、湖と、そこから流れる川が出来た。そこから更に東では、宝石鉱山が発見されたという。グレンはひとまず湖に向かった。
「グレン様! これは一体どういう事でしょう? 一夜にしてあの湖が出来上がり、凶作で、今年で終わりだと思われていた畑に水が行き渡りました。まるで天からの恵みのようです」
 不審に思ったグレンは、興奮する村人達を宥め、原因を探りに湖に向かった。すると湖のほとりに落ちている奇妙な石を見つけた。
 グレンの見立てが間違いなければ、それが例の『結晶石』に間違いなかった。
 グレンはそれをこっそり持ち帰り、夕方、破滅の井戸に投げ入れた。
「サンパドレイグ7世――」
 と、半信半疑で呟きながら。


・青のレベル1タイルを採取、-100G

     


     

【魔王】支配モンスター:ウーズ(黒1)×3 所持モンスター:ウーズ(青1)×1

 大魔王ネイタスは地の底で果てた。一粒種の娘、ネイファを遺したが、魔界は彼女を新しい魔王だとは認めなかった。ネイタスの影響力が消えた事により、魔界にわずかなりとも存在した秩序も、今では灰燼と帰し、ネイファは幽閉される羽目になった。
 しかしながら、大魔王ネイタスが以前サンパドレイグ一世と交わした契約は、その血を介してネイファへと繋がっていた。
 契約の内容は以下の通り。
「大魔王ネイタスは、サンパドレイグ王に対し『結晶石を生み出す能力』を授ける。結晶石は、その地に恵みをもたらし、王の願いは叶えられるだろう。ただしその代償として、帝都に『門』を開く。それは魔王の正統な血族のみが通れる、現世と魔界を繋ぐ門である。この契約は、どちらかの血が途絶えるまで消える事はない」
 ネイファが魔界から姿を消したのは、王が契約の封印を解いたその瞬間だった。
 
 解き放たれたネイファは、まずは部下を必要とした。しかし復活したてのネイファの魔力には限界があり、ウーズ3体が召喚の限度だった。
 ウーズとは、魔力を持った軟体生物の通称で、最初はウサギ程の大きさで、どろどろのへどろのような見た目をしているが、植物のある地上に解き放って1週間もすれば、余裕で象くらいの大きさを飲み込む巨大な怪物に進化する。魔界では最底辺に位置する生物ではあるが、育ちきったウーズならば街の1つくらいは軽く占拠できる。
 ネイファは部下を使って、地上を支配する事に決めた。サンパドレイグには、東西南北に4つの大きな街がある。そのうち3つを魔物と自分で支配する事に成功すれば、魔界の者達もネイファを魔王と認め、命令に従うはずだ。
 いかに効率良く街を支配できるか、魔物の配置を決めかねていると、ネイファの頭上から小さな石が落ちてきた。見れば、それは魔力の源となる『結晶石』だった。色は青く、既に魔力を使い果たし、輝きを失っている。
 ネイファは、代々魔王の家系に受け継がれている特殊能力を持っていた。空になった結晶石を媒体にし、魔界からそれに応じた魔物を召喚できる能力。
 まずは黒ウーズを北、西、南の街に向かわせ、ネイファもその内の1匹と共に北に向かった。そしていつでも青ウーズを帝都に召喚できるように、結晶石を懐に忍ばせた。
 ネイファは地上侵略作戦の第一歩を確かに踏み出した。


・ウーズ3体を設置(強制)
・ウーズ3体、魔王を移動

     


     

【勇者】武器:レベル1 所持金:0G

 マントが風に乗って波を作る。地面を鋭い鉤爪が捉え、勢い良く背後に土塊を飛ばす。乗竜の背で身を低く屈めた少年の眼は、その先に確かな奇怪を感じ取っていた。
 少年は、生まれた時から人より鋭い感覚を持っていた。天気予報はこれまでただの1度も外した事は無かったし、大きな地震が来る直前にはなぜか落ち着かない気分になった。そんな少年が、夕刻感じ取った『異変』は、この世ならざる者、異質な怪物の気配に他ならなかった。
 少年は長年の相棒であるファンクルの背に乗り、1本の剣を携えて異変を感じる方向へと向かった。帝都の門をくぐり、丘を1つ越えてしばらく走り、少年は、ネイファの召喚した1匹のウーズと対面した。
 もちろん、それは少年の見た事が無い生き物だった。不気味に這いずり、草の上を通りながら、植物を枯らしていた。生気を吸い取っているのだろうか。少年は推察する。そういえば、昔聞いた事がある。魔界には、へどろに良く似た下級生物がいて、生命の少ない所では無害だが、一度巨大化すると手がつけられない。もしかして、今目の前にいるこれがそうではないだろうか。
 少年は剣を抜き、ウーズに迫る。もしもこれがその怪物なら、まだ小さい内に処分しなければならない。見れば、先ほどよりも少しだけ大きくなっているようだ。
 少年は意を決し、剣をウーズに突き立てた。ぶうぶうと奇怪な声で鳴きながら、分裂して動きだすウーズ。
 一心不乱に、片っ端から叩き潰し、辺りに体液が飛び散る。抵抗はしてこなかった。勝ち目が無いと悟っているのだろうか、醜い体をよじらせながら、散り散りに逃げようとする。数十分後、ウーズの体はほとんど地面の染みと化した。
 ほんの僅かに残ったウーズの身体の破片を少年は拾い上げた。鼻につんとくる悪臭がする。しかしこれくらいは持ち帰らないと、誰も自分が怪物と会ったなどとは信じてもらえないだろう。
 帝都に戻り、知り合いの学者にそれを見せに行くと、それが本物のウーズである事が判明した。学者はすぐさま王様の所へ行き、少年がウーズを倒した事も一緒に報告した。そして、もしもこれが巨大化するまで放置されていれば、街が飲み込まれてしまうと進言した。
 会議の末、少年に褒美が取らされる事となった。王様には、怪物が出現する心当たりがあったのだ。それをいち早く発見し、倒した少年にはまだ働いてもらわなければならなかった。王様は、初仕事を終えた小さな勇者に告げる。
「また同じような怪物を見つけたら、倒してもらえないだろうか。そなたの勇敢さを見込んでの頼みだ」


・南へ移動。ウーズを撃破。報酬として+200G

     


       

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