Neetel Inside ニートノベル
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ルーリングワールド
第6ターン

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【王様】結晶石タイル20枚、勝利まであと10ターン

 王に対する不満はあれど、見た目上は平和だったこの国に、突如として魔物が出没し始めた。それと同時に、人々にとって有益な資源が、まるで降って湧いたように現れた。
 災厄と恩恵。
 今、この国は改変期に突入している。民達の中にはそこに希望を見出す者もいたし、ただ混乱の中で不安に苛まれている者もいる。様々な思惑が交差しながら、世界はその形を変えていく。
 王宮の前の広場に、何百人もの人々が集結していた。武器は持っていないので、警備兵達はあくまでも傍観の姿勢を維持していたが、民達の眼には怒りの感情が溢れていた。騒ぐでもなく、叫ぶでもなく、ただただ無言の主張はこうである。
『お前のせいで沢山の人が死んでいる』
 やがて王が民衆の前に姿を現す。堂々とした立ち振る舞いで、表情には微笑さえ見てとれる。その態度を見た民達は、一気に怒りを爆発させた。
 響き渡る怒号の嵐。身を乗り出す者を力で押さえつける兵達。それらを王が一喝した。
「静まれい!」
 腐っても一国の主。その威厳ある声に、広場は静まり返る。
「皆の者に告白せねばならん事がある」
 と、王は切り出す。表情は淡々と、口調はしっかりと、態度は強気である。
「数日前より、帝都付近及び各街々の付近に、森、湖、鉱山、氾濫原などの、資源が現れている事は皆知っているだろう。中には、神の救いだ、大災害の前ぶれだなどと言う者もいるが、間違いである。
 これは私が行っている『政治』だ。民達に対する私の思いが成した奇跡の所業である」
 しばしの沈黙の後、一斉に民が騒ぎ出した。「嘘をつくな!」「今さら出てきて何を言ってる!」「苦し紛れの言い訳だ!」王は高らかに宣言する。
「よろしい。ならば次に資源が現れる場所を予言してみせよう」


・赤のレベル3、青のレベル5タイルを設置

     


     

【鍛冶屋】勝利まであと:5500G 作成した武器:なし

 王の予言は見事に的中した。
 これを受けて、グレンは魔物と資源の関係性について確信を持つに至った。
 王は会見の中で魔物との関与を否定したが、おそらくそれは嘘と見て間違いない。魔物を召喚するのに必要な結晶石。それが資源と共にこの世に出現しているのだ。資源の出所が王であるというのなら、結晶石の出所も王でなくてはならない。
 グレンは気づく。
 もしや、『破滅の井戸』にほぼ毎日自分が投げ込んでいる結晶石が、何者かの手によって魔物と化しているのではないか。
 その『何者か』が王様である可能性は低いだろう。自ら国益を損ねるような真似はいくら何でもしないだろうし、魔物によって人が殺されれば、その不満は魔物討伐を怠った王に向けられる。それにそもそも、王には魔術の能力はない。誰かに依頼するにしてもリスクが大きすぎる。
 では、一体誰が魔物を召喚し、人々を襲っているのか。
 その答えは出ないが、今はとにかくあの少年に魔物を退治してもらう他無い。一応、東西南北の各街で自警団を結成するように指示はしてあるが、果たして魔物に対してどこまで抵抗できるかは疑問だ。
 王が資源と共に魔物の元である結晶石をバラまいているのはほぼ確定的だが、この事を告発するのは不可能に思える。何せ証拠が無い。いくら自分に立場があるとはいえ、確実な証拠が無ければ、王に潰されて終わりだ。
 グレンはこの時、告発をしない理由のもう1つにあえて目を瞑った。
 自分は魔物召喚の片棒をかついでいる。破滅の井戸の仕組みを理解してもなお、採取した結晶石を井戸に投げ入れている。


・青のレベルタイルを採取、-500G

     


     

【魔王】支配モンスター:ウーズ(黒1)×2
    所持モンスター:ゴブリン(青2) ゴブリン(灰2)

 草木も眠った頃、巨体をうねらせるウーズが西の街と東の街に到着した。
 ウーズ達はネイファの指示通りに、まずは手近な井戸に分裂した半身を投じた。そこから水脈を辿り、街中の井戸を支配下に置いた。ウーズを含んだ水を人が飲むと、死には至らないものの衰弱し、まともに動く事が出来なくなる。しかも、薄められたウーズはほとんど無味無臭で、人々が井戸が原因だと気づく頃にはもう遅い。
 ウーズのもう半身は、街で一番大きな屋敷を探す。その街で最も権力がある者を人質にとって、支配力を強める。
 いくら大きく膨らんでも、ウーズの動きはのろまで、攻撃力はほとんど無い。しかし分裂と巨大化によって、増殖は無限に続く。剣で切りかかろうと、炎で焼こうとも、『核』を破壊されない限り、ウーズは増え続ける。
 『核』。それがウーズの弱点だった。
 街を出てすぐに少年に見つかったウーズはまだ小さく、やたらめったらに斬ればいつかは核も破壊される。しかし今のウーズは違う。街の大通りを進むウーズは、その周りに立っている家よりもでかい。
 東西の街がネイファの手に落ちた。あと1つ、南か北の街を手中に収めれば、この世界はただの魔界の延長となるだろう。大規模な破壊のあと、人間には絶望しか残されない。暗く閉ざされ、どこまでも濁った世界。
 やがてネイファは魔王として認められる。
 大魔王ネイタスの後を継ぐ、正式な魔王として魔界に迎え入れられる。ネイファはその時を夢見て、今日も隠れ潜む。


・ウーズ2体、魔王を移動

     


     

【勇者】武器レベル3 所持金500G

 少年は星空を見上げながら、焚き火に木をほうった。隣では、ファンクルが寝息をたてながら安らかに眠っている。その表情は安心しきっていて、少年に抱く全幅の信頼を隠す事なく表していた。
 ――ゴブリン達にも、こんな感情はあったのかな。
 少年はふと、思う。ウーズを2匹殺した時から、その疑問はあった。学者の話によれば、魔物という物は全て、人を襲う最悪の怪物であるという事だったが、果たしてそれは本当に悪なのだろうか。というよりも、自分達人間こそが正義であるという根拠はどこにあるのか。
 人だって、日々の糧を得るために動物を殺す。ましてや、戦争になれば人同士で殺しあう事もある。
 魔物と人に違いはあるのか。それを考え始めると、少年は眠れなくなった。
 昨日、自分がゴブリン達にした事は、本当に正義だったのか。確かに、あのゴブリン達は人を襲って殺した。ましてや死を冒涜し、人間を喰った。自分が見過ごせば、南の街もゴブリン達によって滅ぼされていただろう。確かにそれはおぞましいと感じる。明確な怒りの感情も覚える。
 だけど……と、考えかけて、少年は毛布を頭から被った。
 これ以上考えるのはよそう。自分は人間だから、人間を守る為に戦って何が悪いのか。乱暴な結論だったが、それが今の少年にとっての何よりの救いだった。


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