Neetel Inside 文芸新都
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1.まず最初にどんな作風にするかを決める

 新都社に不足しているBL小説に即決します。ここで「でもBL小説って読んだことないし」「そもそも腐女子でも腐男子でもないし」といったことは考えません。よく知らないからこそ、ジャンルに囚われない発想が出てきます。
 一応あまりエロ描写が激しいとニーテル鯖から追い出されかねないので、ジャンルは「ソフトBL」に決定します。


2.コンセプトを決めておく

 1と似てますが、こちらはごく個人的な目的のようなものです。『ソフトBL小説集』の場合、「一人称で馬鹿馬鹿しいことを書く」にしています。これまで、一人称で小説を書くと、素の自分から遠く離れたものは書きにくく感じられることがあったので、タガを外してみようと考えました。
 例をあげると「一般受けなんて考えないで自分好みの作品だけを書く」「新書風に書く」といったコンセプトを決めておけば、たとえコメントがほとんど付かなかったとしても、自分の目的は達成しているので、落ち込むことなく続けられます。


3.一編目の冒頭でいきなり無茶をする

 最初に書いた『僕達の新記録』の冒頭を引用します。

「高校受験当日に、父の爆死と母の蒸発と姉の結婚と弟の逮捕が偶然重なったために、試験どころではなくなった僕は受験に失敗した。その後も心神喪失状態で何がなんだか分からない内に、僕は県内最悪の不良高校に進学するハメになってしまった。」

 まず父が爆死すること自体たまにしかありませんが、さらにそこに母の蒸発と姉の結婚と弟の逮捕が重なることはまずないでしょう。「何これこんなのありえねー」と、冒頭だけ読んで引き返す読者も少なからず出てくる、リスキーな書き出しともいえます。
 しかし話はこの後、用務員さんのアナルに不良少年七人のペニスが同時に突き刺さるという展開になります。ごく普通の世界観で語り出していれば、それこそ肝心のクライマックスにおいて「ふざけんな、なんだこの展開!」と読者に怒られることになりかねません。
 この冒頭は「この話は割と無茶してますよ。私の書くのは大体こんな感じですよ。嫌なら引き返して下さいね。もし気になったら読んでいってくださいね」という自己紹介にもなっています。
 といったことは後で分析して「こういう理由でこんな風に書いていたのかもしれない」と思ったことです。


4.一編ごとにテーマを設定

 ジャンルとかコンセプトとかテーマとか何か同じようなことばかり書いてる気がします。
「何でも書いていい」となると人は案外書きにくいものです。まず「ソフトBL小説」という大設定がありますが、それを生かしつつ、いろいろなタイプの作品に挑戦していきました。ただ漫然と書いていても進歩はありません。敗北を怖がって挑戦しなければ勝利も得られません。これは短編集だから出来ることですが。
 一話ごとにテーマと、どのようにして発想したかを記しておきます。

「僕達の新記録」(学園ものBL)
 まずは最初の話なので王道から行こうと決めました。不良少年ばかりの高校に入学してしまった美少年がBLに目覚める耽美な話を目指しました。

「君が泣き止むまで僕は君の涙を舐め続けよう」(切ない系BL)
 小説中の会話文というのがどうも苦手なので、だからこそ会話中心の話に挑戦しよう、ということで書きました。
「セックスの時って、アナル舐めるのに抵抗ないけど、日常生活において、『ちょっとそこの君、アナル舐めて!』ってお尻突き出されたら、引くよね」という台詞をとにかく使おうと決めていました。

「シュレディンガーのパンツ」(ノンフィクション系BL)
 新都社小説ではノンフィクションというジャンルもあまり書かれてはいません。思い切って実体験に基づいた話を書いてみよう、という試みでした。ただあまりに事実そのままでは関係者等に迷惑がかかるかもしれないので、多少脚色はしてあります。

「双子の恋」(シリアス系BL)
 これまで書いてきたのがやや軽いコメディ風が多かったので、シリアスも書かなければ、と思って書きました。それプラス「双子」です。自分とそっくりな人間、しかし成長するにつれ違いもはっきりしてくる、ミステリアスな双子という題材に取り組みました。これは結構難産だった思い出があります。

「ソフトBL小説を書くための手引書」(新書系BL)
 現在書いているこの文章はあくまで私個人の「ソフトBL小説の書き方」ですが、こちらは「誰でもソフトBL小説が書けるように」を目指して書きました。作中に例文としてごく普通の恋愛小説を書いてみました。そもそも恋愛小説を書いたことがなかったので、自分でもドキドキしていたのを覚えています。


5.その他

 使用テキストエディタ「O's Editor2」。
 執筆時間帯は以前は夜中、最近は朝方に移行しつつあるところ。
名前の由来「ちんちんがいっぱい」を略してちんいつ、その後「漢字+カタカナ名」に変更。
 短編の場合、「何かとっかりの発想を得る」-「冒頭に気合いを入れて書き出す」-「設定などに微修正を加えるごとに新規テキストファイルを作る」-「完成後も推敲を加えるごとに新規ファイルを作る」という流れが多いです。たとえば「双子の恋3.txt」で大体の流れは完成していても、問題点などを書き出して修正を加えていくうちに「双子の恋8.txt」くらいに大体なります。アップロード後、age更新前にも直すところが見つかるので、大体十個くらいのテキストファイルが出来ます。
 最初から細かくプロットを練って書き出しておくと、話を繋げるだけの作業になりがちで、投げ出す原因にもなってしまいます。自分で興醒めしないようなラストだけを決めておいて、後は何をしてもいい、というやり方がいいんじゃないかなと昨日思いました。
 基本的に「ゼロから書かない」をモットーにしています。妄想一筋で書いたものは、後で後悔することが多かったので。実体験、自慰体験、読書などから得たインスピレーション、その他、中には「一度没にしたアイデアから使える部分だけ抜き出す」「毎日書いているごくごく短い小説を基に」などがあります。
 執筆時は小さめの音量で音楽をかけておきます。歌詞が気になるのでクラシックや洋楽、ということもなく、大体好きな邦楽をかけています。集中していると音楽は気になりません。逆に急に耳障りになってきたら、集中力が落ちてきたということで、一旦休憩するいい機会になります。
 あとは、ライバルの存在というのもいるに越したことはありません。『ソフトBL小説集』を旺盛に更新していた頃、青谷ハスカ先生が『六打数ノーヒット』という、こちらも一話一話が短い短編集を頻繁に更新されていました。
「小説の書き方」系の本は、どれも面白いものではありますが、本気で参考にしようとすると、若い人ほど危ないかもしれません。ある程度自分の書き方が固まってからでないと、かえって自分を見失います。敢えてあげるなら森村誠一の「小説の書き方 小説道場 実践編」「作家とは何か 小説道場 総論」などが、プロデビュー後のことまで書いてあり、いつか参考に出来たらいいなと思った覚えがあります。残念ながらソフトBL小説の書き方などは載っていませんでしたが。

「ソフトBL小説集」はジャンルとコンセプトが固定しているために、ここで書いたような一定の書き方で説明出来ますが、小説執筆全般においては、一貫している姿勢というのはなかったりするので、極端な話一編ごとに取り組み方は違っています。それでも探せば共通項は取り出せそうですが、何故それがそうなのか、何故自分はその書き方を選んでいるのか、といったところはうまく言葉で説明出来なかったりします。
 だから皆さんもソフトBL小説を書く際には、自分なりのソフトBL小説の書き方というものを模索してみてください。

(単純にいろんな人の「小説の書き方」を読みたくて呟いたらそれを見た人が悪ノリ満載でアンソロジーを立ててしまい、うわあこれはまずい、でも言い出しっぺとして参加しないのもまたまずい、と思い参加。内容はアンソロ立つ前に大体出来上がってましたend)

       

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