Neetel Inside 文芸新都
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文芸作家解体新書
後藤ニコ

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文芸新都を語る上でもう一人忘れてはならない人物がいる。
大成功を収めた伊瀬カツラの独壇場だと思われた文芸に突如彗星のように現れたのは一人の女性作家だった。
全く無名の新人だった彼女は淡々と作品を更新し続け、気付いた時には文芸ランキングでぶっちぎりの一位に君臨、一躍人気作家としてその名を刻んだ。
コ・リズムの作者、後藤ニコだ。今や文芸を語る上で欠かせないキーワードとなっているニコカツラだが、これは文芸王 伊瀬カツラに肩を並べる存在として彼女の名が挙げられるからだ。それにより伊瀬カツラと後藤ニコは二強として長く頂点に君臨しているが、両社とも全くタイプ違いな作家性なのが面白い。
後藤ニコは圧倒的な知識と語彙力を用いた流暢な文章を得意としており、伊瀬作品にはない練り込まれたロジックが至る所に仕掛けられている。何でもないフレーズがそのままラストの鍵になったりする。高貴で香り高い文学性も彼女の魅力だろう。
コ・リズムはオナマス同様彼女の新都社処女作だ。いきなり怒涛の「うんこ」を先制パンチとして開幕するコ・リズムは中毒化する一人称が特徴で、2009新都社アワードで文芸賞を総なめ、最速で最多マイリス最多レビュー、挙句漫画化されるなど栄光の名を欲しいままにした。
コ・リズムを読んでいくと、ある人気作家の姿が見えてくる。四畳半神話体系の作者、森見登見彦だ。語り口、舞台、設定、それぞれが共通するようにリンクする。
それもそのはず。後藤ニコも森見氏と同じ京都大学出身らしい。
さて、そんな後藤ニコのアイデンティティをどこに見出せるかと言えばズバリ性別的視点の変換だと言える。森見氏の私は男だが、後藤ニコの私は女だ。
直情的な女性主人公が何でもかんでもバッサリと切り捨て、絶望しながらも懸命に自分の存在を証明しようとする様を見てると森見作品にはない新鮮さと美しさを感じる。
彼女も伊瀬カツラと同じくして、あまり露出がない。どこにでも声を大にして登場する今の文芸作家を考えると、この二人の人気には神秘性みたいなものもあるのかもしれない。
もう一つ、彼女の魅力を語るとすればブログだろう。彼女の楽屋裏でもあるニコブログは大変ユーモアに富み思わずコメントを置いたことがある。また文芸企画にも彼女らしき姿が時々確認でき、それも面白いから恐ろしい。
しかし彼女にも知られざる悪名がある。著者は初期の後藤ニコを存じてないのだが、編集部の専用スレではブログで大暴れしていた時期があったと噂されている。またコ・リズム単独スレが大荒れしたのも記憶に新しい。ブログは全削除されているし、原因不明の活動停止などわずかに彼女から電波的な香りがしないでもない。
さらにニートノベルに移籍し、数話で500コメントを稼いだ驚異の合作ぼく彼女のなんなのさは伊瀬作品と肩を並べるか否かの時に更新が停止してしまった。もったいない事この上ない。今後、天才後藤ニコはどこへ向かおうとしているのか。それは天才にしかわからない。

文芸女帝 後藤ニコ

話力     ★★★★☆
文章力    ★★★★★
キャラクター ★★★★☆
知名度    ★★★★★

作品
『コ・リズム』※漫画化
『ぼく彼女のなんなのさ』

       

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Neetsha