Neetel Inside ニートノベル
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顔の嵐
不揃いな顔面たち

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 なんで?
 修学旅行は今日じゃないのに。私達は3年B組じゃないし、担任も北野武じゃないのに。
「今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをしてもらいます」
 なんでこんなことになってんの。
 ――荒谷 光(あらや ひかる)は困惑していた。
 担任より突如発せられた衝撃的な、既読の者にとってはお馴染みの。残忍非道なワンフレーズ。鼻で笑い飛ばす者もいたが、冗談とは思えぬ深刻な空気が少し光の頬を強張らせていた。
「えー、冗談ではありませーん。ちゃんと話を聞いて下さーい」
 ざわめきの残る教室で、石井担任は話を続けた。
「非常に残念なのですが、このクラスが今回の舞台に選ばれてしまいました。ただし、あの映画のように立派な思想があってこんなことをしているわけではありません。単に、面白いモノが見たくて行われているというのが主催者達の本音だそうです」
 まだ笑っていたり小馬鹿にしている者がいる中で石井は淡々と話を続けた。その光景はいやに異様で、次第に耳を傾ける者も増えてくる。もっとも、石井の話す非現実的な空想話を信じているわけではなかろうが。
「なので、うーん。殺し合いというより生き抜き合い。戦争ではなくゲーム、そう捉えて下さい」
 そう言って石井は少し笑いを含んだ。
「おい! ふざけた事言ってねーでさっさと帰せっつーの! いつまでHRやってんだ」
 あの映画の展開よろしく。当然、こんな風に噛みつく奴は出てくんだ。石井はその生徒の方を一瞥だけして、構わず話を続けた。
「皆、あんまり信じてくれないようだと後で見せしめに一人殺さざるをえなくなるんだけどさあ。今ゴチャゴチャ騒いでる奴はその候補に挙がりやすいからな、気を付けて」
 ざわっ、とさざ波が沸く。
「皆さんにやっていただくのは、単純な殺し合いではなくゲームなんです。……そうですね、特に指定されてないんですが……便宜上、分かりやすい名称をつけるなら……」

「『不細工な奴から死んでいくゲーム』」

「……、とでも呼びましょうか」
 途端に教室のざわめきが大きくなった。その、気が抜けているようでやはりまがまがしさを帯びたゲーム名。なんだか安心したように笑う者や、その恐ろしさを感じ取り冷や汗を垂らす者。当然、ここでの正解は後者。
「あー当然、この教室は包囲されてまーす。勝手に教室から出ようとしてもペナルティを受けるだけです。注意して下さい」
 そのゲーム名を聞いて、あからさまにならない程度に互いの顔を見渡す生徒達……、一興。
「ゲームのルールですが、まず皆さんには――」
 話の途中で、また先程のヤンキーが椅子を立った。
「ふざけんな! てめーの悪ふざけに付き合ってる暇はねーんだよ!!」
 自分のカバンを拾い上げ、さっさと教室から出ようとするヤンキー。すると、やはり。石井の左手に握られた拳銃が、ヤンキーの頭を打ち抜いた。
 問答無用な即死。教室中に悲鳴がこだまする。
「んー、まあ……うん。これで皆も信じてくれたかなって事で……。順序は逆になってしまいましたが、ペナルティのついでって感じで」
 ようやく、石井の言葉をバカにする者は一人もいなくなった。石井は拳銃をまたスーツの胸元にしまいこんだ。
「ルールを説明させて下さい。既に主催者達の厳正なる審査によって、あなた達42……いや、41人の顔はレベル1からレベル100までの間に区分けられています。が、これでは本当にただ不細工な奴から死んでいくだけのゲームです。そこで、これからあなた達には1枚ずつカードを配ります」
「……カード?」
「そうです」
 すると何人かスーツ姿の男達が教室に入ってきて、生徒達にカードを配り始めた。
「あ、カードを他人に見せるのは厳禁です。見せたらその時点で失格になりますので」
 その言葉で、皆大事そうにカードを胸元に抱き込んだ。
 荒谷光は恐る恐る、絶対に他人には見えないよう死角を作りながらカードの表側を確認した。
「!!!?」
 驚愕というより、困った表情を見せる生徒達。光に配られたカード、そこに描かれていたのは……『栗山千明』だった。
「こ、これは?」
「はいー皆さん。皆さんの良く知る芸能人の顔写真と名前がカードには記されていますね。主催者達は芸能界からも42名を厳選し、レベル1からレベル100までのレベル分けを行ったのです。つまり、自分自身の『顔』レベル……プラス、配られた芸能人の『顔』レベルの合計が皆さんのレベルとなります」
 ますます騒然とする教室。自分の顔と芸能人の顔、その合計レベルで勝負が決まる。
「そしてこれが配られたカードのリストです。参考にして下さい」


 芸能人リスト(五十音順)

 稲垣吾郎 遠藤章造 岡田准一 
 狩野英孝 亀梨和也 草薙剛 小池徹平
 堺雅人 櫻井翔 佐々木蔵之介 島田紳助 新庄剛
 玉木宏 タモリ
 野久保直樹
 HYDE 間寛平 福山雅治 
 槇原敬之 森田剛
 ユースケ・サンタマリア(21名)

 虻川美穂子 絢香 上原多香子 蛯原友里 奥菜恵 押切もえ
 加藤あい 菊川怜 木村カエラ 栗山千明 小雪
 柴咲コウ 
 多部未華子 戸田恵梨香 
 ほしのあき
 MEGUMI 持田香織 森泉
 安田美沙子 山田優 吉岡聖恵(21名)


「男女混ざってるのか!?」
「はい。男女ごちゃ混ぜの状態で、上から順位付けさせていただきました。数千人を対象にアンケートした結果を参考に審査したらしいので、その辺りをいかに見極めるかがこのゲームの大きな要因となるでしょうね」
 紙に穴が空くほど並んだ名前を見渡し、そして自分に配られたカードのレベルを予想する生徒達。42人の芸能人をレベル100に振り分けたのだから、レベルとは単純な順位ではない。
 石井は再び説明を始めた。
「ゲームが始まると下位から一人ずつ失格となるわけですが、この際皆さんはドロップアウトすることができます」
「ドロップアウト!? ゲームから抜けられるのか!?」
「当然。でないと、ゲーム中にやる事が無いじゃないですか」
 そう、ただ単に下から一人ずつ失格になっていくだけでは、カードを配った意味も無い。ドロップアウトがあるからこそゲーム性を帯びてくる。当然、ここでの“失格”は問答無用の死を意味している。
「更に、個別に生徒同士で面会する時間もあります。もちろん、そこでもカードを他人に見せるのは厳禁ですが」
 本格的に説明されるゲームの内容。それがあまりにも単純な“殺し合い”とはかけ離れていて、やはり生徒達は困惑し戸惑うだけだった。
「ゲームの流れはこうです」

=第一節=
・失格者の発表

=第二節=
・面会時間

・ドロップアウトしたい者は名乗り出る(最高でも一節に二人まで。三名以上の希望者が出た場合はジャンケンでも何でも良いので二人までに絞る)

・失格者の発表

=第三節以降、第二節の内容を繰り返す=

「特別なのは第一節だけですね。唯一ドロップアウトが許されません。つまり、“今”最下位の者は必ず死ぬ……ということですよ」
 その言葉で教室に緊張が走る。……自分の顔に自信の無い者なんかは特に。
「おい、おかしいだろが!! 何言ってんだ!? ドロップアウトできるなら全員ドロップアウトするに決まってんだろ!」
「もちろん。……ただし、それは己の“欲望”に克った場合だけですよ」
 石井はにやりと笑みを浮かべる。
「このゲームでは賞金が出るんです」
「賞金!?」
「はい。賞金額は1円からスタートし、四節毎に位が1つ増えていきます。10円、100円、1000円、そんな風に」
「バカ野郎! そんな金のために誰がこんなゲームに参加するってんだよ!!」
「?? そんな金?」
 石井は不思議そうに首をかしげた。
「あなた……分かってるんですか? もし誰一人ドロップアウトせずにゲームが移行した場合、最終勝者が得られる賞金額は100億円ですよ」
「!!!」
 もちろん、一人もドロップアウトしないなどはあり得ないだろう。しかし圧倒的な賞金額。そう、まさに目が眩んで欲望に身を喰われる程……。
「それでは、第一節はすぐに始まります」
 体一杯に緊張を表す生徒達。その様子を見て、石井は満足気に笑みを浮かべた。
「ご武運を!」

       

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