Neetel Inside ニートノベル
表紙

ストライクボッチーズ
俺の黒歴史を語りながら楽園を探すだけのプロローグ

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クラスには必ず1人は友達がいない者、いわゆるぼっちという人間が存在する。
ひとえにぼっちといってもそれには色々とあるもので単にコミュニーケション能力が低い為にぼっちだとかいじめられてぼっちだとか、個性が強過ぎる、所謂変態だからぼっちだとか、不良なもんだから怖くて誰も近づかずぼっちだとか才能があるが故に妬まれてしまってぼっちだとか……、どうやらぼっちにも種類があるらしい。
では、これらのぼっち達を一ヶ所に集めてしまうと一体どうなってしまうのか、あなたは御存知だろうか。
答えは簡単に言ってしまえばカオス状態――いや、地獄絵図と化すのである。



俺は藤原鳴海16歳。ぼっち歴1年の新人ぼっちである。因みに能力(?)は会話不足(ワードブレイカー)だ。
まだ歴が浅い事からも分かると思うが俺は別に最初からぼっちだったという訳ではない。
いや、中学時代は寧ろイケてるグループ所属ではなかったにしろそこそこ友達はいた方だと自負したい。
だけどね、いや分かってるよ?当たり前なのよそんなのは。小学時代の頃のあの恐れを知らないコミュ能力。いやー、小学生はホント凄いよね、なんであんな男女無差別に話し掛けていけるんだろうね、尊敬しちゃう。
しかもそのまま中学に上がれば大体友達も変わらんしね、滞りなくそこそこの学園生活は遅れる訳ですよ。
でもね、その半リア充生活をそげぶ並にぶち殺すお方がいた訳、そう、永遠の中学二年生、たごころはるき先輩。
田心春期先輩はホント後輩に色んな事を教えてくれるからね、例えば親に反抗したくなる方法とか、邪気眼の使い方とか盗んだバイクで走り出す方法とか、ホントピンからキリまで様々な事をね。
それでね、先輩が俺に教えてくれたのが「人見知りになる方法」
いやね、本当ね、マジでいらない。
なんでよりによって+をド-にしちゃう方法教えちゃうんすか、先輩マジパネぇっす。
もうね、新しい友達なんて全然出来ない、女子に至ってはみんな女帝に見えてくるんだもの。謁見すら許されない。
まぁそうは言ってもね、高校もこんな田舎に住んでれば大体行く高校なんてみんな一緒な訳なんですよ。すげぇ安心。
それが俺の唯一にして最強の切り札だと思うじゃん?ところがどっこい罠カード発動、硫酸の溜まった落とし穴。両親の転勤。
しかも場所はリア充が全てを司る街、東京。
いやいやいや、何やっちゃってくれてんの、本気で。
春期先輩は校舎の窓ガラス割って回る方法なんて教えてくれちゃいねぇんすよ。
こうして俺は足掻く暇もなく気づけば全裸で激戦地に彫り込まれ、とりあえず服を探している間に爆死。
美しきぼっち生活を1年間寝た振りで過ごす羽目になってしまったのである。しかも最前列中央の座席で。

そして2年生になり俺は思った。このままでは完全に空白の3年間で終わってしまう、と。
だが周りは既にほぼ完璧と言っていい程グループが完成してしまっている。俺の入る隙間などμ単位も存在しないのだ。
しかし、それでもだ。ぼっちにも意地というものがある。昼食の時間ぐらいpgrされたくないという意地がな!
そう……、だから俺は決意したのだ。せめてでも安息して飯ぐらいは食える場所――楽園(エデン)を作る事を!
え?てっきり友達作りに本気を出すと思ったって?いやいやいや、出来るなら1年から本気出してるわ。
いやね?もうぼっちになって一番辛いのはね、ホント食事の時間でございますのよ。
人間てのはね食事をしてる時は副交感なんちゃら働いて精神的にも非常に安息した状態に入るらしいんだけど、俺の場合は攻撃的精神が働くとかいう交感なんちゃら常にドッパドパの状態で飯食ってる感じ。もうね、戦時中か。
しかも昼休みの1時間なのに気分は1ヶ月のように感じる程の長さ、これはもはや精神と時の部屋といっても過言ではない。
だからせめて空白の3年間を落ち着いて過ごせるぐらいの灰色の3年間にしたいんです……!
ま、傍から見れば無問題で空白なんだけど、傍から見る奴すらいないから問題ないよね?

まず王道の場所と言えばやはり屋上であろう。澄んだ空気を味わいながら青空の下で食事、最高である。
そしてあわよくば実は前から屋上を利用していたワケあり美少女とフラグ成立したりしちゃったりして?イヤッフゥ!
――でもね、冷静に考えてみ?最近の学校は普通屋上なんて解放してないのよね。フラグ立てる以前に飯食えませんから!
それに仮に解放してあったとしてもだ、心配する必要もなくリア充共、下手すれば不良の溜まり場になってるに決まってるだろ。
それなら次の場所は何処になるのか、便所飯――そう、トイレだ。ここは特に俺達ボッチーズには最高の楽園となっている。
まず個室というのが最大の利点といえよう、なんといっても人目に羞恥を晒す必要なく飯が食えるのだからな。
そしてその様子ははたから見ればただ大便をしてるようにしか見えないのだ。完璧だ、あまりに完璧過ぎる……!
それにどうやら大学では便所飯はデフォらしい、今からやっておけば大学に入ってから食事場所に慌てる必要もないって訳だ。
俺は早速に行動に移った。最高にして至高のトイレを探すために走り回った。1階から4階まで、くまなく吟味してやった。
だが俺の学校は全部和式だった……。血迷って1回だけ女子便所も覗いてやったがどや顔で和式便器が並んでいた。
何故だ……俺は座って飯を食う事さえ許されないのか……。しかも俺の弁当は2段なんだよチクショウ……!
結局俺は真っ裸で無理矢理戦地に戦わされる運命にあるのか……、と絶望しながら4階の女子トイレを出た時であった。
ふと見ると最近まで使われた形跡が全く感じられない小教室が1部屋。よく見ると「生徒会室」と書いてある。
どういうことだ?生徒会室が4階の階段から最も離れたこんな辺鄙な所にある筈がない。確か職員室の近くにあったような……。
……まてよ、それならこの教室は使えるんじゃないのか?名前も生徒会室のままなら倉庫としても使われてない可能性がある。
試しに扉を引いてみるが扉には鍵がかかっいて開かない。ていうかもし開いてたらあっけな過ぎてお兄さん切なくなるよ。
まぁここで普通のぼっちなら「そりゃそうだわ」とか独り言ほざいて諦めてる所だろうが期待の新人、エリートぼっちの俺はそう甘くはない。
なんといっても俺には思しゅn、いや、春期先輩に教えてもらった秘伝の必殺技があるからな!そう、何を隠そうピッキングだ。
あまりの厨二臭さに意識を失った奴もいるかもしれないが、あの頃ってこういうのが何故かカッコよく見えるのよね。おもいっきり犯罪だけど。
しかも結構歴史のある学校だったりすると鍵も同様に古いので意外と簡単に開けれたりしちゃうのよね、これで癖になっちまうって寸法さ!
そんな訳でプリントをとめるのに使っていた太めのクリップを棒状にして鍵穴に差し込んで弄ってみると、やはり体は覚えているもので案の定1分もしない内にカチャリと音を立ててあっけなく開いてしまった。
こんな所で黒歴史以外何物でもない特技が役に立つとはこれ以上ない情けない話ではあるが、今は記憶から抹消しておく事にしよう。
なんと言っても今はそれ以上に最高のエデンが目の前に待っているのだからな……、まさにwktkが止まらんってやつだ。
若干緊張しながら扉を開けてみるとやはり倉庫として使われている形跡はなく、それどころか長机が2つ、更には椅子が5つも置いたままであった。
どうやら使われた新しく移された生徒会室には道具類は一切持って行っていないようで、教室の隅にはポットまでそのままであった。
電気もしっかり生きているようで埃っぽいのを除けばアダムとイヴもオタ芸して喜ぶんじゃなかろうか――と言いたい所だが。
俺の目が疲れているだけならいいのだが、どうやら俺の目は完全に腐っているようだ。ゾンビに眼球をいかれてしまったらしい。
何故かって?そりゃ俺の右手に生徒会室にどう考えても必要のない物がおいてあるからだ。教えてやろうか?
サンドバックだよ。
しかも超不釣り合いな癖にこれ以上ない程のどや顔で立ってるんだもの、間違いなく和式便所越えだよ。
だがずっと見てると気づけばファイティングポーズをしながら2、3発殴ってる俺がいたりした。あれだよ?イラっとしたから壁殴る要領でやっただけだよ?
しかし兎にも角にもこれで当分食事場所には困ることはなくなるという訳か……、オラワクワクしてきたぞ!
こうして俺は1人のくせに明日学校に行く事を初めて若干楽しみにしながら生徒会室を後にしたのであった。

少し考えればどう考えてもおかしい事だらけな筈なのにこの時の俺は苦痛からの解放に嬉しくて何も考えれなかったのだ

       

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